第94話 顛末と裏
その夜のことだった。
ムミョウ丸が一座から姿を消した。
一座の者は手分けして探したが、行方はまるで掴めなかった。
ムミョウ丸の最後の姿は、あの夕暮れ、抱き合う四人を見つめる姿だった。
お辰がふと顔を上げた時彼は、嬉しそうな、それでいて悲しそうな表情をしていたという。
一座は三日間、寺に滞在し近辺の捜索をしたが、手がかりすら掴めなかった。
蓑の一党の一番の仕事は、ムミョウ丸の保護、そして勇那への護衛である。捜索は仲間を分けて行いつつ、虎成に一度帰り、人数を増やすことにした。
そして、座長夫婦には、ジカイに伝えなけばならないことがある。
この四年、勇那から、那岐の国、北の歷弩、海阿湖のある誉藤の国、朝御代の都、咬延の治める五百の国そして虎河の渡上の国を回ってきた。
朝御代の将軍はもうダメだ。誉藤の管領代の王丸に実権を握られている。
だが、都はまだ勇那からは遠い。
目下の問題は、那岐の国の彩芭、五百の国の咬延そして渡上の国の虎河だ。
歷弩の国が壊滅したのは、那岐の彩芭が絡んでいる。こいつらは、アダケモノに対抗する武器を作ろうとしているらしい。それと、アダケモノを操るか、もしくは操れるアダケモノを作った可能性がある。この前のクモモドキがそうだ。この開発には五百の咬延が噛んでいる。
今、手下をそれぞれの国へ忍ばせ、その中心となる人物が誰かを探らせている。
手下からの報告によれば、歷弩の壊滅でサヤの両親に謀反の疑いを着せたのは、留守居役の国家老で間違いない。裏で那岐の忍びと手を組んでのことだいう。久瀬揺の殿様の秘密を知る国家老は懐剣の後継者たる姫の行方不明をサヤの両親の悪だくみとする絵を描いた。
そして、懐剣と聖獣の権威を得て、国を救う英雄を演じ、国を奪う。
目論見は成功するはずだったのだ。だから、国家老は戦で味方の軍が敵を相手にするうちに彩芭の手の者が国に侵入、手を貸すことを裏で認めた。
ただ、那岐の彩芭の目的は違った。
奴ら、内陸部の国の目的は、ク海を飼いならすことだ。ク海を生簀として資源を取り入れることらしい。ク海を作るには、たくさんの感情がいる。それを戦や虐殺の恐怖で贖おうとしているらしい。自国の民を傷つけず、他国の民を海に沈めて。
那岐の国の間者は、歷弩の国の国家老に黙ってアダケモノをその国内へ持ち込んだ。しかし、あの夜、懐剣を手にしたサヤは追手から逃れるため、一座に連れられ国を出た。
守護聖獣は国を出たのである。
歷弩の地がアダケモノに蹂躙されるのに時間はかからなかった。
返す刃で国に戻ろうとした歷弩軍も彩芭の軍に押され、散り散りになったという。
国家老もアダケモノに喰われた。
彩芭の思う通りになった。
これが、顛末だ。
このように、それぞれの国は、自分の国を守るために、ク海を利用している。
ク海には、今後の探究で莫大な利益となるものがあると考えられる。それに気づき、犠牲に目をつぶって動き始めている者が各地にいる。
多分、一番危険なのは虎河だ。あの国は忍び込むことが極端に難しい。手下を送りこんでもすぐに連絡が途絶える。しかし海を失くしているのになぜあれほど栄える?裏があるな。
ージカイ様、体制を強化せなば、すぐ寝首をかかれまする。ー




