番外編「アンバーのきもち」
「ワフッ」
(ボクの名前はアンバー。ご主人にそう名付けてもらった。)
「アンバー!」
「ワワンッ!」
(この人がボクのご主人、ショウ。変な奴らにさらわれたボクを助けてくれた、命の恩人だ。)
ペロペロペロペロ……
「アッハハ、くすぐったいってぇ〜!」
「ワウワウッ!」
(今日はショウに出逢う前のボクのお話。短いけど、最後まで聞いてほしいんだ。)
***
ボクはおとうさんとおかあさんと、岩だらけの山のてっぺんで暮らしていた。
空気は冷たくて、風は強くて、でもそこがボクたちの“家”だった。
おとうさんはボクよりも、おかあさんよりもずっと大きくて、堂々としていた。
おかあさんは小柄だけど、とにかく強くて狩りが上手かった。
いつもおかあさんが獲物を持ち帰り、おとうさんはボクを守ってくれた。
(守られて、愛されて、あのころのボクはただ幸せだった。)
***
時々、変な“お客さん”が来た。
二本の足で立つ、小さな鉄の塊。
よく分からないけどなにかしゃべりながら、器用におとうさんとおかあさんの爪を切ってくれた。
「じゃあな、チビ助。でっかくなったら、爪わけてくれよぉ?」
「ワウ?」
(なんだコイツ……ボクよりちっちゃいくせに、なんか偉そうだぞ?)
でもおとうさんもおかあさんも、そいつが来ると少し嬉しそうだったから、ボクは何も言わなかった。
(何がそんなに良いのかなぁ?)とは思ったけどね。
***
ボクは少しずつ、狩りの練習を始めた。
おとうさんと飛ぶ練習、おかあさんと獲物を追う練習。
空を飛ぶのは全然ダメで、おとうさんが途中でやめちゃったけど、狩りはそこそこ得意だった。
初めて野ネズミを捕まえたときは、おかあさんがすごく褒めてくれて、嬉しかった。
でも、ネズミ数匹じゃお腹は満たされない。
だからボクは、一人で森の奥へと進んでいった――。
***
そこで、出会ってしまったんだ。
“奴ら”に。
「おっとおっと〜? こ〜んなところにセレスウルフの子供がぁ??」
(こいつ……爪切りのやつとは違う。)
「ラッキィィィィィィィィィチャンス!!!」
鉄の腕がボクの体に触れた瞬間、全身が痺れて動かなくなった。
「ワフッ!? ワウッ……!」
「そりゃそりゃ〜応援よ〜せいっ!!」
鉄の奴が四角い板をいじる、そいつの不気味さにボクの身体が震えていた。
その時だった。
「ガァァァァッ!!!」
おとうさんが飛び込んできた。巨体で体当たりを食らわせ、敵の前に立ちはだかる。
続けて、おかあさんも空から舞い降りた。
二匹のセレスウルフが翼を広げ、子を護るように構える。
「やっぱ来やがったかぁ! 邪魔なんじゃも〜、サディスとの交渉にゃ不要なんじゃい!」
その後ろから、丸いタイヤを持つ鉄の塊が、森を切り裂いて現れた。
「合体じゃぁああ!」
「……了解した。」
ドシィン――。二体が組み合わさり、ヘンテコな鉄の獣になる。
地面が唸り、空気が揺れる。
「どしたどしたの!どぉしたのぉ?」
「……遅い。」
(おとうさん! おかあさん! 逃げて!!)
ドンッ――ドンッ――。
重い銃声が二つ。
その音のあと、森の空気が静かになった。
おとうさんとおかあさんが……倒れていた。
「ワウッ!? ワンワン!! ワンワン!!」
(いやだ、動いて! お願い!)
父は立ち上がろうとしたけれど、足が震えて立てなかった。
母は息を吐くたび、血を流していた。
「ヒハハッ! 大成功ぅぅ!!戦利品だなぁ~剝製にしてサディスに送ってやるじぇ~!」
「……毒弾だ。数分と持たない。ササっと回収しよう」
「ワォォォォオン!!」
二匹の狼は最後の力で吠えた。
そして、ボクを見つめながら――静かに、倒れた。
(おとうさん……おかあさん……! 置いていかないで……!)
動かない体で、ボクはただ見ていることしかできなかった。
***
それからどれくらい経ったのか分からない。
暗くて狭い檻の中。
鉄の匂いと血の匂いが混じる場所で、ボクは痛めつけられながら押し込められていた。
周りには、森で見たことのある生き物たちがたくさんいた。
みんなひたすらに震えていた。
(こわいよ……おとうさん……おかあさん……どうしたらいいの……)
何度も何度も助けが来ないかと願ったが、やがてボクは決めた。
(ここを出る。ボクがみんなを出すんだ。おとうさんとおかあさんなら、きっとそうしたはず。)
だからボクは、何度も何度も吠えた。
喉が裂けても、声が枯れても、吠え続けた。
***
そんなある日。
檻の前に、小さな子どもと、お腹から下がない鉄の塊が現れた。
「……ここは、一体……?」
「檻が……こんなに……」
(また“鉄”だ! ボクたちをいじめる奴だ!)
「ワンッ! ワンワンッ!」
「どうして、こんな……」
「赤ん坊ばかりだわ……」
(うるさい! 出てやる! 今に見てろ!)
ウィーン
そこにグウェイドが入ってきた
「ワンワンッ!」
(やっぱり仲間なんだな!)
ビリビリビリ――ッ!
「キャウンッ!!」
(また、電気のやつ……!)
「やめろ!!」
怒りの声が響いた。
小さな子どもが怒ってくれたのだ。
その声は、ボクがこれまで聞いたどんな声よりも優しかった。
ショウ。
その少年が、ボクに触れた。
動けないボクの体を優しく撫でてくれた。
(なんでだろう……すごく温かい……こんなに温かい手、知らない……)
ボクは安心して、眠ってしまった。
久しぶりに、怖くない夢を見た気がした。
***
目が覚めたとき、ボクはもう動けるようになっていた。
隣には、ぐっすり眠りながらも寄り添うショウがいた。
(ずっと……そばにいてくれたんだね。)
ボクはお礼を言うように、その頬をペロペロ舐めた。
***
「お〜い! アンバー!!」
「ワフッ!」
(なになに? ご主人!)
「今日はボールで遊ぼう!」
「ワンワンッ!」
(遊ぶ! めちゃくちゃ遊ぶ!!)
ペロペロペロペロ――
「ワハハハッ、いや、だからボールで遊ぶんだって〜! こらこら……もうなめすぎぃ〜!!」
(ボクにはもう、おとうさんもおかあさんもいない。
でも、ボクを救ってくれたショウがいる。
あの温かい手を、ボクはぜったい離さない。
守るって決めたんだ。)
「ちょっとアンバー!! 犬だからってショウにペロペロするのはやめなさいっ! アタシだって我慢してるのよ!!」
「セレナ?はしたないわよぉ〜。」
「ワフッ!」
(ボクは今日も元気です!)
――
犬可愛いですよね、皆さんはどっち派ですか?
ちなみに自分は鳥派です。
二択に風穴ぁぁぁあああ!!!!!




