第33話 弾と機嫌
「そんなこと、できるの?」
恐る恐るユウジは聞いた。
「普通、不可能ですが、現実に起きてます。」
メルは冷静そのものだ。
「このままだと、後5発で、・・・」
「何?」
「魔法陣が壊れます。」
ー1発目ー チッ
変な音が混じった。
「ちょっとずらして!」
ー2発目ー ピキッ
あっ確実に亀裂が入った。
「ずらしても修正してくるわ!」
「メル、どうする?」
ー3発目ー ビギッ シュゥゥゥーッ
何か漏れ出した。
「代わりを用意しましょう。」
ー4発目ー ジュオオオ
「ユウジ、余計に出すよぉ」
ー5発目ー 決定打
魔法陣が砕け散った。
ーヴィィィィィィンー
すれ違いざま、次の魔法陣の回転盾が出現した。
しかし、
続けざまに衝撃と音がした。
2発で砕ける。代わりは10枚ぐらい用意してあるが。
「どうして?」
「銃を変えましたぞ!強いヤツに。」
魂座はやはり声だけだ。
「しかもまだ本気じゃない。遊んどるわ。」
どうしてそんな風に育てたの、魂座殿。
「ローラ、ありったけ魔法陣を前に用意してっ!このまま量で押しこむっ!」
そして全力で走り出す。
「それぞれ回転数変えるんだけど、すぐ見抜かれちゃうよう!」
ローラがセッセと魔法陣を引き出す。
「転移空間は無理だけど、それをこじ開ける魔法陣の際が物理的に攻撃可能って気づいたんだわ。」
マチルダの分析だ。
バカな、空間をこじ開けるほどの強度だぞ。アダケモノも砕くのに。
そして、その集中力と洞察力たるや。
「見えてもいるんじゃが、アレはほぼ直感で撃っておる。」
見えない設定にしているが、ふんぞり返っているな魂座殿。
「大きさも変えてるのにぃ!」
ローラが騒がしい。
「こりゃ、化け物だ。」
「門まで後70m!」
「どわっ!」
また一発当たる。
ユウジはつまづいて前のめりに転んだ。
回転魔法陣も地面まで一緒にずれて斜めになった。
すると
二発目が地面で斜めになっている魔法陣を打ち砕いたのだ。
すかさず魔法陣の盾を城門に向ける。
「マチルダ、今のって!」
「ああ、メル。もうこれは弾道修正じゃなくて誘導弾だ!」
ユウジもなんとなく理解できた。
そして、ふと思うことがあった。
「ローラ、魔法陣を手のひら大に小さくして、三重に重ねてオレを囲むように配置して!」
「わかったぁ!再構成と再配置っと!こう?」
「半円構造状に1層100枚で3層ありますっ!50層まで自動で生成します。」
見る間に小さい魔法陣がユウジを半月状に取り囲む。
「良しっ!メル!オレを中心に防御軸は璃多姫を指向せよ!」
「了解です!」
「ローラ、少し左右に動く、オレの間合いで動けるようにしてくれ!」
「うん噴射魔法陣用意良し!」
「マチルダ、着弾観測!」
「監視する!」
璃多姫に向けていた当初の等身大の回転魔法陣が残り1枚だ。
脳内会議の間にも着実に割られていたのだ。
その瞬間は来た。
最後の等身大魔法陣が割れる音と同時に「点火」右45度少し上に噴射魔法陣を使って跳躍する。
その分、防御軸も左下へずれた。
ーダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダー
銃声の種類が変わった。
連射だ。掃射といっても通るか。
着地と同時にマチルダから観測結果がくる。
「第1層、着弾数100発。被弾面率50% 魔法陣破壊数50枚。2発の攻撃で魔法陣1枚を正確に壊しにきてるわ。そして、発射前に被弾した魔法陣に捜索誘導波を受けたことを確認。」
「魔法陣1枚を1単位と認識してるな。」
つまりは、複数目標同時対処だ。
「ローラ、被弾した層は即時放出。内側に新しい層を生成、保つか?」
「ここはク海よ。補給の心配はないよぉ!」
ローラはうるさいから、メルは画面の端に小さなお星様だけがふるえる音声のみ表示にしてくれている。ちなみに魂座殿は小さな兜の表示だ。
「魂座殿、姫さまの残弾ってどのくらいありそうですか?」
「うん、無限。」
「へっ?」
何をいってるんだろうか。この魂座殿は?普通、モノには限りがあるのだが。
「強いていえば、気力が持つ限りなんじゃが。ここほら、ク海じゃろ。補給の心配は・・」
「ああっ、もう!」
ユウジは投げだしたくなる。すると・・・ローザが
「ユウジ、自分のご機嫌は自分でとらないと、ダメよ。」
「あっ」とユウジが呆けていると、
「ああ、再装填は100発ですな!殿。」
ああ、この魂座殿もローラに脳みそを書き換えられて言葉を覚えたな。
いかん。イライラしてたなとユウジはローラの言葉で少し落ち着いた。
気を取り直す少年。まだ16歳。こんなク海では鬱憤もたまる。
100発で再装填、つまりは一斉射は魔法陣1層でもつ計算か、いや違う!一点突破されたら裸になる。抜かれる!
「魂座殿、再装填にかかる時間は?」
「深呼吸一回分。」
? 皆の頭に飛びました。
「こんなにすごい攻撃なのに、なんでそこだけおおらかなんですかっ?」
「だって、魂を詰めすぎたら保たないし。」
「それに、弾丸も普通じゃないね。」
マチルダが目の端で腕をくんでいる。この人は省略じゃないんだ。
「思いを込めて撃っておりますから!」
「いや、違うでしょ。弾丸のことだよ!」
「だから、想いを込めて撃ってますって!」
「・・・まさか」
「ハイ!殿。弾丸の本体は 恨み が多くてですな。炸薬はもっぱら 怒り ですな。最近の流行で意地悪をまぜると毒を付与できますぞ。切れた堪忍袋の緒などを配合すると雷が・・」
「もういいです!」
ああ、自分のご機嫌ってとれねぇぇと落ち込むユウジ。
俺達・・・恨みをぶつけられてたワケ?




