第101話 作戦と気遣い
ク海潜水艇ムラサメ 艦内
シロウ達人間側は、露嶽丸とメルにより艦運用の基礎知識を意識内で投影してもらった。
それにより、艦運用は滞りなく進むようになる。
艦長席からシロウが質問する。
「現進路、速力で虎成の到着までに要する時間は?」
「現在虎成城まで約60㎞、直距離では1時間です。」
メルが即座に答える。
「チエノスケ、偵察部隊は?」
「後、約10分で、最大行動可能範囲の50㎞圏内に入ります。通常の10倍の大きさにしますので3匹編成、3部隊で構成します。残り1匹分は予備とします。」
蜂は飛び立てる。速さは時速200㎞で任務行動ができるらしい。
単純計算15分で城まで到達できるな。
「ユーグ、虎成の仇花の敵の感知範囲はどれくらいと予想するか?」
「40㎞だと思う。ただそこは最大警戒線で、対処してくるなら30㎞を過ぎてからかな。その10㎞の間で敵の識別をしていると思うよ。」
「どの型のアダケモノが出てくるかな?」
「それは正直分からない。仇花ってすっごい自由なんだ。アイツって目が見えていないでしょう?感情波で敵と思ったヤツの動き方や速さ、攻撃方法で判断して手札を変えると思うよ。対処療法ってやつさ!」
シロウはひと息ついた
「わかった。こちらの位置を秘匿したい。しかしチエノスケと偵察部隊の通信をできるだけ確保したいから、45㎞までこのまま前進する。各探知機能を効果的に得られるには高度はどのくらいがいいかな?」
「音響的には10mも高さあれば、反響音の計算はしやすいぞ」
ステラは10m欲しいという。
「受動測音的には高さは関係ないですわ。」
マリスは関係ないらしい。
「電探魔法陣も10mから15mは欲しいです。障害物の検知識別がしやすいですから。」
メルもそのくらいか。
「うーん。わかった。目視のアダケモノの斥候を警戒して45㎞、地表高度10mで固定で行こう。チエノスケ、念のための確認だが艦の位置がばれないように偵察部隊は発艦後、進路を別にとり、進入角度を変えて城を目指してくれ。ユウジ、魂座、璃多姫とアーノルドは武装して即応態勢を維持してくれ。マチルダ殿は敵の種類で武器換装も必要になるかもしれないから、よく見て対応を頼む。」
「私はぁワタシはぁぁぁ?」
艦内に元気な声が響き渡る。星のお嬢様だ。
「ローラ、これからかくれんぼだ。うまくできるかい?」
「OK!わかったぁ。まかせてよ!」
「モモ、サヤはチエノスケの代わりに舵をとってくれる。明丸を頼むぞ。・・・明丸?うん応援よろしくお願いしますぞ。そちが頼りじゃ!」
「あうー!」
艦長って大変だね。