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第六十四話「再会」


一行は潜入作戦を計画をするため、宿屋へ向かって街を歩いていた。


「――あれあれ〜? ショウくん、こんなところで偶然だねぇ〜」


やけに棒読みの声が背後から聞こえた。


振り返ると、サングラスに帽子、マスクという完全不審者ルックの人機がこちらへ手を振っていた。


「……ど、どちら様ですか?」


ショウが戸惑った横で、セレナがシャーッと威嚇する。


「ひっど〜い! もう忘れたの? わ・た・し♡」


サングラスとマスクを外したのは――聖歌隊ルミナ・クワイアのミアだった。


「聖歌隊の!?」


「シーッ!! 今日はお忍びでショッピングなの! 正体がバレたら大騒ぎになっちゃうから〜!」


「す、すみません……大声出しちゃって」


「いいよいいよ〜! 未然に防げたしっ。――そうだ! これから一緒に買い物しない? 私、いいお店知ってるんだ!」


「ほんとですか!! ……あっ。でも……」


ショウはこれから作戦会議があることを思い出して、肩を落とした。


そこで。


「行ってこいよ」


「え?」


「まだ作戦もクソもねぇ。俺とセレナとコメットで大枠は考えとく。今日は遊んでこい」


「コール……ありがとう」


「気にすんな」


「ちょっとコール!? なんでアタシが作戦側なのよ! ショウに着いていくでしょ!?」


「コメット」


「はいは〜い、了解よぉ〜」


コメットがスッと動き、セレナを拘束した。


「コメットの扱いが完璧だ……」


「やめろ。利害の一致ってやつだ」


「離せぇぇぇぇえええっ!!」


暴れるセレナを、コメットは慈愛のオーラで包み込む。


「モゴモゴモガガガッ!!」


「よし。これで大丈夫」


「じゃあ、行こっ! ショウくん!」


ミアは何事もなかったかのようにショウの手を取った。


「はい……行きま――」


そのときだった。

街全体を揺らす轟音が鳴り響いた。


「何だこの音!?」


「どんどん近づいてきてる……!」


空気が震える。

街壁の向こうから“巨大な影”が姿を現した。


「……ヘリコプター……? でかすぎない?」


通常の数倍はある巨体。

ローターの風だけで街路の砂が舞い上がる。


「おい……機械軍じゃねぇだろうな」


「違うみたい……」


セレナがスコープを覗き込む。


「ちょっと貸せ。……あれは――人機軍のエンブレムだ!」


「何で人機軍がここに?」


「わかんねぇが……これは幸運の兆しかもしれねぇ」


ヘリは上空でホバリングすると、二つの影を落とした。


「ショォォォウクゥゥゥゥゥン!!!!」


「シェルンさん!? エリナさん!?」


「……ボソボソ」


「エリナさん、声ちっちゃ!!」


コールが作戦のことをぶつぶつ考えながら歩いていると、

落下してきたシェルンとエリナが直撃した。


「のわぁぁぁぁあああ!!?」


「到☆着!」


「……V」


「殺す気か!!!」


「……死んでないから……問題なし」


「大アリだ!!」


二人は完全にマイペースだった。


エリナがショウの方を見て――固まる。


「ショウ、……久しぶり……」


「えっと、お久しぶりです……」


だがショウにはミアがしがみついていた。


「きゃ〜ショウくんこわ〜い……ギュッ」


「え!? だ、誰その人!! もしかして――!」


「……正妻の……余裕……」


シェルンは口を押えて絶叫し、

エリナは処理落ちしていた。


「ち、違います! この人は廻帰教の聖歌隊のミアさんで!」


「あ〜聖歌隊の人なんだね!

私は人機軍戦闘部隊のシェルン! こっちは同僚のエリナ!」


「戦闘部隊なんてカッコいいね! 私はミア!よろしく!」


三人はすぐに打ち解けていた。


「……二人は赤薔薇部隊じゃ?」


とショウが訊く。


シンが首を傾げる。


「それって一緒の括りじゃないの?」


「……おいシン。部署が違うだろ。赤薔薇は防衛部隊だ」


「あ、そうだったかも……?」


するとシェルンが胸を張った。


「実はね、今だけ“ある人”の要請で戦闘部隊に入れられてるの!」


「……ある人?」


その声が、静かに答えた。


「私だ」


漆黒の機体に真紅のライン。

堂々たる体躯の人機――


「ダン隊長!!」


「久しぶりだな、ショウ君」


ショウは思わず駆け寄る。


「ガラクタ部隊の拠点以来ですね!無事でよかった……!」


「……拠点の被害は大きかったが、生存者もいる」


「工場長は……?」


短い沈黙。


「……死んだ」


「!」


「ベレムナイトという怪物に破壊された」


「ベレムナイト……!!」


コールは怒りを爆発させ、近くの植木鉢を蹴り飛ばした。


ダンが静かに言う。


「怒りはわかる。だが今は違う。いずれ戦う時が来る。その時に――お前が終わらせろ」


「……言われなくても、そうする」


重く沈む空気。

だがシェルンが突然空気を変えた。


「で、その後ダン隊長が赤薔薇に来てね!

私たちが護衛として選ばれて一緒に来たの!」


シェルンがどさくさに紛れてショウの腕に引っ付く


「……愛の力…」


負けじとショウに抱きついたエリナも頷く。


ダンは溜息をつく。


「……お前たち、目標地点から手前で落ちたな?何のためにマーカスを手配したと思ってる」


「いや、マーカスも応援してくれたもん」


「言い訳はいい。……それと謁見の手続きに行け」


「ブーッ! 隊長のカタブツ! ショウともっと話したいのに!」


「……意地悪……」


「……マーシャ副司令官に報告するか……」


「すぐ行きます隊長!!」


「……了解……!」


さっきまでの態度が嘘のように二人は整列し、走っていった。


ダンはようやく息をつく。


「……さて、私も巫女様への謁見がある。降臨祭の警備責任者としてな」


その瞬間――


ショウたちは目を合わせて固まった。


「……これだ」


「ん? 何か言ったか?」


「これだぁぁぁぁぁあああ!!!」


偶然に見える幸運が、奇跡のように転がりこんだ。


◆◆◆


その少し後、シェルン&エリナは――


「ちぇ〜、ダンってほんと融通きかない!」


「……嫌われる……よね……」


「手続きも長かったし、早くショウのとこ行こ!」


「……シェルンが……遅いから……」


「エリナもモタモタしてたじゃん!」


そんなやり取りをしていた。


「って……あっ!!」


「……なに」


「ショウの宿、聞き忘れた!!」


「……シェルン……使えない……」


「エリナも聞いといてよ!! どうしよ〜!!」


そこへ――


「ちょっといいかしら? そこのレディたち?」


「……は?」


「え!? ナンパ!? 今時!?」


「ノンノンノン! ワタシはビューティーの伝道師。アナタたちから強烈なインスピレーションを感じるの!

どう? 私の手で――もっと綺麗になってみない?」


「もっと……綺麗に……?」


「そうよ?ワタシならアナタたちを世界トップクラスに美しい人機にできる」


「……ミアみたいに……なれるのかな…?」


「っ!! 私たちが、ミアみたいに!?」


「ええ、なれるわ……なぜならワタシは、ミアの機体を作ったその人なのだからっ!!」


「!?」


二人の心は、ミアの美しくも可愛らしいあの姿を思い出して大きく揺らぎ始めていた。

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