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第四十八話「使徒の暴走」


 ――カン、カン、カン、カン、カン!!


 深夜の静寂を切り裂く鐘の音に、ショウは跳ね起きた。

 胸がざわつく。不吉な音だ。こんな時間に何事だろうか。


「な、何……?」


 外に出た瞬間、熱気が頬を叩いた。

 夜空を焦がすように、街の外――森が赤く揺らめいている。

 それだけではない。畑も、果樹園も……炎に呑まれていた。


「火事だ! 森が――っ!」


「全員出動だ!! 消火を開始しろ、南門から回るんだッ!」


 ドランクの怒号が闇夜に響き、住人たちが走り出す。

 ショウもバケツを掴み、水場から火の海へ駆け込んだ。


 だが――違和感があった。


 ただの山火事ではない。

 炎はまるで“何かが通った痕跡”のように一直線に燃え広がっている。


「ショウ!!」


 振り返ると、セレナが駆け寄ってきた。

 彼女が指差す炎の奥――そこに“白い影”が立っていた。


 ゆらり。


 炎に照らされ現れたのは、昨日、祭壇に集まっていた“森の使者”たち――

 しかしその動きは異様だ。

 森を守るはずの存在が、破壊者のように地面を踏み荒らし、炎を広げている。


「使者……なのに、なんで!?」


「近づくな! 明らかに様子がおかしい!!」

「こっちに向かってきてるぞ!?」


 次の瞬間――白い影たちが、炎を切り裂いて飛び出してきた。


「嘘だろ、襲ってきてるのか!?」


 街の者たちは混乱しながらも応戦する。

 ただ、相手は森の守護者――殺すわけにはいかない。

 剣を鞘に入れたまま叩き落としたり、銃で殴りながら後退するが、数が多すぎる。


「くそ、次から次へ……!」

「というか猿ってこんなに硬いのか!?」

殴ると確かに鉄のように硬い感触があった


「今はそんなことどうでもいい、何とか無力化するんだ!」


 暴走は止まらない、その中にひときわ素早く動く影がいた。

 小柄な使者が、屋根や倒木を伝って縦横無尽に暴れ回る。


「こっちは俺がやる!」


 コールが前に出る。

 刃を外した訓練用チャクラムを構え、猿の動きを読み切り――


「おらっ!」


 放たれた円輪が猿の脇腹を撃ち抜いた。

 猿は派手に転がり、地面に倒れる。


「よし、動きが止まった……!」


 ――その瞬間。


 ズルリ、と使者の体表が剥がれ落ちた。


「なんだ…これ……布じゃないな。皮……?」


 顔を上げて敵を見る、露出した内部――

 金属フレーム、配線ケーブル、赤く光る複眼。


「……サル型の機械……機械軍だ……!」


 静寂が走った。


「ってことは――これ全部、敵の攻撃ってことかよ!!」


「全員、街まで退け!! 門の内側で陣形を組む!!」


 ドランクの怒号が飛び、住人たちは総崩れになりながらも退却を始めた。


 燃える森を背に、金属の猿たちが迫ってくる。

 足音は鉄の塊が叩きつけられるような重さと速度を伴い――あっという間に街の門まで到達する。


 ドランクは振り返り、拳を握った。


「絶対に……街は渡さねぇぞ!」


 城門が閉まり、戦いが始まった。


◆◆◆


「奇襲は上手くいったようだな」

 低い声が、夜の森に沈む。


 迷彩柄の装甲を纏う巨躯――猿機エテ・パウパが、燃える森を見下ろしていた。


「街にも爆弾を投げ込め。手余りは設置式の爆弾を仕掛けろ」


 人工声帯とは思えぬ、嗤うような声音だった。


◆◆◆


 猿機たちが城門を乗り越え、街の中央へ雪崩れ込んだ。


ズダァーン

セレナがスコープなしのライフルで敵を狙うが標準が定まらない

「なんなのよこの猿たち! 動きが変則的すぎるってば!!

 デヘンッ! ショウをしっかり守りなさいよ!!」


「何故!? 拙者が護るべきはお嬢、貴方でござるッ! 男なんて本当は守りたくないでござるよ!!」

デヘンはアンバーの背に乗ったショウを守りながら、猿の攻撃をいなし、愚痴をこぼす


「お猿さん、セレナへのお触りは許可してないわよ〜?」

 コメットが蹴り飛ばしながら軽口を叩く

 その瞬間。


「きゃっ!? ちょっと!!」


 背後から飛びかかった猿機に、槍を全部奪われた。


「私の獲物がっ!! これじゃ素手じゃないのッ!」


「これでも喰らいやがれっ!!」


『ナイン・トス・ボム!!』


 九つの小型爆弾を猿機たちへ一斉投擲――

 だが猿たちが空中でキャッチし、そのまま投げ返してきた。


「なっっ!? 返すなバカッ!!」


 爆弾が足元で炸裂し、コールは転げ回りながら避ける。


「どわぁぁぁあああ!!」


 シンもまた、猿機の速度に翻弄されていた。

 視界の端で何度も光が走り、攻撃が通らない。

「くっ、全然当たらない…」


「ショウ、こっちに来ちゃダメよ!」

 セレナはハンドガンとナイフに切り替え、近距離戦を強いられていた。

「セレナっ危ない!」

背後から猿が迫る、セレナは羽交い締めにされてしまった。

「こっ、このっ!」

動きが止まったセレナにさらに二匹の猿が抑えにかかる

「もうっ!いい加減にしなさいっ!!」

セレナが煩わしさに叫ぶと猿の機械が三匹とも横や縦、斜めに真っ二つになって崩れ落ちた


「ふんっ、しつこいからそうなるのよ?」

セレナがシッポの先端から伸びるブレードを顔の前で見つめながら呟いた

「よ、良かった…」

「ショウ! しっぽの仕掛け問題なく使えるわよ!!」

セレナはしっぽブレードをブンブン振り回しながらブレイクダンスの様に立ち回り、攻撃を再開した


◆◆◆


 戦いの最中――

 酒場に爆弾が投げ込まれた。


 手投爆弾が床で弾け、壁が吹き飛ぶ。


「あっ……酒場が……!」


 さらに酒蔵の貯蔵庫にも火の手が上がり、ワイン樽、ウィスキー樽が次々に延焼していく。


 その光景を見たドランクの顔が、怒りで真っ赤に染まっているようにみえた。


「使徒様の惨殺……畑への放火……酒樽の破壊…………

 てめぇらタダじゃおかねぇぞぉぉおおお!!

 野郎ども!! 根絶やしだぁぁぁあああ!!!」


『うぉぉぉぉおおおお!!』


 怒号と咆哮が街を震わせるが――それでも形勢は悪い。

 数が多すぎた。


◆◆◆


「シン! これ使って!!」


 ショウが急造のネットランチャーを投げ渡す。


「ナイス! でも……混戦すぎて猿だけを狙えない……!」


 迷うシン。

 しかし、前に立つ人機たちが叫ぶ。


「俺たちのことはいい!! 撃てぇッ!!」


「早くやれ兄ちゃん!!」


「…アルボリアの皆さん……」


 迷いが断ち切れた。


「いきます!!

 ――発射ッ!!」


 網弾が炸裂し、猿機も味方も十数体まとめて絡め取られる。


「今だコール、俺たちの希望を、守り通せよ……」

「すまねぇ……!」

 コールが叫びながら爆発を投げる。


『トライ・マグネット・ボム』


 三つの爆弾は磁力で一点に吸い寄せられ――

 轟音とともに爆発。


 焼け焦げた金属片が散り、十体以上いた猿機が一瞬で沈黙した。


 残った猿機は怯んで後退する。

 一体が逃げようと背を向けた――その瞬間。


 影が降ってきた。


 二回りも大きい猿機が、逃げようとした機体を叩き潰す。


 周囲が静まり返る。


「……とうとう親玉登場ってか?」

 コールが呟く。


 炎の中から現れた巨躯。

 迷彩柄の装甲、光る四つ目、巨大な腕。


「私の名は――

 猿機エテ・パウパ。」


 エテ・パウパはゆっくりとアルボリアを見渡し、嗤った。


「これだけ相手がいれば……

 人間を確保する前に、少しは楽しめそうだな。」


 その声に、街全体が凍りついた。


 ――闘いは、まだ始まったばかりだ。


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