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第四十一話 「義妹」


スパッ、スパパッ。

二つの大鎌が閃き、シンに迫る。

間一髪で避けたが、背後のタンクが袈裟斬りを受け、中のオイルが床に撒き散らされた。


「なんて斬れ味だ! 一撃でも致命傷……避け続けるしかできなっ──」


ガゴォォンッ。


「……避けることも難しいようじゃな?」


躱しきったと思った矢先、背後から脚が迫り、蹴りを叩き込まれる。


「こっちにもいるぜぇっ!」


ガキィンッ。


「!?」 「……見えとらんとでも思ったか?」


コールが渾身の力で振り下ろした二つのナイフは、サディスの脚に受け止められた。


「グルルルルルッ!」

「またそれか……」


横から突進してきたアンバーの体当たりを最小限に避け、サディスはその首筋に肘を叩き込み、地面へ叩きつけた。


「キャィンッ!」

「アンバー!!」


サディスの鎌が突き立てられようとしたその瞬間、シンが間に入る。


『シールドッ!』

ガキィンッ。


「ぐっ……!」

「おうおう、キツそうじゃのぅ? だが鎌はもう一振あるんじゃぞ?」


「……離脱っ!」


シンはあらかじめ取り付けておいたフックショットの位置まで、アンバーを足に絡めて強制移動。


「俺を忘れてんじゃねぇぞぉお!」


『ファイブウェーブ・ボム!』


コールが等間隔に爆弾を投げつけ、順番にサディスを直撃していく。

爆発は後になるほど威力を増し──


ドッ、ドン、ドンッ、ドォン、ドオォンッ!!


爆炎の隙にコールもシンたちの元へ退く。


「オヒョヒョヒョ、効かんのぉ〜」

「っ!? 嘘だろ!?」

「なんてやろぉだ……」


「今度は、こっちから行こうかの?」


言い終えるや否や、サディスの姿がシンの背後にあった。


「!?」


両側から迫る鎌を、シンは腰を反らせてなんとか避ける。──が、前脚に捕まり、引き倒され、そのまま投げ飛ばされた。


「クガァァアアアッ!」


アンバーの前足の鉄爪がサディスの横っ腹を引っ掻く。

損傷は浅い。逆に足を掴まれ、今度はサディスの下へと引きずり込まれる。

無数の脚がアンバーを殴りつけた。


「ギャッ、キャウンッ!」

「この肉を殴りつける感触っ! 最高だのぉ〜!」


「離しやがれぇっ、クソがぁっ!」


スティレットをサディスへ投げる、軽く避けられ反撃が迫るが、左手の十手で迫る鎌の攻撃を受け、引っ掛ける。

もう一方の鎌も、鎖を引き寄せてスティレットを右手に戻し、辛うじて受け止めた。


「鎌を止めたぞっ!!」


「アンバー、伏せろっ! 『ブレードォォオオ!!』」


ブレードを展開したシンが、サディスの足元めがけて横一閃。

サディスは咄嗟にほとんどの脚を上げ、二本だけが切断される。

スライディングでアンバーを救い出し、距離を取った。


「……うむ、被害は最小限のようじゃな」


「ぐあっ!」


すぐさま脚がコールを拘束し、大の字で床に叩きつける。


「まず一体は分解完了じゃ」

「コールっ!!」


ザシュッ。



---


「全然、他の方法が見つからないわっ!」

「暗くて効率が悪いでござる……」

「セレナは休んでなさい? そこのトロいの! ちゃんとセレナを見張ってなさいよ!」

「ママ、アタシ全然疲れてなっ」

「いいから休みなさいっ!!」

「……分かったわ…」


頑強な扉を突き続けるコメット。

壁沿いをくまなく探すカトレアを眺めながら、セレナは壁に背を預け、座り込んだ。


「乳母殿は、セレナお嬢が心配なんでござるよ……」

「……わかってるわ、そんなの。でも、アタシだって力になりたいじゃない……」

「…………」


「……ねぇ?」

暇を持て余すように、セレナがデヘンに声をかけた。


「? なんでござるか?」

「レミリアの話を聞かせてくれない?」


「……いいでござるよ。お嬢にはしっかり話しておきたいでござる......レミリアは拙者の義理の妹、自慢の妹でござった。その昔、拙者とエミリアはただ愛し合っていたのでござる……」


---


「拙者は父子家庭で育ったのですが、ある日、父上が再婚すると言われまして……。

相手の方と顔合わせに行った際、レミリアと初めて会ったでござる。

父上の年の差再婚は、かなり驚いたでござるよ。拙者は十八歳、レミリアは七歳だったでござる。」


「最初は人見知りで、全く懐いてくれなかったのですが……。一緒に暮らすうち、少しずつ心を開いてくれたでござる。」


「共働きだった両親の代わりに、レミリアの面倒は拙者がほとんど見ていたでござる。

ある時、いつものようにママゴトに付き合っていたら、『れみりあ、おっきくなったら、おにーさまとけっこんするね!』と……。

その言葉が本当に嬉しかったでござるよ。拙者もレミリアを必ず幸せにするぞと誓ったでござる。」


「だが、あの子が十二歳になって少し経った頃、あの憎きゼウスが暴走したでござる……」


「その日、拙者はレミリアと“デートごっこ”をして家で遊んでいたでござる。

顔を赤らめるレミリアと、初めてのキッスを──と目を瞑った瞬間、レミリアは突然倒れた。

息つく暇もなく、拙者も気を失い……次に目を覚ました時には、家庭用掃除ロボットのカメラ越しに、倒れる自分たちを見ていたでござる……」


「信じられなかった。信じたくなかった。

拙者は気を落ち着けようとテレビ台の下に隠れた。だが、誰かが家に入ってきたでござる。両親ではなく、ガチャガチャと音を立てて入ってきたのは──ドローン型の機械であった。」


「!?」

「拙者はなぜか『動いてはならん』と感じた。そして、ドローンは倒れた拙者らを回収して去っていったでござる。」

「……? 機械がなんで人を攫ったの……?」

「……それは分からんでござる。ただ拙者はレミリアを救うため、探し回った。

だがどこにも居らんかった……世間では“未成年の人間は消滅した”などと言っていたが、拙者は信じなかったでござる。」


「……」

「あの時の機械たち、何か理由があるに違いない。

拙者はそれを確かめるため、そしてレミリアを探すため、ずっと動き続けていたでござる。」


「……そしてアタシ達が来た……」

「そうでござる。諦めかけていた時、セレナお嬢が現れた。やはり“未成年の意識”は消えていなかったのだ……!」

「………デヘン…あのね……?…ショウから聞いたんだけど、アタシは……」


「そうだっ!そうでござるよ!!そうと分かれば早くここを出て探しに行かねばならんでござるよぉ!!!」


セレナが口を開こうとするが、急にデヘンのやる気スイッチが入って遮られる。

張り切って壁沿いの探索を再開する彼を見て、コメットが叫んだ。


「ちょっと!? ちゃんとセレナを見張っときなさいって!」

「拙者も御力添え到す……って、こ、こっこれは!?」



---


ザシュッ!

凶悪な鎌が振り下ろされ、機体を切り裂く。

しかしコールは関節を外して回避、コア破壊は免れたが、左腕と左脚を失った。


「やられたっ!!」


コールの被害に気を取られたその隙、サディスがショウの近くに立っていた。


「オヒョヒョッ! 生身の人間ゲットじゃ〜!」

「ショウ、危ないっ!!」

「うわあああっ!」


ガキンッ!


鳥人機と狼人機が鎌を抑え、ゴリラ人機が羽交い締めにする。


「……ニ、ゲロ……」

「……俺タチ、ハ……モウ……ダカラ……」

「……セメテ、助ケル……」


「ええい、鬱陶しいわっ!!」


サディスは両腕にくっつく人機を床に叩きつけ、鎌を反転させて羽交い締めにしている人機を切り刻んだ。


「ガァァアアアッ!!」

残る二体も同様に、無惨に切り裂かれる。


「やめろぉぉぉおおお!!」


シンが間に入り、鎌に腰を貫かれる。


「っっ!!」

「このまま頭まで裂いてやろう……」


『ブレードッ!!』


「!!?」


ブレードが肘の方から伸び、サディスの腹部を貫いた。

「後ろにも伸びるのかっ!?」


「ガウガウッ!!」

アンバーがブースター全開で突進する。


「この獣がっっ……!!」

鎌が当たる寸前、アンバーは逆噴射で急停止。


「なぬっ!?」

「ここだァ!!」


脚の左側に立ったコールが、トランクから爆弾を取り出す。


『ナイン・トス・ボム!!』


爆発がサディスの体勢を崩し、その巨体が床へと倒れた。


「ガァァァアアアッ!!!」


アンバーが渾身の力でサディスの頭を殴る。

頭が飛び、転がり、止まった。


「やったぞっ!」

「もう大丈ーーっ!?」


「ちと主らを甘く見ていたようじゃのぉ……?」


「っ、まだ動けんのかよ!!」


「…………わしも取っておきを出しちゃろう……来いっ、レミリア!!」


部屋の壁の奥から、ガチャガチャと機械音。

天井が開き、現れたのは──


少女の身体に蛾の羽を持つ人機。

それは“レミリア”と呼ばれ、パタパタと羽ばたきながらゆっくりと降下してきた。



---


「こっこれは!?」

「なによっ、なにか見つけたの?」

「サディスの部屋にあるオイルタンクの油がここまで漏れてきてるでござる……これを使えば行けるかもしれんですぞ!」

「なら早くやりなさいよっ!」

「承知でござる! 爆弾をセットして……発破でござるっ!」


ドォォォォォォンッ!!


---


「なっ、なんだ!?」

「待たせたでござるね? 真打ち見参でござる!! グヘェッ」


腕を組み、キメ顔で名乗るデヘン。

しかし背後から来たコメットたちにすぐさま下敷きにされる。


「ショウっ!」

「セレナっ!!」

「かっ、感動の再会でござるね……」


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