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第36話 勇王と内花姫

閑話 


 ユウジは思い出していた。


 小さいころ柿の実が成っていた気がする。


 屋敷の縁側で婆様が片ってくれた話。


 この頃は、父上が戦でいないから、代わりに婆がお話をしよう。


 ユウジの体に流れるご先祖様の血の話を・・・と。



 遠い昔、


 あさみよの国に、兄妹の神様が住んでいらっしゃいました。


 兄は大地の力の化身で、力強く岩の様に強い心をもつ、美しい青年の姿をしておられ名を勇王(イサノオ)と申された。


 妹はこの世の全ての花の女王であり、この世の全ての命を慈しむ優しい心のそれはそれは美しい内花姫(ダイナひめ)でございます。


 ある時、はるか彼方の国から炎を吹く船に乗った、ひとりの若者がやってきました。


 若者は、兄妹の父であられる主神(ヌシ)様にこう言いました。


「私はこの国のことを知りたい。私の国とも仲良くして欲しいのです。」


 主神(ヌシ)様は特に断ることもなかったので、若者を歓迎することにしました。


 兄妹に命じて、いろんな所を案内し、楽しい時間を過ごすうち、三人はとても仲良くなりました。


 いくつもの時が過ぎ、若者と内花姫(ダイナひめ)は愛しあい、夫婦(めおと)となられました。


 そして、姫はひとりの男の子をお産みになった。


 するとしばらくして、若者は主神(ヌシ)様の前に出てこう言ったのです。


「一度、私は自分の国へ帰って、私の国の人々にこのような美しい国があることを伝えましょう。父にも子を成したことを伝えたいのです。」


 命を司る花の女王として、国から離れることのできない内花姫(ダイナひめ)様は、旅路を心配して


「どうしても、お国に帰られるなら、これを私だと思って持って行ってください。でも誰にも見せないでくださいましね。」

 と大事な大事な護り石を若者に渡してしまいました。


 その石は、父から人に決して見せてはならないと言われていたものでした。


 若者はその石を大事にしまって、また船を漕ぎ出し、長い時をかけて自分の国にかえりついたそうです。


 若者は王である父親に会い、これまでのことを許しを乞い、夫婦の契りを結び、男の子を成したことを報告しました。


「お前がそう決めたことなら良い。」


 王はそれを許しましたが、女王とその子をここに連れてくるように命じました。


 若者は迷い、そして、ある覚悟を決めます。


 花の女王は国から離れては生きていけないので、若者が内花姫(ダイナひめ)の元に帰ることを告げると


「それではその国に行くことは許さない。お前はこの国の跡取りなのだ。」

 と王はお怒りになりました。


 しかし、姫のもとへ帰ると決めた若者が、別れをつげ、その場を離れようとすると兵士に行く手を阻まれてしまいました。


 そうこうしているうちに、若者の袂から、内花姫の護り石が床に落ちてしまったのです。


 それを手にとった王は目を見張り


(ワレ)()の国へ(おもむ)く。」と


 船団を率いて兄妹の国へ出発しました。


「この石を手に入れれば長く生き長らえることができる。」と、

 こう、王は口走っていたのです。


 そして船団が兄妹の国にたどりつくと

「全ての石を差し出せ!」

 こう、迫ったのです。


 石の神である兄神は怒りました。


 そうして、若者の国と兄妹の国との戦が始まってしまいました。

 

 兄神は勇ましく戦い、女王は皆を癒します。


 しかしながら、異国の王の光と炎の矢や大砲の前に剣は少しづつ押されていきした。


 ああ、大地が燃える。


 そこに割って入る者がいました。


 花の女王の夫たる若者の船です。


 若者は本当は兄妹の国を乗っ取るために近づいたのです。


 しかし、若者は父親たる王に弓を引きました。


 家族への愛が生まれ、己の罪を恥じ、贖罪の言の葉とともに炎の矢を放ちます。


 若者の船は王の船団とたった一隻で戦い、ついに王の船に迫ります。


 若者の船は国の敵を(ほふ)る為の船であり、若者は国一番の船乗りだったのです。


 しかし、最後の最後に若者は父王の御身には矢が放てなかったのです。


「息子よ、道を()けぇい。」


 父から放たれた炎の矢が若者の船を炎に包みました。


 そして、その炎の矢は再会を喜び、若者に駆け寄った女王の体をも貫き火をつけてしまったのです。


 悲しみのあまり、女王を抱いて、一線を退く若者の船。


 花の女王は討たれた。


 国中のありとあらゆる花と木々が燃えていきます。


 石の神である兄神は怒り狂います。手勢を率いて最後の突撃を始めました。

 

 

 すべてが焼け焦げたあと、若者の亡骸(なきがら)が大きな焼けた大木の下に横たわっておりました。


 父たる王は船を降り、若者にむかって

「息子よ、お前が共にいないこの世に意味はない。我はここより去ろう。」

 そういって、奪った護り石をその手に握らせて去りました。


 石の神様は生きておられました。


 ただひとり、残った妹の忘れ形見の男の子を抱いてこう言われました。

「我が(おい)よ、お前の母親は生命の源たる花の女王。不滅の存在であるが身が崩れておる。この国の命の復活のため、お前は、父親の罪を背負い、母親を元に戻さねばならぬ。」


 そして、こうも言われました。

「我が妹が戻るまで、我が石となり、その身を覆って崩れるの防ごう。そして、それが成るまで、お前はその父のように人間として生き、死ぬことは許さぬ。繰り返せ。いや、往復せよ。」


 これは、花に絡まる石の呪いのお話。


 我らが氏神、勇王様と内花姫様の昔話。


次回より、投稿にお時間をいただきたく思います。

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