第75話 潜航と制服
「さぁて、手札はまだ残ってるのかよ?」
アダケモノは忘れられたかのように生み出されなくなっていた。
確かに、虫モドキではユウジの鎧には効果がない。小雨に打たれているくらいにしか感じないのだ。しかもイノシシなどは槍に、犬や鳥や猿は軒並み銃に撃ち抜かれている。
仇花頭は、グンカイに潰された目ではそもそも何も見ていないのだろう。
しかし、その目が怪しい。不気味なのだ。
手下どもが敵わぬ相手からどう花を守るか。
ここは親花の縄張りの内。ムカデも考える脳みそがあるのか。
否、だが本能の出した答えは、単純で効果的だった。
地中にあった体を引き出し回転する。たちまち土煙がもうもうと立ち上がる。
とぐろを巻きながら回転すると地面にいるものはもう立っていられない。
「何をする気だ?」
その時、
ー飛んだー
つまり答えは手の届かない所に逃げるだ。即座に狙撃銃が火を吹く。
しかし、ムカデは回転しながら昇っている。
しかも、曳航肢と呼ばれる尻尾の先が最後に横殴りに襲ってくる。
しまったとユウジは思った。今は魔法陣を使って高く飛べないのだ。
ユウジの周りであの賑やかな妖精の声がしない。
だってローラがいないのだから。
今、彼女は、ク海潜航艇「ムラサメ」の動力担当となっているからだ。
「ヤバいってヤツだな。・・・もう届かないかっ。」
「おーい!」
ウワサをすれば何とやら。能天気な星の印が揺れる。
振り向くと、あの黒い乗り物が近づいてくる。
よく見ると青紫の濃い色だ。
これは、潜航艇というものらしい。
潜航艇とは水の中を進む艦なのだが、この艦はク海の中を航行するものと聞いた。
誰に聞いたか?それは露嶽丸である。
露嶽丸はこの潜航艇の鍵だったのだ。本当の名前は別にあるらしいがこの名が気にいっているらしい。自立型の仕組みだと自分で話していた。
ともかく今は! ムカデを追う!
「ユぅウジぃー、上に乗ってぇー」
ユウジはムラサメの前部甲板に飛び乗る。
「ユウジ様!ご家老様とチエノスケ様の処置終わりました。命に別状なし、念のため安静にさせます。」
「ありがとう、メル!」
「・・・おい!き・・聞こえるか?ユウジ!」
「若様!」
「・・ユウジ。今、メルという女性に繋げてもらっている。・・これ、これはな何だ?」
「若様!後で説明します。今は大ムカデを追います!」
「・・・分かった。」
「ほう、そちはヨウコの孫じゃの。」
「まぁ目元などそっくりですわ。姉様。」
「へっ?」
どなた様で?ユウジの拡張視界に同じ顔が中段左右に現れた。
同じ顔だが一人は右目が赤く勝気そうで、一人は左目が赤くおしとやかな感じだ。
「妾達は大殿の宝である海星の涙ぞ。我らも力を貸す!」
「大殿様の?!・・・有り難き幸せ!」
ん?でも変だな。あああ、やっぱりローラめ。
「あの・・・その衣装は誰が?」やりやがったのだ。つるつる衣装。
「ああ、ローラの嬢ちゃんがの。」
「規則なのだということでしたわ!」
「ロッ、ローラぁ・・・」
「ユウちゃぁん。僕、ユーグだよ。」
上段真ん中に緑の髪の美少年がのぞき込んでいる。
ユ、ユウちゃんって?オレ?ユーグって観の星王のことだよな?ユウジは混乱する。
「ユウちゃん、話は後で!ムカデの花の方位・距離を送るよ。的の進路と速力はこれね!湿度はここ!風向風速を真方位と相対方位でここに示すよ。」
ユーグが適確に情報を指し示してくれる。
あの、しつこいようですが、ローラさん、この美少年にも着せたな。
「制服は必要って言われたよ。ローラちゃんに。」
おう、この美少年は一部の人には需要があるかもしれぬが・・・・。
「おいユウジ、我も配置についた。全力で支援する!」
若様・・・あなたもですか?
「ローラというめんこい娘がの。指揮官はコレを着る慣わしだと・・・。」
これは、緊張感を削いだということで、ローラ、後で分かってるね。
あの娘が絡むとまぁいつもこうなるな。




