湖畔でのバーベキュー※アユム視点
「うん、うまいのう~~」
綺麗な星の見える湖畔で、俺達はバーベキューを楽しんでいる。
エイシオさんが手際よく、肉や野菜を焼いてくれる。
料理は苦手だけど、炭火で肉を焼くのは好きなんだそうだ。
「ザピクロス様、肉とトウモロコシだけ食べては栄養バランスが……」
エイシオさんが焼いているそばからザピクロス様は、かたっぱしから肉を食べていく。
小さな手で、上手に箸を使うなぁ。
しっかりどっぷりと焼肉のタレをつけて、パクパク食べる。
「我は神なり! 野菜なんか嫌じゃ~!! 肉ひょい! パク!」
「あ! それはアユムにと思って焼いていたのに! ごめんよアユム」
「いえ、俺は大丈夫ですよ」
「むひょひょ肉トウモロコシ肉トウモロコシ肉トウモロコシ! 最高じゃ!」
肉はいんだけど……はぁ……。
さっきの攻撃。
とりあえずエイシオさんには言わないでほしいって、ザピクロス様に頼んだ。
波をかぶった俺達を見ただけでも大慌てで走ってきてくれたのに、攻撃されたなんて言ったら……どれだけ心配をかけるか。
俺は、ザピクロス様が食べない玉ねぎとニンジンを食べる。
うん、異世界でも野菜は旨い。
俺に攻撃をしたい人間……人間じゃないかもしれないけど……。
俺に当てようとした武器は燃え尽きちゃって、手掛かりも何もないしなぁ。
「ザピクロス様!! これはアユムの肉ですからね!! 絶対に手を出さないようにしてください!」
「勇者め! お前、焼肉奉行じゃな!」
「あなたの分の霜降り肉は、もう終了しましたから!」
「ぐすんぐすん……と見せかけて~のひょ~!」
ザピクロス様が伸ばした箸から、トングで肉を遠ざけるエイシオさん。
「次食べたら斬るぞ! このアラ……!! ……ゴホン失礼……ザピクロス様、こっちの鳥手羽も美味しいですから……」
「くそぉ……じゃあ、お肉部分とって~とって~」
「はぁ、ちょっと待っててください……アユム? 全然食べてないし今日はビールよく飲むね」
「え!? あ、此処のビール美味しいし喉が乾いちゃって」
俺は誤魔化すようにゴクゴク飲む。
いや、酔っ払ってる場合じゃないんだけど……。
俺の命を狙う……ってやっぱり、あの人?
俺の脳裏にあの綺麗な女性が浮かぶ。
いや、まさかそんな……疑うなんて俺最低だよ。
「さぁ! 焼けたよ! アユム」
「あ、ありがとうございます!」
幸せに浮かれてる場合じゃないんだ……と思ったけど、お肉がめちゃくちゃ美味しかった。
いつ、エイシオさんに相談しよう。




