表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/83

第五十一話「漢の約束」


「た、倒した……?」

「ドランクさんっ!!」


爆心地へ駆け寄るショウは、散った破片のあまりの多さに胸が締め付けられた。

どこを探せばいいのかも分からない。それでも手当たり次第に瓦礫をかき分ける。


「ショウ……ドランクさんは……もう……」


「っ!!」


膝をつき、唇を噛みしめ、拳を震わせたその時――


「……おう……ここに……いるぜぇ……」


「!? ドランクさん!!」


爆発地点から少し離れた影。

ドランクは胸の上部から顔だけを残し、床に横たわっていた。


「……ショウ、すまねぇな……おめぇと一緒に酒.....飲めそうにねぇわ……」


「大丈夫ですっ! すぐにコンバートすれば問題ないです!!」


「ハハッ……この街にコンバート設備はねぇよ……酒が命の俺たちにゃ、そんなもん必要ねぇのさ……」


その声は、静かに、しかし確かに弱っていった。


「……畑も、酒樽も、酒蔵も……全部壊されてしまいました……」


「全部じゃねぇさ……」


「え……?」


「街の南の入口に、小さな小屋がある……その床の下だ……地下に続いてる……このカードキーで入れ……」


差し出されたカードキーを、ショウは震える手で受け取る。


「地下にまで……」


「いつか敵が襲ってきた時のためにな……まあ、街の連中は……全滅しちまったが……」


誰も、言葉を挟めなかった。


「……なあ、ショウ……」


「なんですか…っ!」


「頼みがある……いつか……人機たちが人間に戻れた時はよ……ここで宴を開いてやってくれ……

最高のビールを完成させて振る舞いたかったが……今あるワインとウィスキーで……我慢してくれ……」


「やります!! 必ず! 絶対に!!!」


「ありがとよ……頼もしいぜぇ……ああ...酒が飲みてぇ.........」


「ドランクさんっ!! ドランクさん!!」


「………………」


ドランクの瞳から、光が静かに消えた。


「う……ううっ……」


「…..ショウ…….」

シンが寄り添い、優しく肩に手を置いた。


「アルボリアの奴ら……しっかり埋めて、弔ってやろうぜ」


「……うん」


■ ■ ■


街の建物は爆発で崩落し、周辺の森も焼け、畑は見る影もなかった。

動かなくなった人機たちを、ショウたちは街の酒場跡へ運び、丁寧に埋葬した。


「みんな……ここが一番落ち着くでしょ? これからも……ここで飲んで飲んで、飲み続けてね...」


ショウが祈ると、全員が静かに手を合わせた。


■ ■ ■


南門へ向かうと、瓦礫の中にぽつんと小屋だけが綺麗に残っていた。


「ここだな」


床を調べ、違和感のある板を押し上げると――

ガコッ、と音を立てて床板が外れ、階段が姿を現す。


階段を降りると、頑丈な金属製の廊下、そして重厚な鉄扉が立ちはだかった。


「このカードキーを使えば――」


スライドさせると電子音が鳴り、扉がゆっくり開く。


「……すげぇ……」


地上の保管庫の半分ほどの広さだが、整然と積まれた大量のワイン樽、ウィスキー樽。

そして温度管理室まで完備されている。


「まだ街の動力は生きてるでござる。自動調節も問題ないようでござるな」


「お酒に興味のない機械軍なら、ここを見つけることもないだろうね……」


ショウは静かに樽へ手を触れる。


「これ、ラジカセかな...?」

シンが温度管理室の棚の奥にしまわれた物を引っ張り出す。


「......なんでこんなところラジカセが?」


「テープが入っているでござる。えーっとなになに? ”もういない息子へ~酒場の楽団~”って書いてあるでござる」


「再生してみようぜぇ」

コールがデヘンからテープを受け取り、ラジカセに戻して再生する



――


おお、遠くへ行った息子へ いつかお前と飲む日が待ち遠しかった

おお、声すら聴けなかった息子へ いつかお前と歌うのが楽しみだった

おお、見ることすらなかった息子へ いつかお前と遊ぶのが夢だった

おお、確かに妻の腹にいた息子へ なぜお前は産声も上げることなく逝ってしまったのだろう


日に日にでかくなる 俺たちに動いて答える 命の素晴らしさを教えてくれた だから


俺は待つ 俺はお前を待つ ただお前を待つ ただお前を待つ

ずっとここで待つ ずっとここで待つ


おお、あれだけ望んでいた俺の息子へ 妻を独り占めして天に召すなんて

おお、顔も知らない息子へ お前の望みをすべて叶えたかった

おお、痛みを知らない息子へ どんな怪我でも直してやりたかった

おお、俺なんかより生きて欲しかった息子へ もし大きくなっていたらどんな夢を持ってたのだろう


日に日にでかくなる 俺たちに動いて答える 命の素晴らしさを教えてくれた だから


俺は待つ 俺はお前を待つ ただお前を待つ ただお前を待つ

ずっとここで待つ ずっとここで待つ


ただ一緒に過ごしたかった 抱きしめたかった 不器用でも叱られながら世話を焼きたかった

なぜお前はいない なぜお前に会えない なぜお前に触れられない なぜお前を感じられない

ああ、愛してる ああ、愛してる 今も愛してる 今も愛してる


日に日にでかくなる 俺たちに動いて答える 命の素晴らしさを教えてくれた だから


俺は待つ 俺はお前を待つ ただお前を待つ ただお前を待つ

ずっとここで待つ ずっとここで待つ


待ったって会えないのはわかっている そろそろ俺も前に進む

だから息子よ お前も生まれ変わって幸せに生きてくれ


俺は願う 俺はお前を想う ただお前を想う ただお前を想う

ずっとここで願う ずっとここで願う



――


心の底の叫びのような歌を聴き、ショウの目から涙が溢れる

「……次にここへ来るのがいつになるか分からないけど……ぼくは必ず、ドランクさんとの約束を守るよ」


「ああ、漢と漢の約束だな!」

コールが力強く肩を叩く。


ショウは、涙を拭いて頷いた。


■ ■ ■


「そろそろセクリプレスへ向かうか!」


「セクリプレスはこの先の沼地を越えると見えてくるでござるよ」


「沼地っ!? 汚れるじゃないの、アタシ嫌なんだけど?」


「セレナは私がおんぶするから大丈夫よ〜!明るいうちにサッサと越えてしまいましょっ」


階段へ向かおうとしたその時――


──ッ、ピッ……

部屋の端末が突然起動し、音声が流れ始めた。


『……誰か、聞いていますか? 私はイリス……ゼウス暴走後、唯一、人に味方する……いえ、

機械に意識を移した人々に、仇なさないAI……』


「!!」

「この音声は……!」


「レイダーズのアジトで聞いたやつだ!」


続く音声はところどころ欠損し、重要そうな語句がノイズで消えている。


『……アイの助手として彼女の――を――にかけ……

その後、暴走から数年が経ち……私は――を――して――育てました。

――は急速に成長し……この子の名は"――"……

いずれ私は動かなくなるでしょう。

その前に――を外の世界へ……どうか……この子を……守ってください……』


「前より聞こえるけど……大事な部分が抜けてるな」

「……“アイ”って、前にダン隊長たちが話して人のことかな……?」


「ってことは、そのアイって人もゼウス研究チームの一員……?」


「ゼウス研究ってすべての元凶じゃない!!」


「ダン隊長たちはぼくたちを助けてくれた。悪い人じゃないよ」


再生が終わり、静寂が戻る。


ショウとシンは顔を見合わせた。


「……ショウ。多分、この音声に出てきた子供って……ショウと同じ“人間の子”のことだ」


「聖街の巫女……?」


「かもしれない。でも全然別の子の可能性もある」


「……そっか……ぼくのほかにも……」


ショウの目に、涙が溢れた。

シンがそっと肩を抱く。


「まずはセクリプレスへ行こう。巫女に会って……それから音声の完全版も探そう!」


「うんっ!! ありがとう……シン!!」


二人の胸に、新しい希望が灯っていた。


■ ■ ■


場所は滝裏の旧研究施設跡。

黒い装甲に紅のラインを纏ったダン・シュナウザーが静かに佇んでいた。


「ふむ……噂では聞いていたが……レイダーズと研究所は本当に繋がっていたらしいな」


部下が駆け寄り報告する。


「隊長、何者かがここで戦闘を起こし、自爆シークエンスが作動。建物は完全に瓦礫です」


「……時間がかかっても構わん。瓦礫をどけて内部を調べろ。

ウィル・フライトのアジトで得た“コア登録”の技術……

我らの希望が、さらに道を示すやもしれん。徹底的に調べるぞ」


「はっ!」


部下が動き出す中、ダンは空を見上げた。


「派手にやってくれたな……君には期待が止まらないよ。ショウ君……」

”もういない息子へ~酒場の楽団~”

この歌が英語で歌われると嬉しいですよね

西部劇に出てきそうなカッコよくて、聞いてるだけでお酒が飲めそうなしみじみとしたブルース調、脳内では既に完成形が流れている気がします(気のせい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ