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第三十一話「激戦の後に」


 一行は拠点に戻っていた。

「コメット、ここに降ろすぜぇ」

「悪いわね……今日はセレナのために、奴らのアジトを六つも潰したから疲れちゃったわ……」

「あそこ以外にもあと五つ!?」

「コメットさん、疲れているところ恐縮ですが、そのアジトとはどの辺りに……」

「ママは疲れているのよ?そんな話させなっ」

 セレナが止めようとしたが、コメットがその手を制した。


「いいわぁ……教えてあげる……娘のためですもの。屑は根絶やしの方がいいから……場所は此処と――」

「……ママ……」

「ありがとうございます。我々はさっそく調査に行ってきます。」

「ぼくも行きます! コメットさんの修復に使えるものがあるかもしれません!」

「わかりました、ショウ様。では残党処理部隊を編成し、出入口で待機しております。ショウ様も準備が出来次第お越しください」

 ハデットは少し気落ちした様子だったが、足取りはしっかりしていた。


「……やっぱりショックが大きいわよね……」

「……そうだね。裏切り者はいないと思ってたけど裏切られ、愛していた人は壊された……ぼくだったら耐えられないほどの苦しみだよ……」

「それでもあいつは立たなきゃなんねぇ。それが余計に辛ぇわなぁ...」

 ショウもハデットの気持ちを考え、沈みそうになるが、彼が前に言ってくれた“あなたにしかできないこと”という言葉を思い出し、顔を上げた。


「シン、コール、ホバーを動かす! 使えそうな物は引っ張ってでも持って帰ろう!」

「了解!」「おう!!」



---


 拠点の奥。

 コメットが寝かされた台座の横で、セレナが手を握り俯いていた。


(アタシはママが飛ばされた時、何してた? 何が出来た? いっつもアタシは守られてばかりだ。上半身だけでは出来ないことが多すぎる。今回は誰も死ななかった。でも次、またこんなことがあって、誰かがショウやアタシを守るために犠牲になったら……そんなのは耐えられない。アタシはもう、守られているだけではダメなんだ)


 セレナの瞳は、かつてないほど強い光を放っていた。



---


「ハイハイ、並んでくださーい!」

 ショウがレイダーズの補給所や停留所で得た物資や部品を使って修復をこなしていく。

「コンバート希望者はこれから移動して、指定の場所に向かいますよー!」

 シンが指示を出し、希望者を並ばせていた。


「しっかし、奴ら自前でコンバート設備まで持ってやがったとはな……おかげで助かったけどよぉ」

「だなぁ。こっちとしては儲けもんだぜ。でも取り返される可能性もある。今回使ったら破壊だな」

「もったいねぇっす!」

「また奪われたらかなわねぇよ」


「コメットさん、今回の損傷は無視できません。ぼくはコンバートをした方が良いと思うんです......」

「それは……そうよねぇ……」

「どうかしたのかぁ?」

「この身体にだいぶ馴染んできたから、出来ればこのままがいいのよ……どうにかならないかしら?」

「…………う〜ん」

「自分、コンバートなんて初なんでよくわかんねぇっすけど、一旦コンバートして、今の機体を直して、それからまたコンバートで戻せばいいんじゃな……」


 ジェフ以外の全員が一斉に顔を上げる。


「テンス! おめぇ天才か??」

「そうだよっ! そうすれば拒否反応無しで機体が直る!!」

「なんで今までそんな簡単なことに気づかなかったんでしょう!」


 新発想に歓喜が広がる――が、それを打ち砕く声が響いた。


「そいつぁ無理な話だぜぇ」


 ジェフが現実を突きつけた。


「俺たちが意識として入れる機体は、部品も構成も“コア”に登録されているものでないとダメだ。武器はアクセサリー扱いだから問題ない場合が多いが、身体に埋め込まれりゃそうはいかねぇ。改造機体だと登録されてない状態でパーツが組み込まれる。見た目は一緒でも、コア的には完全な異物だ。必ず拒否反応が出る……しかも、つければつけた分だけコンバート直後に一気にやってくる。想像を絶する地獄だ……..そんなもん...見たかねぇだろ……?」


「ジェフ……見たことあるのか……?」

「ああ。相当な地獄だった。拒否反応で自我を失い、制御不能なパーツは思い思いに暴れ回る……あんなことは二度とごめんだ……」


 重苦しい空気が流れる。


 そんな中、コールが腕を組んで呟いた。

「……要は、コアの登録が出来ちまえばいいんだろぉ?」

「コール……簡単に言うが、設備はあっても、それを触れる人材が……あっ!?」

「思い出したか? うちの天才様をよぉ!」


「しょっショウ様ぁぁぁあああ!!」

 全員が土下座でショウを囲んだ。


「いや、コアは触ったことないから!まだ分からないからね!?」



---


 レイダーズのアジト。

 ステルス機の止まっていたすぐ横の扉を入ると、精密機械が所狭しと並ぶ部屋にたどり着いた。


「これがコンバート用の設備……」

「コンバート希望者は、優先度の高い人から並んでくださいね〜」


「コメットさん……本当にいいんですか?」

「ママ……」

 心配そうなセレナを横目に、コメットはゆっくりと頷いた。


「ええ……大丈夫よ。もしダメでも、他の機体で我慢するわ」

「コアに手を加えるのはぼくも初めてです。何が起こるか分かりませんが、最善を尽くします!」


 つい先程まで使われていたと思われる設備の床に、ペシャンコの鉄片が転がっていた。

「……ボウリー。まさかおめぇが裏切り者だとはな……恐らく脅されたかなんかだろうが、安らかに逝けよ……」


 コメットは左側のポッドに入り、レイダーズのコンバート用ロボットを右側のポッドに入れる。


「まずはコンバートです。リラックスしてくださいね」

「ええ……」

「じゃあ――スイッチを入れるぜぇ」


 ガチャンッ。

 低い唸りが次第に高まり、やがて耳をつんざくほどの高周波に変わる。

 メーターが振り切れた瞬間――装置が止まった。


 プシュー。


「う〜ん、自由に動けるってサイコーねぇ?」

 レイダーズの姿のコメットが立ち上がった。

「じゃっ、お願いね?」

「はい、早速取り掛かります」


 紅修羅の機体を台に乗せ、ショウがリペアツールを片手に作業を始める。

「まずは全体の破損を修復、焼けたエネルギーラインを交換して、それが終わったら初めて新しいラインをコアに登録する……ぼくでも登録出来れば、今後の修復にも大きな力になるはずだ」


 手早い作業で破損修復は進み、倒したレイダーズの残骸から無傷なエネルギーラインを回収して紅修羅に取り付ける。


「ふぅ、とりあえず外部的な修復は終わった……あとはコアに登録を……っと」

 紅修羅の胸部装甲を取り外し、あらわになった黒いコアを前にショウは感じた。


(やっぱり……リペアツールを初めて触った時と同じだ。コアの“触り方”が解る……)


 ショウは自然な手つきでツールを当て、何度か空中に光の軌跡を描いた。

 そして、作業の手を止める。


「終わりました……」

「マジかよ!!」

「こいつはすげぇ!」

「早速コンバートしてみましょう!」


 機体を先程とは逆に設置し、コンバートを起動する。


---


「これよこれっ! この機体よぉ〜!!」

「大成功だねっ!」

「やったなショウ!!」


「コメットさん、さっきのコンバート機体でも十分戦力になると思いましたが、何故直してまでその機体を使われるのですか?」

ハデットが純粋な疑問を投げかけた。


「この機体はぁ〜、セレナをしっかり背負って戦えるのよぉ〜!!」


「へ?」

 その場にいた全員が、(そんな理由で?)と心の中で思った。


「ママっ! お願いがあるの!!」

「あらっ! セレナが私にお願いなんてっ//// 全修復以外ならなぁ〜んでも言うこと聞いてあげるわ♡」

「アタシもショウに全修復してほしいの!!」


「…………あぁ?」

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