第二十八話「潜入......?」
ステルス機の腹部ハッチが開き、鈍い振動とともに内部の光が漏れ出す。
そこは薄暗い倉庫のような空間だった。
「……ここは、一体……?」
「檻が……こんなに……」
整然と並んだ金属檻の中には、まだ幼い生き物たちが押し込められていた。
猫、犬、鳥、そして名前も知らない異形の獣たち――どれも小さな身体で、母を呼ぶように鳴いている。
「どうして、こんな……」
「赤ん坊ばかりだわ……」
セレナの声が震える。
その中に、ひときわ激しく暴れる一匹の犬がいた。
翼を持ち、毛並みは白銀。だが、檻を壊さんばかりに暴れている。
「あんなに暴れて大丈夫かな……」
「アイツらがうるさがったら何するか分からないわよ……」
ウィーン……。
機械音とともに扉が開く。コラプトとグウェイドが入ってきた。
グウェイドは仰々しく顎をしゃくり、犬の隣にあるレバーを引いた。
ビリビリビリッ――!
「キャウンッ!」
電流が檻全体を走り、翼犬が悲鳴を上げて倒れ込む。
「な、なんてことを!」
セレナが叫ぶと、コラプトがねっとりと振り向いた。
「んあ? コイツはわっちゃのもんだ。何するもわっちゃの勝手。オマェらに指図されぇ言われはねぇ」
「クズが!」
コラプトはピクリと笑い、頭をかしげながら歌うように呟く。
「葛……いい響きだぁ〜……いや、屑! こっちのがもっといいなぁ〜。ゾクゾクするような響き、最高だぁ……!」
ふらふらと狂人のように踊りながら、奴は出ていった。
「なんなのよあの変な奴……」
「それより、早くあの子を助けないと!」
ショウは腰のツールホルダーからリペアツールを取り出し、鍵穴に触れる。
カチリ。
檻のロックが分解され、扉が開いた。
「……大丈夫?」
翼犬はまだ動かない。麻痺させられているらしい。
ショウは優しくその頭を撫でた。
「機械の修復は分かるけど、生き物のことは全然分からない……。とりあえず、そばに居てあげよう」
「わかったわ」
二人は並んで犬のそばに腰を下ろす。
冷たい床の上で、ショウは心の中に語りかけた。
(シン、位置情報は送った。僕のカバンが信号を出してる。必ず来てくれると信じてる。みんなが来るまで、僕はこの子たちを守るよ――)
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――同時刻。
「シンさん、ここが言われた場所っすよ」
「……ああ、ありがとう。もう大丈夫、ひとりで立てるよ」
シンは深く呼吸し、暗い格納通路を見上げた。
焦げた鉄の匂い。奥からはエンジンの残響。
(ショウ……キミの信号、確かに届いた。もう少しだ)
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穴を抜けたコールたちが最奥に辿り着く。
「見ろよ、行き止まりかと思ったら壁に穴がある」
バゴッ!
ガラガラと壁が崩れ、人機一体が通れるほどの大穴が開いた。
「ほぼ開通してたんだな」
「例の竜、厄介だったが結果オーライだ」
「……ここはだだっ広い、長ぇ通路みたいだな」
「滑走路みたいに長い通路だ」
ザッ、ザッ、ザッ……。
「誰か来た、隠れろ!」
左肩に同じエンブレム――レイダーズの紋章を刻んだ人機が二体、無言で通り過ぎる。
「間違いない、ここが奴らのアジトだ……」
「調べよう。何か掴めるかも知れん」
ジェフが歩き出し、武器を構え、横に伸びる通路に入る――
ガチャッ
反対側からも武器を構える音。
お互いに銃口を向け合い、緊張が走る。
「……なんだジェフさんっすか」
「テンスか!」
「遅ぇぞ、シン!」
「コール!」
緊張が解け、彼らは短く頷き合う。
「ショウの信号はこの先だ。急ごう!」
「ショウの場所がわかんだな? よし行こう!」
「了解!」
彼らは廊下を駆け抜ける。
そのとき、遠くから轟音。
「なんだ!? 壁が――!」
金属壁を突き破り、紅い影が現れた。
それは、今にも全てを蹂躙せんとする人機――コメットだった。
「ここが一番臭いわぁ……セレナをこんな酷い匂いのところに閉じ込めるなんてぇ……おい、許せねぇなぁぁぁあああ!」
狂気の雄叫びを上げながら、敵を蹂躙する。
「いいぞ……コメットォォ!」
「あれホントに味方なんですかぁ!?」
「コール! ここは任せる、僕はショウの元へ!」
「おう、しっかり助けてこい!」
「俺も行くっす!」
「ゴトゴト、ママゴト、絵空事! 何事ぉ? ドゥワァァア!?!」
騒動を聞きつけてきた二体の人機――コラプトとグウェイドがコメットとコールの間の通路から出てきた。
「…侵入者か」
「ああ、アレが臭みの元ねぇ。虫酸が走るような奴……全部、消し炭にしてあげる……」
コメットが背中にある四本の短く赤い棒を抜く。
瞬間、棒が伸び、六つの槍を持った紅蓮の修羅が誕生する。
コールもジャグリングウェポンを構え、ジェフの二丁拳銃、ハデッドのトマホークが光を放つ。
「ましゃか、こんな所までシュシュッと入り込まれるとは……あの駄竜は何をやっとんしゃも!!」
「やるぞコラプト……」
「おみゃいが指図しゅんじゃねぇ!」
グウェイドの機体が変形し、バイクのような形へ。
自転車のカゴのようなスペースに、コラプトがケツから収まった。
「ムフフッ! 居心地しゃいこう、赤い姉ちゃんもどうだァ?」
「ぶっころ……」
「周りの敵は俺らに任せてくれコメット!」
「そんな雑魚の臭いなんて気にならないわ……あの臭害は粉すらも残さない」
「ニチャァ……痺れるぅ、痺れるねぇ! 一緒に溶け合おうじぇ? キヒヒヒヒィ!!」
キモバイクがコメットへ一直線に突進していく――。
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ショウの顔をペロペロと舐める音がした。
「ううん……」
「ワフッ」
「セレナ?……チェンジで……あれ?」
「キャウッ!」
「君! 動けるようになったんだね?」
「ワウワウッ!!」
翼犬が尻尾を振ってショウの胸に飛び込んでくる。
「ハハッ! こらこら、落ち着いて!」
「元気になったみたいね!」
「セレナ、おはよう」
「ねぇ、ショウ。外がうるさいわ。助けが来たのかも!」
ズズウウゥゥ!
「本当だ! それならこの檻の子たちを全員出してあげないと!」
「手伝うわ。一緒に出ましょう」
ガチャリッ。
最後の檻の錠を分解し、熊の子どもを外に出す。
「準備できたわっ!」
「じゃあみんな! ここから出るよ!」
ガゴガゴッ!
その時、倉庫の前方――出入り口の向こう側で物音がした。
「グルルルル……」
獣たちが唸り声を上げる。
「シンさん! ホントにこのステルス機から反応があるんすね?」
「反応は悪いけど、ここで間違いないはずだよ!」
「あとはこの扉だけっす!!」
「シンたちだ! みんな、助けが来たよ!!」
獣たちが大人しくなった。
ウィーン――。
「ショウっ!! ……ってどわああああ!!」
獣たちがシンたちに群がり、ぺろぺろの口撃が炸裂する。
「シン! 来てくれたんだね!!!」
「なんすかこのモフモフ天国わあああああ!!?」
「みんなもう止まってえええ!」
「やべぇっすーーー!!」
翼の生えた白銀の犬
獣の奏者〇リンの王獣みたいな感じです。




