第二十三話「復興 ―紅の遺志―」
セレナ?はコミュニケーション向上用ロボットなので滑らかな表情表現が可能です。
トーテム・ワームの上半分が、原型を留めないほど粉々になり崩れ落ちた。
長い戦いが、ついに決着を迎える。
「おっしゃぁぁぁあああ!」
「やったやったやったよ〜!」
「……ふっ…他愛も無いな」
「何とかなったぁ〜!」
コメットがセレナを抱き上げ、飛び跳ねる。
「さすが私のセレナね! もうもうもうもう天才よぉ!!」
「ガヘヘッ、アダジにががればごんなものよ!(えへへっ、アタシにかかればこんなものよ!)」
「いつの間にそんなことができるようになったのぉ?」
「ロンにおじえでもらっだのよ!」
「ああ、ロン! あなたはどこまでもセレナを導いてくれるのね?」
「いえ、セレナ自身の力ですよ、コメットさん」
「まあっ!」
「ぎゅん♡」
「ショウきゅん無事でなによりだよ〜♡」
気付けばバレッタがショウに抱きつきスリスリしている。
「はぁ、はぁ、ショウきゅん、はぁはぁ……」
セレナがすごい形相で睨んでいた。
「……ママ、あれ壊じでもいい?」
「あらあら、ダメよぉ?」
「ショウきゅんショウきゅんショウきゅんはぁ〜!」
『ヂャージジョッ……』
「やめて! ショウも巻き込まれるからっ!!」
「うでには自信ががっ——」
シンがセレナの口を塞ぐ。
「お友達が沢山できたのねぇ〜」
「呑気なこと言ってないで、コメットさんも抑えてくださいよ!」
「若いって羨ましいわ〜」
「お前達、いつまでやっている。そろそろ拠点に戻るぞ」
マーシャが志願兵に肩を貸しながら呆れていた。
「よかったら、手伝うぜぇ」
「そうか、助かる」
「……副官、私たちはメルダを探します……」
「ああ、何人か人手を使うといい。早く見つけてやれ」
「はい……」
ショウは、セレナに引き剥がされまいとしがみつくバレッタを見て、少し考えて言った。
「バレッタさん、また整備室をお借りしてもいいですか?」
「ににににっ! 絶対離れなっ……え? うん!ショウきゅんならいつでも使っていいよぉ〜、ってうわあああ!」
「まったく、何すんのよこの小娘ぇ!!」
「アダジのロンをどるんじゃない!」
「ロンきゅんじゃなくてショウきゅんよ!」
コメットの背から降りたセレナとバレッタが、地面でギチギチと揉み合っている。
「前より仲が良くなったみたいね〜」
「ながよぐないっ!」
「なかよくないっ!」
「バレッタさん! ありがとうございます!!」
ショウがシンを連れて走って行った。
「ショウきゅんのためならお安い御用だよぉ〜!」
「まだばなじは終わっでないわっ!!」
「やってやろぉじゃねぇかごらァ!」
誰かが呟いた。
「紅修羅が三体……」
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シンとショウは整備室に到着した。
「ここに来たってことは、何か作るんだね、ショウ!」
「うん! メルダさんを見つけてあげたいんだ!!
大きめのモーターを持ってホバーで街まで動かそう!
確か街に古いクレーンとトーテムのキャタピラが残ってたはずだから、捜索用の機械がすぐ作れるはず!」
そして二人は作業に取り掛かった。
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一方、シェルンとエリナは他数名の兵士と手作業で街の北側にある瓦礫を退けていた。
「居た?」
「……いや、どこにも見当たらない……」
「喋ってる時はガサツで、遠くにいてもすぐ分かったのに……」
「……あと探してないのは、あっちの大きな瓦礫だけ……」
「流石にあの大きさは、今の私たちだけでは無理そうだね……」
二人が悔しさで俯き、拳を癒着しそうなほど握りしめていると、遠くの方から声が聞こえた。
「シェルンさ〜んっ! エリナさ〜んっ!!」
エリナがいち早く顔を上げる。
「ショウが来たっ!」
「え? そうなの? 本当に??」
「……私とショウは……ボンクラ達と違って紅い糸で絡まってるから分かる」
「エリナが絡めてるせいで逃げられないだけじゃない?」
「……待っていては、何も得られない」
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ガガガガガガガッ——
平たいキャタピラが、特大のクレーンを運んできた。
でかい。ただただデカい。それに尽きた。
クレーン車のエンジンが止まると、街の静けさが戻ってきた。
焦げた鉄と油の匂いの中に、どこか懐かしい風が吹いている。
ショウは小さく息を吐き、空を見上げた。
「いや、ギガワームの半分はあるんじゃないの!?」
「トーテムの部品を使ったんです〜」
シンがショウを背負って飛び降りてくる。
「……ショウ、なぜ私じゃなくシェルンを先に呼んだ?」
「え? そうでしたっけ??」
「……お婿さんの自覚が足りない……」
「なんか聞こえましたけど違いますからね?」
「……フフッ、照れてる」
「そんなことより、これなら楽に捜索できますよ!」
「……そんなことより?」
エリナがブツブツ言っているのを横目に、シェルンが喜ぶ。
「ショウくんナイス! ちょうどこの大きな瓦礫が動かせなくて困ってたんだよ!」
「コレだ! メルダさんはこの瓦礫から僕を庇って……!」
「なら早く出してあげよう!」
「……待ってて、メルダ」
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特大クレーン車を使って巨大な瓦礫の端を掴む。
引っ掛けアームを引いた。ぎこちない操作だが、バケットもほぼ同時に動かし、瓦礫を持ち上げ停止させる。
「しっかり嵌ってると思うから、今のうちに何本か補助支柱を立てて!」
周りから丈夫そうな鉄骨を運び、クレーン側の瓦礫と地面の間に支柱として立てていく。
「これなら下の捜索ができそうだよ!」
瓦礫の奥で赤く光るものが見えた。
「あそこだ! 行こうっ!」
三人は下に潜り込み、協力して引っ張り出した。
「……メルダ……おかえり」
そこには穏やかな顔で目を瞑る、左半身だけの紅い機体が横たわっていた。
「……拠点に戻ろう」
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メルダを即席で作ったタンカーに乗せ、クレーン車で運びながら街を眺める。
中央まで来ると、マーシャと数人の人機たちが作業しているのが見えた。
「マーシャさーん!」
「お前達か……無事、メルダは見つけられたようだな……」
「はい……」
「それよりこの乗り物は?」
「メルダさん捜索のために作ったんです」
「そうか……」
マーシャはクレーン車を眺め、少し考えてから口を開く。
「すまないが、こちらにも少し手を貸して貰えないだろうか?」
「え? ……でも……」
ショウがメルダ達の方を見る。
「……私たちは大丈夫。ここからはタンカーを手で持って運ぶよ……」
「……すまないな」
「大丈夫です。エリナ、行こっ!」
「……後でね」
二人はトボトボとタンカーを持って歩いて行った。
その背中は、旧友を喪った悲しさが色濃く滲んでいた。
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「では早速、クレーンを使って大きめの瓦礫を持ち上げ、一箇所に集めて貰えないだろうか?」
「分かりました!」
ショウとシンはクレーンを使い、次々と瓦礫を運んでいく。
「ふぅ、大きい瓦礫は全部移動できたね」
「埋まってた人達も助けられたし、ここは問題なさそうだ」
「二人とも手伝い感謝する。後は私達で終わらせるから、先に拠点に戻って休んでくれ」
「ありがとうございます、マーシャ副官」
「そういえば、街の人たちが前よりたくましくなっているように見えますね」
「ああ、今回の一件で、街の者たちも全て兵士として志願したんだ」
「それは凄いですね!」
「これから私が直々に、立派な軍人として育てて行くつもりだ」
「き、厳しそう……」
「ハハッ、兵士を目指す以上、優しくはできん」
「失礼します! 副官、こちら全ての作業が終わりました!」
「分かった、次は被害の少ない南だ! 行くぞっ!」
「頑張って下さい、マーシャさん!」
「ああ、ではまた後でな!」
マーシャ一行は駆け足で南側へと向かって行った。
「じゃあ、僕たちも拠点へ戻ろう」
「うん!」
クレーン車の窓から見えた街の人々は、壊れた家を直し、互いに手を取り合っていた。
――もう、この街は立ち上がっている。
ショウはそう思いながら、ハンドルを握りしめた。
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拠点に戻ると、何故かコメットとセレナ、バレッタまで居た。
「聞いたよショウきゅん! エリナたちとお風呂に入ったんだってぇ〜? お姉ちゃんとも入ろ〜?」
「アダジどもばいりなざいよ!」
「あらあら、セレナ? 女の子からお風呂に誘うなんてはしたないわぁ……」
「ママは黙っでで!」
「いや、一緒に入ったわけじゃなっ——」
バレッタが両手をワキワキさせながら近付く。
セレナが貞子のように這いつくばって迫る。
「いやいや、大抵の人機はお風呂入れないですよ〜司令官!」
「はっ! そうだった!! くやぢぃぃぃ!!」
「ぶんっ! 残念だっだわね! オバザン?」
「おばっ!? な、なによっ! お風呂に入れないのはあなたも同じでしょう??」
不敵な笑みを浮かべ、セレナはドヤ顔で答えた。
「グッグッグッ、アダジばおブロも一緒に入れる親友ロボッドなのよ!!」
「な、なんですってぇ〜!!!」
「ごめんなざいね? お・ば・ざんっ♡」
「ムキィーーー!!」
「あらあら、セレナ? そんな体じゃ水には入れないわよ〜」
セレナは胸から下が無いのであった。
「……ウゾよ〜」
「これでおあいこね? おチビちゃん??」
またまたもみくちゃに争い始めた。
「だでがおヂビぢゃんでずっでぇっ!?」
「おめぇのことに決まってんだろ、このテケテケ野郎ぉ!!」
「では、ぼくお風呂に入ってきますので!」
「ごゆっくり〜」
壊れたセレナ?の見た目はかなり怖い、映画のアナベルみたいです。
クレーン車はコマツPC8000くらいの大きさです
ギガワームの大きさはバガー293くらいだと思います。多分




