表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/83

第三十話 「力皇ダウパ」


「ママぁぁぁぁっ!!」


セレナの悲鳴が響いた。

粉塵の中、壁に叩きつけられたコメットは、壁にめり込んだまま動かない。


「……コメットさんっ!!」

ショウがすぐに駆け寄り、リペアツールを展開する。

焦げた装甲の割れ目を繋ぎ、内部の導線を確認しながら低く唸った。


「くそっ……エネルギーラインが焼けてる。でも、まだ間に合うはずだ……」

「ママ、頑張って……!」

セレナが震える手で母の頬を撫でる。

その指先に、微かにだが動力が戻った。


「……セレナ、泣かないで……あとは……お願いね……」


「ショウ!こっちは任せて!」

シンが立ち上がる。

その横で、コールが武器を構えた。


「相撲取りだろうが何だろうが……なめんじゃねぇぞ!!」


「のこったぁ!!」


力皇ダウパの踏み込みと同時に、地面が爆ぜた。

まるで装甲列車の突進。

コールが即座に回避し、シンにも攻撃が迫るが間一髪で避ける、その余波だけで壁が粉砕された。


「……化け物かよっ!」

「押しが強すぎる!真正面はムリだ、コール!」

「分かってらぁ!」


しかし避けた先を読んでいたかのように、巨腕の掌底が唸りを上げた。

「遅いわいっ!!」

鈍い衝撃音。シンが後方へ弾き飛ばされる。


「シンさんっ!!」

テンスが銃撃で援護に入るが、振り向きざまの張り手一閃。

弾丸は空中で弾かれ、テンスごと吹き飛ばされた。

「がはっ……!」


「うおおおおおっ!」

ジェフとハデットが同時に突っ込む。

「左右から攻めるぞっ!!」

次の瞬間、左右に放たれた張り手が同時に炸裂。

二人まとめて床に叩きつけられる。


「どいつもこいつも、軽すぎるでごわす!!」


仁王立ちしたダウパが、笑いながら腕を広げた。

「さぁ来い!幕下ども!稽古つけてやるでごわす!!」


「……くそっ、あいつ桁違いだぞ……」

コールが歯を食いしばる。

瓦礫の影で、シンがゆっくりと立ち上がった。


「……僕たちの土俵で勝てないなら、相手の土俵で勝負だ。」

「まさか……本気で言ってるのか?」

「正々堂々、相撲で勝つ。それが“横綱”への最大の挑発になる。」

「……いいぜ。なら、俺が土俵を作ってやるよ。」


コールが地面に小型爆弾を並べ、起爆。

爆風で砂煙が舞い上がり、地面に円形の窪みが現れた。


「ほう……土俵を作るとは、なかなか心得とるでごわす!」


「準備はいいな、シン!」

「ああ、僕たちの相撲ってやつを見せてやろう!」


「のこったのこったぁっ!!」


再び衝突。

シンは推進出力を絞り、正面から受け止める。

巨腕が迫るたび、衝撃波が走り、鉄骨が軋む。

一撃、二撃、三撃——全てギリギリで受け止めた。


「ぐっ……!負けるかぁっ!!」

「どうしたぁ!まだまだじゃぁ!!」


押される。

土俵際に追い詰められるシン。

その瞬間——


ガシャンッ!


壁に刺さっていた赤い槍がいつの間にか宙を舞う。

粉塵の向こうで、コメットの右腕が動いていた。

「ママ……!」

セレナが叫ぶ。


槍が弧を描き、ダウパの右膝を貫く。

「ぬぅっ!? 膝が……!」

体勢が崩れる。


「今だ、コールっ!!」

「任せなっ!!」


『ワンポイント・ボム!』


ダウパの足元で爆光。

巨体が大きく揺らぐ。


「ここだぁぁぁっ!!」


シンの背部ブースターが点火。

身体が十メートルの高さに跳ね上がる。

空中で左手を伸ばしマワシを捲り取る、すかさず左腕のワイヤーを発射——。


「これが……僕の全力フルスロットルだぁぁぁ!!」


ワイヤーで巨体を引き寄せながら、ブレード展開

光の軌跡が空を裂く。


『終章・大往生!!』


ギギギギギギギギィィィンッ——!!


ダウパの胴体が真っ二つに裂け、火花と爆炎が咲いた。

「……幕下から……やり直しで…ごわ…す……」

その言葉を残し、力皇は崩れ落ちた。


轟音。倉庫の天井が吹き飛び、静寂が訪れる。

風が、戦いの終わりを告げるように吹き抜けた。


「……勝った……?」

コールが息を吐く。

セレナが母の手を握りしめた。

「ママ、ちゃんと見てた?」

コメットの瞳が、かすかに光った。

「見てたわ……素晴らしかった…」



---


戦闘の余波が去り、拠点の中に残ったのはもふもふの生き物たち。

戦いの騒ぎに怯え、丸まって震えていた。


「……怖かったわね。でも、もう大丈夫よ。」

セレナがそっと撫でると、小さな毛玉たちが顔を上げた。

ショウがツールをしまいながら笑う。

「さて、この子たち、元の場所に返してあげようか。」


皆で外の森へ向かう。

陽が傾き、風が柔らかく木々を揺らしていた。

そこへ——それぞれの親たちが現れた。

茂みから顔を出す狸のようなもの、翼のある猫のようなもの。

鳴き声が響き、次々と子たちを迎えに来る。


「よかったね……みんな、帰れた。」

セレナが微笑む。

しかし、一匹だけ、翼の生えた犬のような生き物が残っていた。

琥珀色の瞳でショウを見つめ、しっぽを振る。


「君の家は……ないの?」

その子は小さく鳴いて、ショウの足元にすり寄った。


「……しょうがねぇな。ついてくるって顔してやがる。」

コールが苦笑し、シンが頷く。

「仲間が増えるのは悪くないさ。」

「セレナ?ちゃんと面倒みるのよ??」

コメットがシンに肩を借りながら念押し?する

「いや、捨て猫拾ってきた訳じゃないわよ…」


「ふふっじゃあ、今日から一緒だね。」

ショウが抱き上げると、翼の犬はうれしそうに鳴いた。

「名前はどうすんだぁ?」

「…琥珀の瞳……アンバー、この子はアンバー!」

「おっしゃアンバーよろしくな!」

「ワフッ!」

「ウフフッ気に入ったみたいよ?」

「じゃあ、そろそろ行こうか!」


夕陽の中、仲間たちは歩き出す。

傷だらけの身体に、静かな風が吹いた。


そして、戦いの余韻の中に、ほんの少しのぬくもりが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ