表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/123

第97話 娘と魂

六年前、勇那(いさな)の国、獅子谷村(ししやむら)の外れ 雷蔵の旅籠(はたご)


 ムミョウ丸達は獅子谷村(ししやむら)の外れの雷蔵の旅籠(はたご)に連れ込まれた。そこで待っていた男がいる。


 ジカイ和尚、その人である。


「おお、ナツキ殿、無事であったか!」

 あがりこまちで腰をおろしていたが、二人の姿を見るなり飛び上がった。

 そして、眠っているムミョウ丸を見つけると

「おいたわしや。」

 お辰に二人の身を清められるよう頼んだ。


 ジカイは振り返りサヤに

「そなたがあの二人を見つけてくれたのかいの?」

 サヤは直感で悟った。

「お坊様!ムミョウ丸はどこかに連れていかれるんですか?」

 お城に連れて行かれるなら、迎えは多分この人だ。


 ジカイ和尚はあごひげをいじりながら目を細めた。

「まずは礼を言わせてくれんかの。・・・ありがとう。」

「お坊様!ムミョウ丸は?」


 和尚はフフと苦笑いをすると

「あの子は・・・ムミョウ丸という子は城の大殿様の客人なのじゃ。」

「そんなの知らない!」


「これっ!サヤ!ジカイ様、ご無礼を。」

 雷蔵がいつにない厳しい顔をしてサヤの腕を(つか)み連れ出そうとする。

「いや、良い。雷蔵、放しておやり。・・・なぁ、サヤとやら、そこにお座り。」

 サヤは雷蔵の手を離れ、言われた場所に正座する。


「そなた、一座と旅をして、ムミョウ丸についていろいろと見知っておろう?」

「・・・・・。」

 サヤお得意のだんまりだ。しかしジカイは気にせず続ける。

「一番大きなことは・・・そう、年のことよな?」

「はい。」

 ジカイは、ハッと手のひらで言葉を制する。

「そうそう、みなまで言うな。ここでは(はばか)られる。」

 若がえりのことは口にするなということらしい。


「そして、ワケの分からない化け物や、他国の物騒な連中にその身を狙われておる。」

 サヤはクモモドキや赤鎧のことを思い出した。ゆっくりうなづく。

 それを見たジカイは、

「そこで提案なのだが、ワシらに彼を預けてくれんかの?」

「なんで?!」

 なぜ、そうなる。11歳のサヤはまだ納得できぬらしい。

「ワシらは化け物はともかく、他国の連中からは彼を守ることはできる。そなたより、確実にじゃ。」

「私だって!」

 サヤは懐剣の袋を握った。

「ほほう。すばらしきお宝を持っておられるな。でも、うら若き娘御には荷が重かろうて。」

 ジカイの右手にはいつのまにか虫眼鏡が握られていた。


「どれ、詫びとしては何だが、拙僧(せっそう)が手相を観て進ぜよう。」

 ジカイはふらりとサヤの隣に腰かける。

拙僧(せっそう)の占いは運勢どころか魂まで見えるというシロモノですぞ。」

 と慣れた手つきでその右手をとり虫眼鏡を右目で覗きこむ。


「あっ!」

 ジカイは土間に転げ落ちた。雷蔵が慌てて助け起こすがジカイは震えている。

 ジカイは我に返ると同時に、土間の土に頭をこすりつけ平伏している。

「お坊様!」

 サヤ自身、ワケが分からない。


 ジカイの口からは震える声で詫びが漏れる。

「まさか、このようなところにおわすとは、思いもつかなんだのです。ひらにご容赦(ようしゃ)を。」

 どうやら、ジカイは右目が焼けてしまったらしい。

「ろっ六年お待ちくだされ。」

「六年?」

 サヤも動揺が隠せない。

「六年も経てば、ムミョウ丸様も新しく折り返してこられるはず。その時まで、不肖、この勇那(いさな)(かさね)が身命をかけて、その御身(おんみ)をお守りいたします。どうか、どうか、お許し願い(たてまつ)りまする。」

 サヤはワケが分からないが、はいと答えた。

「ありがとうございまする。」

 それきり、ジカイは平伏したまま動かない。たまりかねた雷蔵がお辰を呼ぶ。

 夫婦は話し合い、サヤを別室に連れていった。


 サヤが去ったことを説明してようやくジカイは顔をあげた。

迂闊(うかつ)であった。」

 ジカイの額には土間の土がついている。

迂闊(うかつ)?」雷蔵には分からない。

「直接見てはいけないものを観てしまったのよ。この右目はその代償じゃ。」

 雷蔵は気付けとばかりに椀に入った水を差し出す。ジカイはそれを受け取って飲み干してしまった。

 あまりのことに喉がカラカラだったのだ。

 すると、右目から湯気があがり、それは元のように見えるようになった。

「こっこれは・・・。」

「サヤが、よく分からないけれどお坊様がケガをしてはいけないから、こうしてくれと。」


 ジカイは足を崩してひと息ついた。

「雷蔵よ。命令を変える。これからおぬしら夫婦の第一の使命はサヤ殿の御身(おんみ)を守ることじゃ。六年後、ワシは宝引きを行う。その時にサヤ殿の持つお宝を預かりワシに届けよ。自然な形で城に招けるようワシが取りはからう。」

「サヤはこれまで通りの待遇でよろしいので?」

「うむ。任せる。しかし、大事にしてやってくれ。」

「娘と思っておりますれば。」

 雷蔵とお辰に任せればよいなと思いジカイは立ち上がり椀を返した。


「しかし、サヤ殿のムミョウ丸様への執着(しゅうちゃく)の強さ、なるほどのう。これは当たり前のことじゃ。」

「何か言われましたか?」

 雷蔵が訝し気に聞いた。


「魂でつながっておるのよ。遠い昔からな。」

 しかも、最初は母子(おやこ)であったのだから。


お詫び、サヤのムミョウ丸を探していた期間を6年に変更します。理由は計画よりムミョウ丸の居なくなるタイミングを遅らせたためです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ