第49話 淵と蛇
天巫女城
「あのう、どうしてオレここに立ってるんですかね?」
ユウジの声は震えていた。
ここは城の郭の突端、下には川が合流する断崖絶壁の先の先である。
川の合流点は中心部の淵が緑から濃い青色に変わっている。かなり深いのだ。
ユウジはすでに魂座を武装している。
各配員も準備万端だ。つまり憑りつき状態。
「何をって飛び込むのだ!」
魂座の声が兜の中で重く響く。
「ここから水面まで22mあります。」
メルさん、冷静な報告ですけどあまり気分の良いものではないです。
「この鎧なら衝撃はさほど感じないわ。あなたなら大丈夫。」
マチルダさん。そういう問題ではないのです。
「この淵を潜った奥にある洞窟に件の船の手がかりがあるのです!殿!」
雰囲気はあるけれど、ここから飛ぶ意味は?
「ああいや、下の川原からゆっくり入るとかないの?」
身震いするような高さのだ。人間この高さぐらいが一番怖いらしい。
「でも、もうワシ皆に言ってしもうたし。主、カッコよく飛び込むよって。」
振り向くとたくさんの骸骨の兵隊さんたちがこちらを見ている。
いきなりユウジの右手の槍が天を突いた。魂座が勝手に動かしたのだ。
割れんばかりの歓声が上がる。
「ああ、やめなさい!んっ?」
今、淵の中に、長い長い大きな影が動きませんでしたか?
「ああ、ここのヌシは大蛇じゃ!まあ。通るだけじゃから大丈夫じゃろ。ダイジャうぶ!」
この魂座が大叔父でなければ、首を絞めていたと確信するユウジ。
「ねぇねぇ、これ楽しそうだねぇ!」
また変なのが出た。ローラ、遊びではないんだ。
鎧を着てても、嫌なものは嫌だ。ユウジは踏ん切りがつかない。
その時、槍が青く光った!青、いや深い紫を帯びた深い青色、瑠璃色だ。
「遅い!」
一言だ。槍の柄尻が勢いよく地面を突く、
「あっ!」
ユウジ空中に踊り出る!
璃多姫様も憑りついていらっしゃったのだ。担当は青、いや瑠璃色。射撃係。
ユウジ絶叫する。
「よっしゃぁ!」
機関始動!煌めく星、魔法陣生成!全力回転!
ユウジ、魔法陣へ頭から突入!超加速!
声にならない叫びが悲鳴に変わりながら突入する先には運悪く。
十数秒後、淵を全力で岸に泳ぐユウジの姿があった。それを追いかけるのは大きな長い蛇のような影。
「大おじぃうえ!蛇じゃない!蛇じゃない!龍じゃないかぁああ!」
「あれ?昇格しとる。偉くなったのぉ!」
ダメだ。この魂座、頭のネジがない!
「ねえ!追っかけっこ?」
ローラの楽し気な声。さっきはよくも!しかし
「そうだ!ローラ!いい遊びがある!」
星はまた煌めいた!
ユウジの足元で回転する魔法陣。縁の物理境界面に足を乗せ風を使って浮上する。推進力は腰に魔法陣をもう一枚!姿勢制御は小型魔法陣で全自動。即席の波乗魔法陣。
魔法陣は風を切って波に乗る。龍の攻撃を右へ左へ高速で躱す。
尻尾が薙いで来た。足の力と風の圧力を調整して回転しながら上へ飛んで逃げる。
勢いそのまま、見事に着水すると
「これならなんとか!」
ユウジは槍を握りしめて淵の水面を疾走する!




