第71話 点と縄張り
成馬宮城に続く道
「さて、どうやってアレに近づくかだが。」
図体がでかいが、意外に早いのである。いや、でかい分早いのである。
アリにとっては人間の動きが十分早いように、大ムカデの動きもこちらにとって早い。
「見た感じ、体を起こせば、堀から天守閣と同じぐらいはあるな。」
チエノスケがギリギリ届くかと槍を投げるマネをする。
「花には矢では少々効果が薄いか。花の首は落とし切らねばならないからな。」
グンカイは月の荒鷲では分が悪いという。特に遠距離では。
「ムカデの装甲がぶ厚い上に、花があんなにぶれてはな。せめて止まってくれたならな。」
ユーグは瞬きを忘れたかのように俯瞰図を見つめている。
「シロちゃんここ!」
ユーグがそう言うとシロウの目に浮かぶある領域が点滅した。
「ここが、どうしたのじゃ。ユーグ殿。」
「僕、あのムカデ、ここで停まると思う。」
「それは、どういう理屈でか?ユーグ殿。」
「うん、どうやって近づくかも大事なんだけど。なんであの花はムカデと一緒に動けるかを考えていたんだ。根っこがないのに動き回ると活動の源のような何かが尽きるハズなんだ。」
「うむ、なんとなく分る。」
そう言われればそうだと思うシロウ。
「それに、たっくさんアダケモノを生み出しているよね。それには、ク海からの何らかの力や資源的なものの補充が必要だと仮定すると・・。」
ユーグは指を一本あごに当てて考え込んでいる。
「待ってくれ、なぜ、そう仮定するのじゃ?」
「シロちゃん、新ちゃんに犬のアダケモノの死んだやつ送ってくれたでしょ。」
「うむ。送らせた。」
ユウジが滝に落ちた時の話だ。ロクロウめ、そういう仕事はきちんとしていたのだな。
「あれ、僕、新ちゃんとよくのぞいてみたんだぁ。いっぱい種類のあるアダケモノの中で、犬型だけが親の花の外で、新しく咲く花の周りで動き回る。それでね、あのね、お腹を割ってみたらね。他のにはない部位があったんだよ。新ちゃんと僕は、これ、親からもらう力の源を溜めているんじゃないか思ったんだぁ。」
「それと同じものを大ムカデは持っているのか。」
チエノスケが舌打ちした。
「うん、多分すごく大きいやつ。」
「つまりは、大ムカデは、親の花の縄張りに戻ると?」とマリス。
「うん。」
「力の補充に帰る訳じゃな。」とステラ。
「うん。」
即座に双子龍姫が探信音を打った。
瞳の中の俯瞰図にムカデが表示される。そして虎成城の位置、成馬宮城の位置。
「縄張りを描くよ。新ちゃんの調べではこれくらい。」
ユーグがそういうと虎成城の仇花の縄張りが城を中心に円で示される。その円の中に成馬宮城は入っていない。つまりは成馬宮城は直接、虎成城の仇花の影響下にはないということ。
「それに、さっきまで戦って調べた大ムカデの花の縄張りはこんだけと思う。」
俯瞰図の上を歩き回る大ムカデを中心に円が描かれる。この円には成馬宮城が含まれる。しかし、大ムカデは虎成城の仇花の縄張りの円には入っていない。
「つまりは・・・。」
大ムカデはその頭の花の円が、成馬宮城を襲うアダケモノが息をし、攻め続けられるように、成馬宮城をその円の内に含んだまま、虎成城の花の円の内側に入るように動くはず。
つまりは、補給もしくは補充をする場所は、虎成城と成馬宮城を結ぶ直線と虎成城の円が交わる点。目見当だが、この点に大ムカデが来てもその花の縄張り内から成馬宮城はギリギリ外れない。
ヤツが停まるならここだ。ここしかない。
「ね。だからここに停まると思ったの。」
ユーグの最初に指し示した場所はまさにその点だった。
「しかし、いつそこへ行くのじゃ?」ステラが言う。
「我々は良くとも、シロウ達も疲れが・・。」マリスが気遣う。
「もうすぐだと思うよ。だって僕たち、手下をいっぱいやっつけたもの。」
ユーグが何食わぬ顔で言うと、俯瞰図の上で、大ムカデの進行方向が件の点に伸び始めた。
シロウは気づくとユーグを抱きしめていた。
「よし!我らも急ぎそこへ参るぞ!」




