表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/83

第五十四話「捜索」


「ふぅ……これでよしっと」


「これなら何とか沼を歩けそうだな」


 作業を終えたショウとコールが立ち上がる。

 アンバーと水竜以外の全員の足が、かすかに地面から浮いていた。


「まぁ、ホバーの浮遊パーツを足に着けただけなんだけどね。これじゃホバーを置いていくことになるから、このまま街には向かいたくないけど」


「安心しろ。今回は“水竜の親捜索”が目的だ。無事終わればここに戻る」


「そうだよ、ショウ! まずはこの子の親たちを助けてあげよう?」


「うん! すぐ戻ってくれば問題ないよね!」


 その一方で、コメットはまだ不安げだった。


「……でも、故障した機械にセレナを預けるのは不安だわぁ〜」


「それなら安心してください、コメットさん!

ホバーは動力が壊れただけなので、他のパーツは無傷でした。外部から破壊されない限り、これ以上壊れる可能性は低いんです!」


「……でもねぇ……」


「じゃあ故障を検知して、『条件磁石』が作動するようにします!」


「……それをしたらどうなるの?」


「すぐにコメットさんの背中にくっつきます!」


「それでお願いするわ!!!」


「即答!? え、いいの!?」


「セレナに聞こえたら反対すんじゃねぇか?」


「大丈夫。今アンバーたちと遊んでるから」


 ショウが指差した先では――

 水竜の首を滑り台にしてセレナがきゃっきゃと遊んでおり、デヘンが必死で追いかけていた。


「あははっ! すごいすごい!!」


「お嬢〜っ! お気をつけ下されぇ!!」


「……あれなら聞こえてないな」


「ショウ? 早くその磁石をつけてくれないかしら〜?」


「はっ、はいっ! すぐにでも!」


 ショウが部品を取りにホバーへ駆け寄ろうとしたとき、シンが彼の肩を押さえ、小声で耳打ちしてきた。


(ショウ、本当にそんな機能つけられるの……?)


(……実は無理なんだ……)


「!? ちょっ、それ大丈夫なの!?

もし浮遊がとけてセレナが沼に落ちたら……!」


「それは大丈夫! 異常がないことは確認したし、いざというときの“保険”もつけておくから!」


「保険……?」


 その瞬間、セレナがこちらに気づいた。


「ショウっ! ねぇねぇ、この子に名前つけてあげない?」


「……確かにいつまでも“水竜”じゃ不便でござる」


「それもそうだね。うーん……」


「キュウ?」


 キューイが首をかしげる。

 一同が考え込む中、ショウがぽつりとつぶやいた。


「……キューイ……」


 全員が顔を上げた。


「あっ、いや……鳴き声の“キュー”と水竜の“スイ”を合わせて……その……」


 ショウは照れたが、その名はすぐに受け入れられた。


「いいじゃない!」


「僕も賛成だよ」


「キューン!」


「本人(?)も気に入ったみてぇだな」


「アオーン!」


「素晴らしい名でござる!」


「私はセレナがいいと思うわ〜」


「ママは黙ってて」


「は〜い!」


「じゃあ……こいつの名前はキューイだ。よろしくな、キューイ?」


「キューン! キューン!」


 キューイは水面を喜び跳ね、アンバーも楽しげに空を舞った。


「よし! 準備も整ったことだ。そろそろ捜索に出るとしようぜぇ」


 コールの声が号令となり、一行は昼過ぎの沼地へ歩を進めた。


 ◆◆◆


 (よし)が両側で高く揺れる中、ホバーの浮遊パーツで足元を水面から浮かせながら進む。


「キューイの親は恐らくもっとデカい。その巨体が通った場所なら痕跡も残る。まずは沼地でも広い箇所を探す」


「キューイ、どこではぐれたか覚えてないの?」


 ショウが聞くと、キューイはしゅんと首を振った。


「キュウ……」


「無理もないさ。ここは同じ景色ばっかだ」


「道幅だけでは方向までは絞れぬ……広すぎてしらみ潰しは骨が折れるでござるな」


「それもそうだよな……」


「貴方たち何をそんなに悩んでいるの?

アンバーに乗って空から見ればいいじゃない??」


「!!」


「……そうか、その手があったか……!」


「さすがです! コメットさん!!」


「当然よぉ」


「ママ、ナイスよ!」


「むしゅめの褒め言葉しゃいこぉぉぉぉ!!!」


「やっぱ褒め係はセレナだな」


「じゃあ早速、アンバー! 空へ飛び立つわよっ!!」

「アオーン!!」


 アンバーは大きく羽ばたき、セレナを乗せて空へ舞い上がった。


「娘の危険行為さいあくぅぅぅ!!」


「コメットさん、空は飛べませんからね!? 信じて待ちましょう!!」


「しんばぃぃぃ……!」


 ◆◆◆


 空からの視界は壮大だった。


「うわぁ……こんなに高いところ初めて!

アルボリアの街が火事のせいで丸見えね……」


 セレナはスコープを取り出し、景色を次々と見ていく。


「あっ、あの滝、研究所の近くのやつね!

あっちの荒野はウィル・フライトやフェムニカにつながってて……」


 反対側を見渡すと一層驚いた。


「ええ!? セクリプレスってこんな近かったの!?

沼地抜けたらすぐじゃない!

はぁ……世界ってこんなに広いんだ……

海の向こうに真っ白な山まであるし……高い建物がたくさん集まってるの街も……全部行ってみたいわ……!」


 セレナが感動していると、アンバーが控えめに鳴いた。


「ワンッ」


「あ、ごめんアンバー! 捜索だって忘れてたわ。もっと低くお願い!」


 アンバーが高度を下げると、沼全体が見渡せる高さへ戻った。


「えっと……あっ! あそこの水面、すごく広い!

アンバー、あっちお願い!」


「ワンワン!」


 大きく開けた水面へ向かい――


「あそこならキューイの親が通ったとしても不自然じゃないわね。……あら? あれ、洞窟……?

でも奥行きがない……入口が……格子?」


 スコープを覗いたセレナの表情が凍りつく。


「……いた。

えっ……周りにいるの……何で……こんなところに……!?」


「ワウ?」


「アンバー! 急いで戻るの! みんなに知らせなきゃ!!」


 ◆◆◆


 一方その頃、地上では――


「よし、私なら行けるはずよ……!」


「いや待ってコメットさん! それ、ただ跳ぶだけでいずれ落ちますから!」


「もう五分もセレナが戻らないのよ!?

絶対何かあったに違いないわ!! 大丈夫、すぐ戻るから!!」


「何が大丈夫でござるかぁぁ!!?」


「抑えろーっ!!」


 シン・コール・デヘンの三人がかりで、槍とロープで繋がれたコメットを全力で押さえ込んでいた。


「みんな! もう少し踏ん張って!」


「うぉぉぉぉ!!」


「はぁぁああ!!」


「ぬぬぬぬぬ!!」


「みんな〜!! 一大事よ〜!!」


「来たっ!」


「セレナァァァアアアッ!!!

どりゃぁぁぁああ!!」


『ぬぁぁぁぁぁ!!』


 娘の声を聞いた瞬間、コメットが底力で三人を吹き飛ばした。


「見たかオラァァァ!!」


「つ……強ぇ……」


「セレナ、おかえり! どうだった?」


 息を飲む一行へ、セレナは告げた。


「……悪い知らせよ。

キューイの親は――機械軍に捕まっているみたいなの……」


「!?」


 その言葉に、全員の表情が強張った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ