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第67話 泣虫と双子


成馬宮(なるまみや)城を見渡す高い丘


 茂みに隠れつつ、成馬宮(なるまみや)と呼ばれる地の城を眺める。


 城には大ムカデが蔓延るが、城内はまだ抵抗しているようだ。兄はまだ無事か。


「ずいぶんとやらかしてくれるものだ。」

 サヤと助けた家族をしばらくの間、途中見つけた廃寺に身を隠すように言いつけて、シロウはグンカイとチエノスケの二人と城の様子と仇花の場所を探っていた。


 道すがら、多くの亡骸を見た。はらわたが煮えくりかえるようだった。罪のない民を己の判断せいで・・・。

 シロウは大波のようなアダケモノの襲来を虎成城が受けたとはいえ、全体を見渡せずこのような事態となったことを国防(まもり)に携わる者として(かえり)みていた。では、あの状況でどうすれば良かったか。・・・分からない。


 隣にいた間諜に良いようにやられたお間抜けだ。


 長年、想いを重ねた幼馴染が憎き敵の女だと露ほども知らぬ幸せなヤツだ。


「ここらで、やり返したいのだが・・・。」

 基本、我は他力本願なのよ。シロウは苦笑いした。


「将たるものそれで良い。」

 背中で声がする。女の子・・・の声?

「へっ?」 シロウは突然のことに頭から声が抜ける。

「気に病むな。今はすべきことをしなさい。」

 まったく同じ声だが、声音が若干違う。


 左のうなじからか?声が聞こえるのは。

「我はおつむがイカレタかのう?幻聴が聞こえる。いよいよじゃ。」


「失礼な、幽霊ではないわ。」

 右手に少女のものかと思われる手が伸びて来て甲をつねる。

「似たようなものですけれど。」

 左手にも美しく優しい手が後ろから添えられる。


 二人の顔が見えた。右の娘は右目が赤く、左の娘は左目が赤い。同じ顔だがそこだけが違う。


「も、もしやあなた様方は・・・。」

「うむ。」二人の少女は年の割にものすごい貫禄がある。


「・・・大叔母様方にございますか?」

「その呼び方は認めぬ。」

「事実ですが却下します。」

 即答だ、だが立ち位置は確定した。


「では、なんとお呼びすれば・・・?」

「ステラと・・・。」右目が赤い娘が言う。

「マリス。」左目が赤い娘が言う。


「では、ステラ様とマリス様。」

「様もいらないわ!」

「敬語もいりませぬ。」

 私たちはただの思念体なのだからと。


「う、うう。では、ステラさんとマリスさん。これでどうでしょうか?」

「頑固なやつじゃな。」

「姉さま。これがこの子の良いところ。」

 二人はお互いを見て、笑っている。


ステラが言う。

「宝に生まれ変わり、兄様とこの国を感じてきた。音だけでな。」

マリスが言う。

「あなたのことも良く知っていますよ。こんまい頃は泣き虫でよう泣いていた。」


「この子は守ってやらねばならん。ようそう話したなぁ。マリスよ。」

「ええ、でも姉様、ずいぶんと立派に大きくなりましてよ。」

 こうなるとシロウはもう子ども扱いだ。


「鈴の宝の殻からから解放されて、ようやく目が見えるようになった。」

「ほんに、あなたは美しい顔をしている。さぁよく見せておくれ。」

 ふたりの美しい白い手が、シロウの頬に触れる。


「つらい思いをしたの・・・じゃが、これからは妾たちが共におる。」


「今、(かさね)の家でなぜ自分にと思うたな?加護を与えるべきは兄たちだと。」

 ステラが悪戯小僧(いたずらこぞう)の顔をした。ああ、やはりシロウはこの血を継いでいるのだ。そっくりだ。

「血だけでは判断しませぬ。その心意気で選びまする。まぁあの一番泣き虫は守ると決めていたけれど。」

 マリスは目を細めて笑っている。やはりこの人物の血も(もら)っている。


「苦しいこともあるでしょう。でも、へこたれず前を見る者を援ける。これが、先祖(おや)護り(きもち)。」


「兄様が言っていたわ。シロウは男前だと。」

「ああ、笑顔がいいな。安心した。」

 

 

「いざ勇那の地から、悪しきモノを追い払わん。さあ、シロウ、機嫌良う参ろうぞ!」


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