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異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~  作者: 兎森りんこ


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ザケンナアライグマ※エイシオ視点

 

 勇者エイシオ……。

 英雄なる獅子王……。

 いつでも笑顔で気高い冒険者……優しく皆を守る男……。


 いつも皆から、そう言われていた僕。


 僕は今、風呂場いにいる。

 そう恋人のアユムと……いい感じだった……。


 しかし……!!

 

「どうですかぁああああ!? ザピクロス様ぁーーーーー!? これでもう痒くないですよねぇえええ!?」


「ぎゃー! 我は勇者になんか頼んでないのに! あぶぶぶあぶあうわwqぶうwぼごいごごごごおご」

 

 そんな僕が人生で一番怒りと哀しみと怒りで我を忘れ、お邪魔虫すぎるアライグマの全身を洗ってやった。


 アユムもドキドキしてるのがわかって、僕だって最高潮にドキドキしてたのに!!


「どうですかぁ!? どうだぁあああ!? ゴシゴシ!! ゴシゴシ!!」


「うぎゃ!! ぼこぴぃいいいいー!! 我はトウモロコシじゃない! もげる!」


「泡もろこしになりなさい!!」


 くそっ……悔しさでアライグマを泡だらけにして、ボチャ! っとお湯の張った手桶に入れる。


「ぶふぅ~~~んもう勇者の洗い方ハードなんじゃから下手くそ! でも、さっぱりじゃ……お股ももう痒くない」


「お股は洗ってませんよ!? 自分で洗ってください!!」


「え~洗ってくれてなかったの? ケチ」


 いや、触りたくないから!


「ぶひ~~いい湯だなぁ~あははん」


 手桶で頭にタオルを置いて、ピカピカ光り始めたアライグマ。

 それを見て僕はため息をつき、苦笑いするアユムとともにバスローブで風呂を出た。


「我の身体も拭いてよ~~」


「自分の事は自分でしなさいっ!」


 一喝し、二人で冷えた蜂蜜酒を飲む。

 さっきの事を思い出したのか、アユムが少し照れたように微笑む。


「冷たくて美味しいです」


「うん……蜂蜜酒を飲むがアユム可愛い……」


「え!?」


 あぁ胸が高鳴る。

 もう二人の想いは、止められないんだ。


 あのアライグマを森に返してから、僕とアユムの甘い時間を楽しむ……そう決めよう。

 そしたらきっと神様ありがとうアライグマに会わせてくれてって思う日が来るはずだ。


「ふあ~今日はさすがに疲れちゃいましたね……」


 アユムが疲れでコクコクしだしたので、二人で僕のベッドで眠ることにした。


 可愛いアユム……はすぐに眠りにつく。

 僕はぐっすり……とはいかないな。

 明日の事を考えると、どうなることやら。


 父上は厳格な御方だが……今は持病で臥せっている事も多いとロンからの手紙で読んだ。


 もちろん僕が家を出て冒険者をやっている事には、大激怒で大反対されてきた。


「なんか……貴族みたいな生き方や考え方……理解はできるけど好きじゃないんだよな……」


 家の名は継がないと、何度も言っているのに書類も全て破かれて……僕は卑怯にも家を飛び出したんだ。

 今回も衝突するような事があれば、即座に家から正式に出ることを告げよう。

 

 母上は、典型的な貴族の令嬢がそのまま歳をとったような女性だ。

 綺麗なドレスと宝石と権力がお好きな方。


 正直でわかりやすいので別に嫌いではない。下の二人を産んだ側室をいびる事もなく、ただ毎日を優雅に楽しく生きたい女性だ。


 子供を産んだのだから、それだけで何よりも褒められるべき存在という考えだ。


「それは……まぁわかる……」

 

 育ててもらった覚えはないが産んでもらった事を、この歳になってやっと感謝できる気がする。

 

 お土産に持ってきたアンシュリテッド産の真っ赤な宝石を渡すつもりだ。


 大真面目な兄のフレイグルス……。兄さんにこそロードリア家を継いでほしい。


 跡継ぎ問題がなければ、僕が兄さんに恨まれる事もなく小さい頃のようにずっと仲良くできたのかな。

 あの、怒りと憎しみに満ちた瞳で睨まれる事になれることは一生ないだろう。

 

 して、とんだ変わり者のウルシュ兄さんは相変わらずなんだろうか……。

 頭は抜群にキレるのに……あの人は……遊び人で……。


「はぁ~~……クセの強い人ばっかり……」


 弟達の事まで考える前に、僕も長旅の疲れでそのまま意識が遠のいていった。


「我も寝る~~!! もぞもぞもぞ!!」


 あ……おい、やめろアライグマ……間に……入るな……。


 

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