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第78話 流星と三日月


 ユウジは、両腕を(おお)った籠手を眺める。拳を固めると龍の顔を(かたど)った形になる。そして手の平には赤い破邪の瞳。腕に小さな盾が付き鏡のように滑らかだ。まるで海のように青い。二の腕から肩へは美しい鱗で龍の体と尻尾が(かたど)られている。


 震拳と呼ばれる超圧縮振動波を相手に打ち込むという戦闘形式。

 ユウジはまるで二匹の小龍を両手に抱いているかのようだ。


 滑空していない時は頭上の回転魔法陣がその身を浮かせてくれている。回転翼というものらしい。


「ユウジ、良いか?誘導を始めるぞ。」

 サメを殴っている間に、上空へ移動していたムラサメからシロウが伝えてくる。


 さぁ指定位置にいかなければ。

「しばらく、お待ちいただだきたい。」


 ユウジは回転魔法陣を噴射剤(ブースター)代わりに使うと天に向かって舞う月の天鷲(アーノルド)の銀の翼を絞っていった。

 緑の光が舞い散る。扇のように広げられた翼が絞られるように閉じていくにしたがってその速力は上がる。


 瞬く間に大ムカデの仇花(アダバナ)(あたま)へと近づく。


 やはり避けるな。オレの気持ち(殺気)を読んでやがる。


 そしてユウジは石の仇花(アダバナ)の真上10mのク海面を打ち破り(ブレイクダイブ)、遥か上空の現実の空へ羽ばたいた。


 ー片城(かたき)、配置良しー


「始めるぞ」シロウの号令がかかる。

「これから、ムカデの頭を抑える!」


「サヤ、進路、高度そのまま。」

「このまま、分かった!」

 サヤが舵を中央とする。


六芒星の盾狼(ランドルフ)、全周に展開。」

 シロウが見つめるとモモの目が赤く燃える。

 やはり、素直な子だ。鉄壁の防御結界が構成されていく。


「爆風と外力に備え、船体をこの場に固定。」

「各部、姿勢制御魔法陣(バランサー)起動(アクティベート)!いいよぉ若様!」

 ローラが艦橋の中心に据えられた丸い水晶の中で踊っている。


「目標、大ムカデの頭上にある浮遊機雷群。これを指定(アサイン)します。」

 メルの声と同時に俯瞰図で八つの点が点滅する。

「すべての目標を補足!動いてないよ。シロちゃん。」


 シロウは目標をしっかり確かめると

「指定の機雷群に対し、星王の光芒(ユーグスアウラ)、乱れ撃ち方用意!」

「乱れ、撃ち方用意良し!」 

 ユーグの声が弾ける。


「射界内に味方(ユウジ)の存在なし。安全確認良し!」

 マチルダも戻ったようだ。

「ユウジ殿、閃光に注意!」


「うっ()ぃいいかたはじめっ!」

 

星王の光芒(ユーグスアウラ)(ラン)

 ユーグの星王の光芒(ユーグスアウラ)(レイ)にローラの機関(ラウラ)動力を加えた攻撃。

 威力、範囲、熱量が10倍になっている。


 このまま、花ごと焼け散ってくれ!シロウはそう願った。


 弾ける閃光。爆音と爆風が視界を遮る。電探魔法陣(レーダー)では乱反射が多すぎて状況が掴めない。


 ユーグは観の星王を望遠鏡にして観察している。

「目標、健在!生きてます。」

 拡張視界(スクリーン)が拡大される。


 ボロボロだ。でもしっかり頭に乗っけてやがる。


 ダメか・・・これでも。シロウは天を仰ぐ。


 花を追いかけ、ムカデを追いかけするうちに、空はもう夕焼けは落ちて星が瞬いていた。


 流星、それが落ちた。


 瞬きの間の攻撃だった。


 月の天鷲(あまわし)は流星となって、天から舞い降りると、右腕の姫の龍がまず吠えた。


 音と衝撃で大ムカデの頭をかち割ると、その反動で下から花をめがけて左腕の姫の龍が突き上げる。


 仇花(アダバナ)は根元から完全に引き千切られた。


「オレの殺気、分からなかっただろ?」


 花と虫の最後を見届けた月の天鷲はその銀色の翼を大きく広げた。


 さながら、夏の終わりの三日月のように。満月はまだ遠い。


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