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第三十八話「ゲルマニカ研究所」


暗く、湿った空気が漂っていた。

かつては清潔で整然とした研究施設だったのだろう。

だが今は、廃墟と呼ぶほうがふさわしいほど荒れ果て、薄暗さと静寂が不気味なほど濃く張りついていた。


ショウたちは右の通路へ、コメットたちは左の通路へと分かれ、それぞれ慎重に足を進めていた。


「……なんか、ここ、嫌な感じがするね……」

シンが周囲を見渡しながら呟く。

通路の壁には焦げ跡や刃物の傷が無数に走っており、誰かが何かと戦った痕跡が残っていた。


重々しいスライドドアを抜けると、無数の機械装置が並ぶ広い部屋に出た。

だがその光景は“研究室”というより、むしろ“拷問部屋”に近かった。


「……冗談だろ。ここ、本当に研究所かよ」

コールが肩をすくめる。

金属の台には手足を固定するベルト、装置の側面には乾いた血と獣毛。

まるで実験動物を痛めつけるためだけに設計されたような器具ばかりだった。


ショウは中央の操作卓に近づき、指でパネルを軽く叩く。

「ロックがかかってるけど……これならいけるかも」

彼はバックパックから端末を取り出し、機器に接続した。

ディスプレイの青い光が、暗い部屋の中で彼の瞳を淡く照らす。


シンとコールは周囲を調べ始める。

壁際の棚には分厚いファイルが何十冊も並んでいたが、どれも中身が抜き取られていた。


「……全部空っぽだ。こっちは何の手がかりもねぇな」

「こっちもだ。……けど、この焼け跡、まだ新しいぞ」


二人が小声で話していると、端末から軽い電子音が鳴った。

「よしっ! アクセス成功!!」

ショウが笑みを浮かべたその瞬間――天井の奥、換気ダクトの方から金属が擦れる音がした。


「……!? 今の聞こえた!!?」

シンが銃を構える。


カサ……カサカサ……。

ダクトの奥で、何かが蠢いていた。


「くっ、嫌な音だな。ネズミのサイズじゃねぇ」

「グルルルルルルッ」

コールも銃を構え、アンバーは主人の前に立つ。

ショウは操作を止め、壁を背にした。


「……何か来る!」


直後、天井の換気口が弾け飛び、黒い影が落下した――。



---


一方その頃、左の通路。

異様なほどの静寂が支配していた。


壁の両側にはガラス張りの小部屋がいくつも並び、どれも中は空っぽ。

床には黒い液体の乾いた跡が広がり、壁面には血のしぶきのような痕が点々と残っている。


「……ここ、動物実験でもしてたのかしら……」

セレナが眉をしかめる。


「動物もそうだけど……もっと“デカい何か”よね、これ」

コメットがガラス越しに床を照らす。

ライトの先、鋭い爪痕が幾筋も走っていた。


「やばいですよ……ここで飼ってた“何か”が、今も……」

カトレアの声がわずかに震えた。


コメットが深いため息を吐き、前へ進む。

「不安を漏らす暇があるなら後方警戒を。……前方に気配を感じるわ」


直後、通路の奥でパイプが崩れる音が響いた。

全員が反射的に身構える。


「……風、!?」

「いや、違うわ」


セレナの声がかすかに震えた。

ガラスの向こうで、何かが這いずるように動く気配――しかしライトを向けた瞬間、それは消えていた。


「っ! 追いますか?」

「無駄よ……もう気配がないわ」


重苦しい沈黙が流れた。

コメットがわざと軽くため息をつく。

「ほんっと嫌な場所ね。とっとと片付けて出ましょ?」


誰も異を唱えなかった。

三人はそのまま進み、最奥の部屋にたどり着く。


「ここが……一番怪しいわね」

セレナが呟いた。


中央には巨大なガラス製の培養槽。中は空だが、壁際の机には散乱した資料や壊れた端末が積み重なっている。


「手分けして調べましょう!」

カトレアの声で二人も動き始めた。


セレナは一人、机の下を覗き込む。

「ん……これ、床が……空いてる?」


金属製の蓋が開いており、その奥に子供ひとりなら通れるほどの穴。

暗い通路が下へと続いていた。


「すぐ戻れば問題ないし……ちょっと行ってみようかしら?」


そう言って、セレナは一人でその中へ滑り込んだ。


---


狭い通路を抜けると、そこは別世界のような空間だった。

淡い青の照明が明滅し、中央には古びた机と椅子。

壁には複数のモニターが並び、何本ものケーブルが蛇のように床を這っている。


どこかで水滴が落ちる音が、一定のリズムで響いていた。


「ここ……だけ、妙に整理されてる?」

セレナが首を傾げた、その瞬間。


天井から伸びるワイヤーがカチリと鳴った。

「っ!」

身体が宙に浮く。足元からネット状の罠がせり上がり、彼女を吊り上げた。


「な、なにこれぇ!? 離してよっ!!」


もがくセレナの下に、静かに足音が近づいてくる。


「……ああ、やっと見つけたでござる。レミリア……」


湿った声が響いた。

闇の中から現れたのは、白衣をまとった小柄な人機だった。

どこか怯えたような目で、しかし陶酔したようにセレナを見上げている。


「あなたが……サディス博士……?」


「ちがっ、違うでござるっ! 拙者は"デヘン"でござるよっ!!忘れたでござるか?それはいいとしても

拙者をあんな奴と一緒にしないでほしいでござる、レミリア!」

「レミリア……? 何言ってるのよ、人違いよっ! 今すぐ放しなさい!」


「...本当に……人違いでござるか? でも君は“よく似ている”……いや、まさしくあの子でござる。   可愛い……ああ、可愛いでござる……!」


デヘンと名乗ったその人機の瞳が、異様な光を帯びた。


「さっさとアタシを開放しなさいっっ!」

「ダメでござる。君は拙者の念願の“本物のレミリア”でござる。逃がすことはできないでござる……」


デヘンが装置のスイッチを入れる。ネットがさらに締まり、セレナの身体が軋む。


「うぅっ……ショウっ!! 助けにきなさぁぁぁい!!!」


彼女の悲鳴が、研究所の地下深くまで響き渡った。


──だが、上層にはまるで届かず。

少女の叫びが、仲間たちのいる場所の沈黙を破ることは叶わなかった。

デヘン

見た目は〇クセルワールドの主人公〇ルユキ(ふくよか)をメカにした感じ

ロリコン、ある理由のため終末世界でも合法を勝ち取るべく努力している。

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