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第三十四話「改名」


 傭兵団アジトでの滞在は十日間にも及んだが、

 それぞれが訓練の成果で新たな戦闘スタイルを得ることができた。


 「いやー、すっかり長居しちまったな」

 「ここから次の街までもかなり距離があるから、準備に時間がかかったね」

 「ぼくもアンバーの躾やエサの確保、武器の調整とか、色々あったし」


 「俺は今回の訓練のお陰でさらに腕を上げたぜぇ?」

 「僕も今の装備の力を最大限引き出せるとようになった思う!」

 「今回は特にセレナの成長がズバ抜けてたわ〜」

 「フフンッ、射撃の精度はモチロン!

 接近戦でもショウの考えてくれた方法で問題なく戦えるわっ!」

 「射撃ポイントの選定と状況判断も完璧。もう免許皆伝よ〜!」


 「ワンワンッ!」

 「アンバーも忘れてねぇぞ?

 ショウが作ってくれた装備で一緒に戦えるんだからな!」

 「アオオォォン!」


 「みんなそれぞれできることも増えたし、

 そろそろ次の街を目指しても良さそうかも」

 「そうだ!そういえばみんなのために無線を作っといたんだよ!!

 渡しておくねっ」


 「助かるぜぇ」

 「これで離れていても安心ね!」

 「材料が足りなくて三つしか作れなかったから、

 シンとコール、セレナに渡しておく!後でチャンネル合わせを忘れずにね!!」

 「うん、わかったよ!」

 「おっしゃ!そろそろ行くとするかぁ」


 アジトの入口で最終確認をしていると、

 ハデットを始めとした傭兵団のメンバーが見送りに来た。


 「皆さん、この度は略奪者の撃退にご協力頂き、誠にありがとうございました。

 本物のコラプトこそ倒せませんでしたが、

 奴らに大きな傷を負わせられたことは大きな成果です。

 失ったものも多いですが、

 これからも傭兵団として活動を続けていこうと思います」


 「ああ」

 「頑張って下さい」


 「……それと、ショウ様」

 「? なんでしょうか?」

 「我々は今まで、サラと私で決めた《鋼鉄小隊(スティール・スプラトゥーン)

 という名を名乗ってきました。

 ですがこれからは皆さんのように“仲間を想う団”でありたい。

 その気持ちを込めて新たに、想いという翼を持つ

 《ウィル・フライト》と名乗って活動していこうと思います!」


 ハデットが自作の旗を掲げ、声高らかに宣言する。


 「いいですね!」

 「素敵な名前っ!」

 「この翼の絵はアンバーのやつだな!」

 「はい、ご立派な翼でしたので参考にさせて頂きました」

 「ワオォォォン!」

 「嬉しそうねぇ」


 ウィル・フライトの団員たちは目を合わせ、片膝をついて唱和した。


 『我らウィル・フライトはショウ様の翼!』

 「俺らの想いは貴方の羽にっす!」

 「いついかなる時も仲間の想いを受け継いで!」

 「世界の希望と共に!」


 『貴方の行く道の一助にならんことを!!』


 腹の底からの誓いが響き渡る。

 その想いは、ショウたちの旅立ちへの気持ちを奮い立たせるには

 十分すぎるほどのものだった。


 「そんじゃ俺たちはもう行くぜぇ。世話んなったな、テンス」

 「こちらこそありがとうございましたっす!教えられることは教えたんで、

 あとはアレンジしちゃってくださいっす!」


 「ジェフさん、本当にありがとうございました!」

 「俺は可能性を示しただけだ。今後どう伸びるかはお前次第……だが筋はいい、精進しろ」

 「はいっ!」


 「ここから聖街に行くには“再帰の森”を通らねばなりません」

 「再帰の……森?」

 「普通の森とは違ぇのか?」

 「ええ、“野生を取り戻す森”とも呼ばれています。その森は、

 人機が野生に帰ることがあると噂されており、森を通ったきり戻ってこない者も……」


 「ハッ、人の意識を移した機械が野生に戻るたぁ、面白い話だな」

 ジェフが吐き捨てるように言葉を漏らした。


 「……聞いた話では、野生に帰った人機たちは群れで行動しているようです」

 「その……害はあるんですか?」

 「人機が近づく分には問題ないかと。ただ、こちらが危害を加えれば当然襲ってきます。

 私が心配しているのはショウ様...........。

 ショウ様は生身の人間、その者達がショウ様をどう認識するのか…………

 どうかくれぐれもお気をつけ下さい」


 「有益な情報ありがとうございます。......これをウィル・フライトの皆さんに!」

 ショウは掌サイズの薄型端末を取り出し、ハデットに渡した。


 「これは……?」

 「通信用の端末です。この先何があるか分かりませんから、

 お互いに連絡を取り合えるようにしておきましょう」


 「有り難い……これでいつでも駆けつけられます!」


 「できれば赤薔薇の司令官、バレッタさんにも渡してもらえるといいのですが」

 「問題ありません! その大役、このハデットにお任せ下さい!」


 「一ついいか?渡すのはバレッタじゃなくマーシャだ。

 それと“ショウの端末からしか発信できない。そっちは受信のみ”って伝えてくれ」

 コールが低く念を押す。

 「え?でもバレッタさんの方が——」


 『渡すのは絶対マーシャ(さん)で!』


 シンとコールが圧を加えて念を押す


 「う、うん……そうだね……?」

 「わかりました。そのようにお伝えします」

 「頼むぜぇ」


 シンとコールはショウに聞こえないようにひそひそ話す。

 「バレッタが持ったら鬼電コースだぞ」

 「事前に防がないとタイトル変わっちゃうよ」

 「マーシャに渡しときゃ大丈夫だろ」


 一行は別れを惜しみながら握手を交わし、いよいよ出発の時を迎える。

 「ショウ様、お元気で!」

 「みなさんも!また必ず寄りますから!」

 「その時は盛大に歓迎させてください!」

 「待ってるぜぇ!」

 「待ち遠しいっす!」


 ホバーに乗り込み、ショウたちは走り出した。

 「ショウ様〜!みなさ〜ん!この御恩、何倍にも増やしてお返ししますからね〜!!」

 ハデットたちは姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。



---


 アジトを出発して三日。

 荒野は終わり、林の中を進んでいくと、鬱蒼とした森が広がる。


 「おお……これが“再帰の森”か……」

 「今までの林とはまるで違うね……」

 「こんだけ木が生い茂ってるとホバーもゆっくりしか進めねぇな......」

 「何が起こるか分からない。誰もはぐれないように慎重に行動しよう」


 「……ラ…ん……よ」


 「え?」

 行動の方針を話していると、コメットの様子がおかしいことに気づいた。

 「ママ?どうしたの……?」

 緊張が走る——まさか“野生化”したのか?


 コメットが顔を上げ、突然叫んだ。

 「ゲリラ戦の訓練よっ!!」

 「へっ?」

 「セレナ!私が昔、軍でやってたゲリラ戦の立ち回り方を教えるわ!」

 「いや、ママ!今みんなで固まって行動しようってぇ!?」

 「さぁ行くわよ〜っ!!」


 ビュンッ!


 蜘蛛の子を散らすように、コメットがセレナの手を引っ張り森へと消えていった。


 「……おいおい、どうすんだぁ!?」

 「すごい勢いで行っちゃったね……」

 「と、とにかく追いかけよう!」


 想定外の展開に動揺しながら、全員は森へと入っていった。

 森の奥から覗く無数の視線に、誰一人として気づかぬまま——。


 「全く、どこ行ったんだぁ?コメットたちは……」

 「ほんと、全然見当たらないね……」

 「そうだ!無線があるんだからそれで連絡すればっ!」

 「その手があったかっ!!」

 「僕のを使って、ショウっ!」


 シンから渡された無線を手に取り、ショウは固まった

 「ちゃ.....チャンネル合わせ......忘れてたぁぁああ!!!」

 「そういや、そんなもんあったな......」

 「ど、どうしよう...」


 「こんな広い森でゲリラ戦の訓練なんてされたら、

 見つけるのは至難の業だよ……」

 「とりあえず今日は、この開けた場所でテントを張って休むしかねぇな」

 「...そうだね、僕はテント設営をやるよ」

 「俺ぁアンバーと水汲みだな」

 「ワフッ」

 「ぼくはシンの近くで枝を拾っておく!」


 「シン、頼んだぞ」

 「ちゃんと見ておくし、

 ショウも近くで作業してるって言ってるから大丈夫だよ」

 「そうだな、じゃあちょっくら行ってくるわ」

 「ワン!」

 「行ってらしゃーい」

 「気を付けて!」




 「ふぅ、焚き火用の枝もだいぶ集まったな……あれ?少し離れちゃった、急いで戻らないと——」


 その時、後ろの茂みからガサガサッと音がした。

 「……ん?」


---


 「よしっ、少し手間取ったけど傭兵団から借りたテント、無事設営完了だ!

 ショウ、枝は集まったぁ……?」

 「お〜い、戻ったぜぇ〜」

 「ワンワンッ!」

 「……?ショウはどうした?」

 「……ない…」

 「は?ないって……」

 「ショウが居ない!!」

 「いや、またかよ!!!」


——そして、静寂の森に、不穏な風が吹いた。


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