エイシオさんの訴え※アユム視点
ソフィアさんを見た時に、俺は気が付いた。
あの呪いを解いた時に、見えた女性の顔だった……。
あれは沼に映ったソフィアさんの顔なんだ……。
見た事がある? と思ったのはシャルロットちゃんとイヨン君に似ているからだった。
涙を流すソフィアさん。
ドレスも破れて、手も擦り切れている。
多分、暗殺を止めようと相手の家から逃げ出す時に揉めて怪我をさせられたのだろう。
誰にも聞かれないように、あの沼で愚痴をこぼしていたつもりが……。
皮肉な事に黒精霊がいた沼で……エイシオさんのお父さんに呪いになってしまった。
結果病気が悪化してソフィアさんの孤独が更に増えて苦しみ、沼で思いを吐き出し呪いが……と負の連鎖になったんだ。
不安や寂しさが、こんなにも辛いことになってしまうなんて……。
「父上! 毒の事ですが、あれはアライグマの自作自演でした!」
エイシオさん!?
俺の腕の中にいたザピクロス様がもちろん怒り出したけど、口に大粒の飴玉を咥えさせた。
最高級のとろけるように美味しい特別な飴玉だから、ザピクロス様は夢中でハムハムしだした。
そっと耳を塞ぐように抱きしめる。
「どういうことだ!?」
フレイグルスお兄さんが怒り出す。
「このアライグマは、少々意地汚い部分がありまして……タルトを独り占めしようと毒を盛ったところ量が多すぎて自滅してしまったようです」
「そ、そんな馬鹿なことがあるか!」
「あっはっは! それは面白いねぇ」
ウルシュお兄さんは手を叩いて笑い出した。
「エイシオ兄様……」
あ、エイシオさんがソフィアさんやイヨン君、シャルロットちゃん三人を隠すように前に立って、お父さんと向き合った。
「父上。毒事件も、この度の騒動も全て僕の責任です」
「……どういうことだ?」
「僕が次期領主と言われながらも、無責任に家を出て全てを投げ出した事から始まっています。父上が病気である事も知っていました。それなのに……もう帰るつもりもなかった。しっかり向き合い、フレイグルス兄さんに後を継いでもらわなければいけなかったのです」
「……エイシオ……」
「僕の勝手で兄弟達の未来も不安定なものにさせてしまった。ソフィア様を不安にさせ続けたのは僕のせいだ」
「エ、エイシオ様、そんな事……」
ソフィアさんに寄り添っていたシャルロットちゃんとイヨン君も泣き出した。
「それに、あの暗殺者をやすやすと屋敷に入れてしまったのは僕の責任です。僕の連れという事で大した荷物検査もなく通してしまいました。父上を危険に晒したのも僕のせいです」
エイシオさん……。
俺も全然気が付かなかった。
旅の仲間だとすっかり信じて……。
「ラミリアとも話をしました。婚約は解消します。僕には領主になる意志はありません。ですので罰になるかはわかりませんが、今回の騒動の罪は僕がロードリア家からの追放ということで許してはいただけませんか父上……!」
そういうとエイシオさんはお父さんの前に跪いた。
深い沈黙が部屋を包んだ。




