悲鳴※アユム視点
エイシオさんが急に急いで馬を引いたので、ラミリアさんが小さな悲鳴をあげた。
ちょうど俺達が屋敷の玄関に着いたのと、馬車が着いたのとほぼ同じ。
豪華な馬車から慌てて飛び出してきたのは、女性だ。
「誰か! 誰か助けて! 旦那様は! 旦那様はご無事ですか!」
青ざめた顔で泣きそうになりながら、ドレスを持ち上げ大きな玄関に向かって走る。
「ソフィア様!?」
エイシオさんの叫び声に女性が気付き、振り向いた。
玄関の護衛さん達も何事かと、どよめいている。
よく見ると、あちこち怪我をしてドレスも破けている。
馬車からは怪我をした従者が転げ落ちた。
「エイシオ様! 旦那様は!? バーバラ様は!」
「一体どうしたのですか、落ち着いて」
あ! こ、この女の人……。
綺麗で、上品なストレートの金髪。
でもこの顔……まさか……。
「旦那様はご無事ですか!?」
「父上!? え……えぇ元気になりましたが……」
「ふ、服の採寸は!? 無事に終わりました!?」
「……ドレス・バーコックの?」
エイシオさんが、眉をひそめる。
「おじ様達なら、ちょうど今頃採寸しているはずですよ」
馬から一緒に降りたラミリアさんが伝えると、ソフィアさんはまた絶叫するように叫んだ。
「あれはニセモノよ! 旦那様を殺す気なの! 誰か止めて!」
「なんだって!!」
ソフィアさんの叫び声に、その場にいた全員が旋律する。
エイシオさんが護衛から、剣を奪って走り出した!
なんていうことだろう!
俺も一緒に走る!
でもエイシオさんのお父さんの部屋は、屋敷の主人らしく玄関から一番遠い。
城のような屋敷の三階の一番奥だ!
「ザ、ザピクロス様ーーー!!」
「むぅ仕方ない! 舞え! 炎!」
バックドラフト現象のような炎が舞い上がり、俺とエイシオさんを包んだ。
一気に階段も長い廊下も炎の勢いで、駆け上がるようにして進む。
熱くはないし、火事にもならない。
超特急だ!!
間に合って!!
「父上ーーーー!!」
昨日、笑って一緒にお鍋を食べた部屋。
女の人の悲鳴が聞こえた!
俺達は炎の弾丸のようになって、部屋の扉もぶち破った!
「父上っ!」
誰かが倒れていて、血が大理石の床に散らばっているのが見えた。




