暗殺の真相※エイシオ視点
ソフィア様の言葉を聞いて、僕は走り出しだ。
「父上!」
なんということだ。
油断していた!
あの二人が、暗殺者だったなんて!
ザピクロス様の炎で僕達は吹っ飛んでいく。
僕達が部屋に突っ込み入ると、床に血が広がっていた。
血の気が引く。
母上の悲鳴が響いていた。
「エイシオ!」
「ち、父上……」
剣を持った父上は、肩で息をしている。
壁に飾られた剣で応戦したんだろう、無事だった。
血まみれで倒れていたのは、ダニーとシャンディだ。
「こいつらを捕えろ!」
「くそう……死にかけのジイさんだって聞いていたぞ……」
「ちくしょう……嘘の情報をつかまされた……」
すぐに護衛達が、二人を拘束する。
「くそぉ! 離せっ! ヘマしやがってこの馬鹿男!」
「騙されたっ! お前なんかと組むんじゃなかったぜこのアホ女!」
二人共、旅を一緒にしていた時とは大違いの人相で悪態をついている。
あぁ……本当に僕の失態だ。
大雨は偶然とはいえ、あの洞窟で出会った時からの策略だったに違いない。
領内に入る門からでも後をつけられていたんだろう……。
「父上、お怪我は……!?」
「昨日のアユム殿のマッサージと肉が効いたわい。豪剣再び! あんな小童どもに殺られはせんぞ!」
豪快に笑う父上。
もしも父上の病気が治っていなかったら確実に殺されていただろう。
アユムが昨日も今日も父上の命を救ってくれたんだ。
「あぁあなた……ど、どうして……こんな……」
「バーバラ、怪我はないか」
「は、はい……私は何も……」
「母上に血を見せないように部屋を移りましょう」
母上は腰を抜かしてしまい、侍女とアユムに支えられて隣の部屋に移りソファに座らされた。
「旦那様ぁ!」
「おお? ソフィア?」
ずっと走ってきたのか。
息を切らし、涙を流して、ソフィア様が入ってきた。
騒動を聞いて、兄弟達も皆が慌ててやってくる。
「ご無事で……ご無事で……あぁ……良かった……うう……」
どうして、ソフィア様が暗殺計画を知っていたんだ?
僕は、家族以外をとりあえず部屋から出した。
取り乱した母を見て、シャルロットもイヨンも困惑している様子だ。
「一体どうしたんだ。ブルバッド夫人のところへ行っていたんではなかったか?」
「わ、わたくしのせいなのです……旦那様を……あの」
ブルバッド家か……。
隣の領土を守る家だ。
昔から険悪の関係だったが、ソフィア様が仲介してくださって落ち着いていたと思っていたけど。
「わたくし……旦那様への想いを、夫人にお茶会の度につい……吐き出してしまって……」
「ほう」
多分、それはいい想いではないだろうな。
「ただ、話すだけ、聞いて頂けるだけでよい……と思っていたのですが。ブルバッド夫人がわたくしの為に暗殺者を用意していると言われて……やめるように言ったのですが、従者も遠隔通話術師も昏倒させられてしまい……」
「なんですって! ソフィアあなた! よくも! この謀反者!」
母上が怒り出し、ソフィア様に掴みかかろうとする。
それを父上が止めた。
「待てバーバラ。代々に確執があったブルバッド家との仲介をソフィアに任せっきりにしていたのは私だ」
「で、でも……暗殺だなんて! 何をそんな不満に思うことがあったのです!?」
「うう……違うのです……寂しかっただけなのです……不安だっただけなのです……」
「ソフィア……」
家を離れていた僕に詳しいことはわからない。
でも、病気で弱っていた父上とべったり寄り添う母上。
ソフィア様は聡明で、秘書のように父上の仕事を支えていたのだ。
きっと領内での問題や今後のことも抱え込んでいたに違いない。
それに加えて、女性としての寂しさも……。
それをブルバッド家が煽って、暗殺を企てた発起人として利用しようとしたんだろう。
父上も神妙な顔だ。
自分が病気の間、どれだけ任せっきりにしていたか自分がよくわかっているはずだ。
「……エイシオに毒を盛ったのもブルバット……そしてソフィア、お前なのか……?」
「……ど、毒!? 私は何も……知りません。一体なんのことか……」
「か、母様……あ……ぼ、僕……」
ソフィア様の後ろで震えているイヨンを見て、僕は悟った。
そうか……そうだったか。
この場を収めなければいけない!
「父上! 毒の件ですが、あれはアライグマの自作自演でした!」
ええい! 言ってしまえ!
「な、なんだと!?」
家族全員どよめいた。




