第70話 蜂と百足
成馬宮城に続く道
そこは、戦場となった。先の戦闘で知られたのか、アダケモノが押し寄せてきたのだ。城が気になるが、近づくことさえ難しいだろう。
せめて、仇花の場所さえ分れば、全力でそこを叩くのに。こちらにも体力と疲労の限界がある。まともな食事も取れていないのだ。
矢と蜂と光線が乱れ飛び、時々鈴が鳴る。果てなき地獄絵図と化す。
ユーグはステラとマリスの探信音に自信の識別の目を乗せて、くまなくこの地域の様子を探る。
シロウの脳内にも、ユーグの情報は繋がっている。
ユーグの能力なのか、目の前にこの近辺の地図が浮かんでいる。
俯瞰図で敵の位置が分かる。
上手く隠ぺいされているな。城に大きなムカデがいるが、花の本体の気配はない。
どこにあるんだ。
花が咲いている場所があるなら、その近辺でアダケモノが生まれてくるのかもしれない。
ポツポツと新しいおぞましい赤が増えている。しかしまばらだ。
今までの傾向だと、種族ごとにある程度まとまって動きそうなものだ。
ユーグは遠い目標でも、動き方や移動速度等で、すぐに敵を識別してくれる。そして誰が相手をしたらいいか教えてくれていた。犬や猿、鳥ならグンカイに任せ、大型のイノシシなどはチエノスケに頼む。虫が来れば灰の結界を用意して、ユーグとステラマリスの範囲攻撃で潰す。
ただ、いくら精鋭でも元を断たないと、防衛能力というものは物量に押されるのが常だ。
やらねばならないなら、一気に片づける。戦う者の、守る者の気持ちになってみよ。
兵士も国の民であって誰かの家族だ。殺し合いなどしたくないしさせたくもない。では、ク海とアダケモノの様に理不尽で攻めてくるものはどうするのだ。話し合いの通じぬ相手にはどうすればいい?
国を城を守るために己について来てくれた虎成の兵を不手際で散らしてしまった。
逃げる先で、その家族をアダケモノの餌食にしてしまった。
シロウは思う。それでも勇那という国のために身を挺してくれる者がここにもいる。
国の護りに父が死ねば、その子に武器を持たせるのか?
否、今この状況においては我がその禍根を断つ。シロウは腹を決めた。
敵の発生している状況は、まばらではあるが・・・線状だ。ある程度規則性のある。
どういうことだ?シロウ、まず機嫌良く、固まった考えを叩き壊してみよう。
仇花がもし動くのなら?
「グンカイ、ムカデは番でおるものかのう?」
「はぁ?それは迷信でござろうが、よくそう聞きますなぁ。」
「チエノスケ、この先に蜂を飛ばせるか?」
「はっ、可能です。」
「ならば、急ぎ放て!その目を借りるぞ。ユーグ殿、蜂の目を使ってくだされ!」
「わかったよ。任せて。」
瞬間でチエノスケの槍帝の孚から、密命を帯びたスズメバチの一群が発進する。
数にしておよそ二十匹。高速の偵察編隊である。
シロウは目の前の地図で黄色い光点が、アダケモノの赤の点が生まれる線の先に真っ直ぐ近寄るのに集中していた。細かな大量の赤い点が生み出され、迎撃に出る形になった。虫モドキの直掩だろう。
少しづづ黄色い光りが減る。・・・やはりな。守りが固い。大事なモノがそこにあるのだな?
黄色い光点はもう三つになった。一匹一匹が身を盾に任務を遂行しているのだろう。
そして最後の一匹が駆ける。
海星の涙が鳴る。音の速さで蜂とユーグを繋げたのだ。
「目で見れるよ。」ユーグが教えてくれた。
俯瞰の地図の上にその様子。偵察蜂最後の一匹が見たモノが映し出される。
「ああ、やっぱり。」
シロウは呆れた。
「ムカデの頭に花が咲いてますなぁ。寄生しておるのか。」
グンカイがなるほど、探しても見つからんワケよとぼやく。
「気持ち悪っ!」
双子の龍姫がそっぽをむいた。




