第二十七話「略奪の王」
シンたちは林の中を進んでいた
「あの、まだ反対側へ登る場所には着かないんですか?」
「……ああ? おお、もうちょっとやで!」
「突撃始まってないかなぁ〜」
「大丈夫やっ! ウチらが到着する時間も計算済みのはず。ハデッドもバカやない、安心して進み!」
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「ショウ!もうちょっとそっち詰めなさいよっ!」
「いや、これ以上詰めれないし、セレナの方かなり空いてるじゃん!そっち詰めてよ」
「それじゃくっつけな…こっちは無理なの!!」
二人が小声で言い合っていると、外からゆっくりと足音が近づいてきた。
(ビクッ!)
「あ〜あ〜、こりゃホントにとんだ拾い物だなぁ」
隠れていたクローゼットの扉が、ギィと開かれた。
「生のインゲンそれ野菜!生身の人間俺天才!」
「……こりゃ面白ぇことになりそうだ」
厳つい人機の肩に、小柄な人機——おじさんのようなシルエットがちょこんと乗っている。
(カチッ)
「セレナ、ダメッ!」
ショウが左腕でセレナを制した。
「止めないでショウ、耳が腐る前に喉潰す」
「いいおめめだ、なかなか肝が立ってやがる。——出てきんしゃい」
「大人しくします! だから、仲間に手を出さないでください!」
「おお、わっちゃそこまで腐っちゃおらんよ。約束は守り神」
「ぶっころモゴゴッ!」
「セレナ黙って!!!」
ショウが必死に口を塞ぐ。
「コイツらは檻しゃんへIN、移動しゅるしゅる〜」
「……行くぞ」
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「うおああああ!! 深ぇぇえええ!!!」
「どこまで落ちるんだっ!?」
「チッ、掴めるとこがねぇな」
「掴むもなにも、ど真ん中で落ちてるんですよ!!」
「着地、どうにかすっぞぉ!!」
「俺に任せろ」
ジェフがピン付きの手榴弾を下に投げる。
「おい、何やってんだ!? 意味あんのかそれぇ!」
「距離500……余裕だな…」
ワイヤーガンを二発、クロス状に撃ち込み、さらに持ち手側を反対の岩壁に二発。ピンっとワイヤーが張る。
「頼りねぇぞ……」
「まだまだこれからだぜ」
投網のようにネットを広げ、杭付きの端をハンドガンで撃ち込み固定していく。
「すげぇ……神業だ」
「ネットが保てば儲けもんだ。落下速度は抑えられる。——最悪下のワイヤーを掴めっ!!」
全員がネットに体重を預け、大幅に減速した......が、
やはり耐用範囲を超え杭が外れて、再び落下。
「ワイヤーを掴めぇ!!!」
各人が必死にワイヤーを掴み、安全を確保する。だが中心部の三名はネットに絡まったまま落ちていった。
「すまない……!」
直後、地の底から響く重低音。
「グモォオオ……」
「なんだ、この声……!?」
「ベイロンです!コラプトのペットの竜……!」
「下に巣があるのか......降りて確かめるぞ」
「そういやコメットがいねぇぞ!?」
「だな、落ちてすぐもいなかった……自力で脱出したのか?」
一行はワイヤーから手を放し、すぐ下の地面に着地する。
「暗くて何も見えねぇ……」
「ライト点けます!」
パチッ。
光が照らした先にあったのは、ネットに絡まった無残な人機の残骸——そしてそれをむしゃむしゃと喰らう巨大な影。
『出たああぁぁぁ!!!』
「こいつぁすげぇ」
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ラグナロク・レイダーズの偽アジト。床の大穴から紅い手が伸びる。
「がぁああ!!」
コメットが床を掴み、貞子のように這い上がった。
「あの屑……私を嵌めやがったな? 今頃セレナの親権を取り戻そうたって、そうはいかせねぇ……」
紅い槍を支えに立ち上がり、コメットは感覚だけを頼りに歩き出した。
背後では、床の穴が静かに塞がっていく。
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「ねぇ、サラリーダー、まだ着かねぇの〜?」
「サラリーマンみたいに言うなや! 心配せんでも、もうすぐや!」
「絶対もっと近道あったって〜」
テンスのぼやきを遮るように、突如サラが吹き飛ばされた。
「!!?」
「サラっ!!」
「ウチは大丈夫っ……とりま撤退や!!」
だがその姿はもう見えなかった。
「誰だっ!」
「おお〜っと、壊し甲斐のあるヤツらが少しいるなぁ〜」
行く手に現れたのは、まるで力士のような巨体の人機だった。
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ショウとセレナは車輪付きの檻に入れられ、外へ連れ出されていた。
「こ〜んな広くて見通しのいい場所で、どうやって逃げるつもり? 降参した方が賢いんじゃなくて?」
「じゃあ、こ〜んなのはどうだぁ?」
アジト前の空間に、突如黒いステルス機が現れた。
「う、嘘……」
「ホントもホント、ガチホントだよ〜ん!」
「アンタ、何者よっ!? 名乗りなさい!」
「わっちゃの名は“略奪王コラプト”。こいつぁ助手のグウェイドさ」
「お前たちが……コラプトとグウェイド……!」
「認知されとるとは嬉しいねぇ、でも認知が進むと困るよね。——さぁ、冷めないうちに移動すっぜぇ?」
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「こっちに来るなぁ〜〜!!!」
「グガァァァアア!!!」
竜に追われるハデッドを見ながら、コールとジェフは作戦を練っていた。
「さっき言ってたベイロンって、あの竜のことか?」
「ああ、コラプトが飼ってる化けもんだ。街襲う時に使うが、普段は絶対見かけねぇ。……まさか地下で飼ってたとはな」
「それにしても、あいつハデッドばっか狙ってるぞ?」
「何か惹かれるもんでもあんだろ」
「ごちゃごちゃ言ってないで助けてぇぇぇ!!」
「しゃーねぇ、やるか!」
「なんかいい案が?」
「まあな、柱を崩して動きを止める。」
「トドメはどうする?」
「とにかく腹ぁ殴りゃ大抵の生き物は倒せるだろ」
「ガッテン」
「ハデッド!合図したらあの柱と柱まで走れぇ!!」
「りょぉぉかぁい、早めに頼むよぉぉおお」
「ジェフは腹に風穴開ける準備しといてくれ」
「ああ、任せろ」
「周りの奴らは俺に集まれ、今から爆弾を配る」
全員が散開し、コールの合図を待つ
「今だ、走れハデッド!!」
「うわぁああ!!」
「投げろぉぉ!!」
『ワンハンドレッド・トス・ボム!』
柱が爆ぜ、竜の巨体が横っ腹をさらす。
「今だっ、ジェフぅぅぅ!!」
「任せろ!」
『鬼魂注入・青一角《轟》!』
青いオーラを纏った左腕が、竜の腹を貫いた。
爆風と共に竜が絶命する。
「ふぅ……し、死ぬかと思った……」
「良かったな。さ、地上に戻るぞ! ショウたちが危ねぇ!」
「出るって、どうやって?」
「ハデッドさん! ここに穴があります!」
「ほんとに!?」
斜め上に伸びる大きな穴。
「恐らく、竜が掘ったんだろう」
「上に繋がってるはずだ。行くぞ!」
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「粛清っ! 粛清っ! 粛清よ〜!」
「ひっひぃっ!!」
ガシャガシャ——メキョッ!
「ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!」
ペシャッ。
「これでセレナに害を成す拠点は五つ壊滅ね。教育にいいわぁ〜」
スキップしながら、敵を屠って進むコメット。
「次はアッチから……嫌な臭いがするわねぇ。消臭タイムっと〜」
「こっこちら第、第四停留じょ——」
グシャッ。
「口開くな、悪臭が広がるだろぉ?」
ジジッ、ジジジ……
「さて、次いこ〜っと♪」
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「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!」
一定リズムの張り手が、シンの顔を打ち抜く。
「ぐはっ、ぐはぁ、ぐああっ……!」
止まることなく続く張り手。
『——ちゃんこ節・頭突き』
ゴガァン!!
木々を薙ぎ倒して吹っ飛ぶシン。
「シンさんっ!!」
テンスが援護射撃しながら駆け寄り、スモークを投げ込んで視界を遮る。
「撤退します! 捕まってください!」
「すまない……」
ピピッ、とシンの頭で信号音が鳴った。
「クッ、どこに逃げれば……」
「テンスくん、向かってほしい場所がある……案内する……!」
「了解っす、任せてください!」
二人は白煙の中、闇へと駆け抜けていった。
略奪王コラプト
達磨に手足が生えたような見た目、顔がキモイ。一番嫌いかもしれない......
助手のグウェイド
コラプトより少し大きい人機、両ふくらはぎと両腕に車輪のようなパーツがついている。
大きさはヒューマノイドのASIMOくらい
見た目は変形できそうなスタイリッシュな見た目をしている。




