第9章
ダンジョン侵入三日目。
あいつらは、ついに第四階層へと足を踏み入れた。
俺はモニターの前で、ほんの少しの焦燥感がないまぜになった感情でその様子を見守っていた。
第四階層「密着の鏡面迷宮」。
そこは、床も、壁も、天井も、すべてが滑らかな鏡面でできていた。
だが、それだけではない。
鏡と鏡の間には、ほんのわずかな隙間があり、そこから微弱な電流のような、あるいは温かい息のようなものが、絶えず流れ出ている。
「うわっ、ここちょっとムシムシする……」
「アリシア、気をつけて。壁が、ほんのり温かいです」
「自分の姿がいっぱい……なんだか、ドキドキする」
三人が部屋の中央に足を踏み入れた、その瞬間だった。
壁と壁の隙間から流れ出ていた微弱な刺激が、徐々に強さを増していく。
それはまるで、無数の小さな手が、彼女たちの肌を優しく撫でているような感触だった。
「ん……?」
最初に声を上げたのはエルマだった。彼女は自分の腕をさすりながら、不思議そうな顔をする。
「なんか、体がゾワゾワする……変な感じ」
「ええ、私もです」
ルナも、ローブの上から自分の腕を抱きしめた。
だが、その表情はどこか戸惑っているようだった。
そして、アリシア。
彼女は、無意識のうちに自分の胸元を抑えていた。
「こ、これは……いったい……?」
次の瞬間、壁と床の鏡面が、淡いピンク色の光を帯び始めた。
同時に、そこかしこから、甘く蕩けるような香りが漂い始める。
それは、今まで嗅いだことのない、フェロモンのような、直接的に本能を刺激する香りだった。
「 なんだか、体が熱い……!」
エルマの呼吸が荒くなる。
彼女の小麦色の肌が、ほんのりと赤みを帯び始めた。
胸元の開きかけたシャツの奥が、呼吸に合わせて上下しているのが見える。
「ま、まずいです、アリシア……この香りは……!」
ルナの冷静な声も、わずかに震えている。
フードの奥の紫色の瞳が、明らかに潤んでいた。
彼女は、普段は隠されている首筋を、そっと手で覆った。
アリシアは、その場に立ち尽くすのがやっとだった。
体中の血液が沸騰していくように熱く、心臓が早鐘のように打ち鳴らされている。
下腹部の奥が、じくりと熱を持ち始め、今まで感じたことのない衝動が、彼女の理性を蝕んでいく。
「あ……あぁ……」
彼女の口から漏れたのは、悲鳴ではなく、甘い吐息だった。
普段は凛々しい碧眼が、蕩けるように潤み、焦点が定まらない。
白い肌は、まるで熟した果実のように、妖艶なピンク色に染まっている。
その時、壁の鏡が、ゆっくりと動き始めた。
そして、三人の体を挟むように、迫ってくる。
逃げようにも、背後も、横も、全てが鏡だ。
彼女たちは、否応なく、近づいてくる鏡面に押し付けられる。
「きゃあっ!」
最初に悲鳴を上げたのはエルマだった。
背後の鏡に押し付けられた彼女の胸が、ぺたん、と押し潰される。
だが、その瞬間、鏡面から、微弱ながらも確かな「吸引力」のようなものが感じられた。
「吸い付く……!?」
ルナが驚愕の声を上げる。
彼女の背中も鏡に密着し、ローブの上からでも、体のラインがはっきりと浮かび上がった。
そして、ローブの裾が、まるで意思を持つかのように、ゆっくりと、だが確実に、巻き上がっていく。
白い太ももが、鏡面に露わになる。
アリシアは、もう立っているのがやっとだった。
背後の鏡に押し付けられた彼女の体は、逃げ場がない。
特に、豊満な胸が、鏡面に柔らかく押し付けられ、その形を歪ませている。
「ん……あ……♡」
信じられないことに、鏡に触れた部分から、じわじわと快感が広がってくる。
それは、まさしく、誰かに優しく撫でられているような、甘く蕩ける感触だった。
壁が、床が、天井が、全てが彼女たちの体を優しく、そして執拗にまさぐり始める。
エルマの開いたシャツの隙間から、鏡の表面がぬるりと滑り込み、健康的な胸の谷間を這い回る。
ルナの巻き上がったローブの下から、鏡の冷たい感触が太ももの内側を這い上がり、最も禁断の場所に触れようとする。
アリシアの胸は、上下から迫る鏡に挟まれ、優しく揉みくちゃにされ、その先端が、ぞくり、と熱くなる。
「や……だ……こんなの……あたし……!」
「む、無理です……頭が……おかしく……なり……そう……」
「あ……あぁ……だめ……触らないで……!」
三人の口からは、もはやまともな言葉は出てこない。
ただ、甘く、蕩けるような喘ぎ声が、鏡面に反響するだけだった。
モニターの前で、俺は固唾を飲んで見守っていた。
これは、精神攻撃ではない。直接的な、肉体への快楽による蹂躙だ。
そして、限界が来たのは、エルマだった。
「も、もう……我慢……できな……いぃぃーーーーーっっ!!♡♡」
彼女の体から、燃えるような赤い闘気が爆発する。
だが、その表情は苦悶に歪み、瞳は快感に濡れていた。
続いて、ルナも。
「あ……ん……もう……だめ……おねがい……♡」
彼女の全身から、紫色の魔力が奔流のように溢れ出す。
冷静さはどこへやら、ただただ快楽に身を委ねる、か弱い少女の姿があった。
最後に、アリシア。
「い、いや……こんなの……聖騎士……の……私が……♡♡」
彼女の白い肌が、聖なる光を帯び始める。
だが、その目は恍惚として閉じられ、口元は蕩けていた。
三者三様の、快楽による限界突破。
鏡面は、彼女たちが放出したエネルギーを吸収し、眩い光を放ちながら、ゆっくりと元の位置へと戻っていく。
部屋の中には、激しい息遣いと、甘い香りの残滓だけが漂っていた。
壁には、新たな扉が、ぬるりと姿を現している。
床にへたり込んだ三人は、まだ完全に意識が戻っていないようだ。
肌は赤く染まり、髪は汗で濡れ、口元はほんのりと開いている。
その姿は、先ほどまでの凛々しい冒険者とはかけ離れた、ただただ色っぽい、魅力的な少女たちだった。
俺は、モニターに映る、意識朦朧とした彼女たちを見下ろしながら、小さく呟いた。
じいさん、あんた、本当に趣味が悪いよ。
だけど……嫌いじゃない。




