第六十三話「水竜の力」
「.....なんだ?.......これ.....??」
一行が街を出て少し歩いたところにある沼地へ到着すると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
「....沼地じゃなくて........湖.....?」
そこには透明度が非常に高い水が一面に広がっている、幻想的な光景があった。
「場所を間違えたか?」
「そんなはずないわ、空から見たときこの周辺には沼地と少し離れたところに細い川があるだけだったもの、第一こんなきれいな湖は見落とすはずがないわ.......」
「それもそうだな.....」
ショウたちが呆然と湖を眺めていると、どこからか声が聞こえた気がした。
「ワオーン!」「キュン、キューン!!」
「この声は!!」
声のする方を見るとアンバーとキューイが目をキラキラと輝かせながらこちらに向かってくるのが見えた。
「アンバー!キューイ!!元気だった?」
「ワンッ!」
「キュー!」
アンバーはショウの顔をペロペロと舐め、キューイは顔をショウにスリスリと擦り付けている。
「あははっ、二人ともくすぐったいって~」
「......どうにかしてアタシもあの中に入れないかしら?」
セレナは真剣に考えていた。
「邪魔になるから駄目だ、コメットしっかり止めといてくれ」
「いわれなくてもそのつもりよ~」
コメットがセレナと羽交い絞めにして取り押さえた。
「いつかゼッタイ成し遂げてみせるんだからっ」
「何の決意だよ.....」
「あははっ、ちょ、やめ......もういいんじゃない......?わわわわっ!」
嬉しさのあまり愛情表現が激しくなる二匹にショウは本日二度目のもみくちゃを体験した。
「キューン」
キューイとは別の鳴き声が後方から聞こえ、そちらを見るとホバーを引いて接近する二匹の水竜がいた。
「キューイのお父さんとお母さん!!無事だったんだね!!!よかったぁ」
二匹の水竜は遠慮がちに少しだけショウの体に顔をスリスリした。
「ホバーも運んでくれてありがとう、今縄を解いてあげるから待ってて!」
ショウはすぐに水竜とホバーを繋げている縄を解き、その途中であることに気が付いた。
「あれ?.....水竜の身体から何か出てる......??」
水竜の身体の端と湖の境目で謎の反応が起こり、キラキラとした何かがシュワシュワと発生していた。
「ほんとだ、水竜の身体からシュワシュワが出て.....湖が吸収してる.....?」
湖をよく目を凝らしてみると微かな濁りがシュワシュワによって消えていくのが見えた。
「そうか!分かったぜ!!水竜は綺麗な水に住むんじゃねぇ......恐らく水竜が住んだところが綺麗な水になるんだ!!」
「なるほど!だからこの沼地は水竜のおかげでここまで綺麗になったんだ、でもキューイからは何も出てないよ?」
「キュイ?」
シンの言うとおり、首を傾げるキューイの身体からは何も出てはいなかった。
「恐らく成体特有の現象というか能力なんじゃねぇか?」
「なんにしても水竜は無事だったし、ホバーも回収できたから良かったわね」
「ショウ、ホバーはここで直してく?」
「うん、作りたいものもあるし、ここで直すよ」
「作りたい.....もの....?」
「......まあ正確に言うと.....作りたいというか...建てたいかな?約束したしね.......」
「......?」
ショウは湖の東側を眺めながら誰かを想うような遠い目をしていた。
「よしっ!みんなも手伝って!早急にホバーの修理を終わらせて今日中には建築に取り掛かろう!!」
「よくわかんねぇけど任せろ!」
ホバーの修復に全員で取り掛かり、あっという間に終わらせて次の建築の準備に取り掛かった。
「なあ、ショウ。これから何を作るんだ?約束って誰といつの間にそんな約束してたんだよ。」
「実はこの沼地に初めて来て岩場で野宿した時、デヘンさんと話をしてたんだよ」
「デヘンと......?」
「うん、いつかこの場所にログハウスを建ててレミリアと一緒に暮らしたい......建てる時は手伝ってくれって........」
ショウは約束を思い出しながら泣いていた。
「......そんなことが....」
「それなら、うんと豪勢なログハウスを建ててやらねぇとな!」
コールが励ますように涙を拭うショウに声をかける。
事情を聞いたシンたちの建築スピードはさらに速くなってあっという間に
湖の岸にウッドデッキ付きのログハウスが完成した。
「完璧だぜ.....」
「あとは内装だね、今日はもう暗くなってきたことだし、宿屋に戻って明日また作業の続きをしよう」
一行は片づけをして宿屋に戻っていった。
◆◆◆
ここは聖街の中でも中心の建物、精巧なステンドグラスが張り巡らされたその美しい聖堂で白いドレスを着て、全く顔の見えない真っ白なベールに包まれた誰かが両膝を床につけて祈りをささげていた。
「ああ、神様....私はいつまでこうしていれば......」
物憂げな声を発するその人物の背後にある扉が開かれる。
そこから女騎士のような見た目の人機が現れた。
「巫女様、就寝のお時間です。」
「ねぇ、ツヴァイ?私はいつまでこうしていなくてはならないの??」
「もうしばしの辛抱です。
必ず隊長たちが人間の少年という成果をもってこの地に戻ることでしょう......」
騎士の説得も心に入らず、巫女と呼ばれる人物は深いため息を漏らす。
「はぁ.....神様どうか、この私という無知なる信者に一筋の希望をお与えください.....」
巫女は再び祈りのポーズをとり、願いを心の中で述べ始めた。
◆◆◆
「ふぅ......これで完成だな...」
昔の名残で汗を拭う仕草をするコールが作業完了を宣言する。
湖のすぐ傍にウッドデッキ付きの立派なログハウスが建てられていた。
「二人で住むには大きすぎたかな?」
「デヘンのことだからきっと僕たちを招待したくてこれくらいの大きさにはするはずだよ」
「フフッ、アイツならそうしそうだわっ」
一行はそれぞれがデヘンのことを思い出し、その記憶をログハウスに刷り込むように眺め続けていた。
「そろそろ行こうか.....水竜たちもまたね、しばらくはセクリプレスにいるからまた顔を出すよ!」
「キューン!」
キューイは嬉しそうに水面を泳ぎ回っていた。
「アンバーは悪いけど街の中に入れないから、また水竜たちの護衛をお願いね?」
「ワンッ!!」
残念がると思っていたアンバーの予想外の逞しさにショウは嬉しさを感じて街へ向かう
一つのものを作り上げるという達成感と充実感に浸る一行を現実に引き戻すべく、
一日経っても解決策が見つからない最大の課題をコールが口を開いて議題にあげた。
「結局巫女さんとの面会はどうするんだぁ?
相変わらずいい案浮かんでねぇんだろ??」
「.....それなんだけど」
ショウは急に立ち止まり、
言いづらそうに言葉を続けた。
「やっぱりこの案しかないと思うんだ.......」
「ほぅ.....その案ってのは?」
「聖堂に忍び込んで巫女様に会う.....」
「ショウ!?それはさすがに.....」
「その言葉を待ってたぜぇ、ショウ。
巫女に強制面会.....面白くなってきやがった!」
最終手段として最後まで選択肢の中でも遠ざけ続けた危険な案が遂に表に出され、当然のごとくコールは不敵な笑い声を上げて、この先起こるであろう祭りに心を躍らせていた。
水竜のお掃除機能(浄水機能?)は無意識ではなく、しっかりと自分の意志で発動しないと効果が出ません。
捕まってた時はあえて発動してなかったってことですね!




