手を繋いで※エイシオ視点
二人で手を繋いで歩く。
僕は静かな町外れに家を買ったから、道中しばらく人混みにはならない。
この前の豪雨で少し土の道路がぬかるんでる部分はあるけど、僕達も雨降って地固まる……だ。
前に温泉へ行った時のように穏やかな、晴れの日差し。
鳥の鳴き声。
綺麗な花。
そして隣にいる愛しい人……とアライグマ……なんでだよ……アライグマ……。
ザピクロス様の用事を終えたら、すぐに家に戻ってきたいな。
「まずは馬車を借りてから、荷物を載せていこう」
「はい」
アユムの手を握ってるとドキドキする。
子供みたいだな。
もっともっと触れたくなってしまう。
「別にダンジョン攻略ではないし、テントや寝袋や焚き火なんかも用意して身体に負担のないゆったり旅をしよう」
「わぁキャンプ飯、いいですね」
「キャンプで食べるご飯の事かい?」
「あ、はい。俺の世界でもキャンプが流行ってて、焚き火で作るご飯とか色々レシピがあったんですよね」
「アユムもしていたの?」
「俺は全然ですよ! ソロでやるのも勇気出ないし」
「ソロでのキャンプなんか、相当の手練じゃないと……そうかアユムの世界は魔物もいなくて平和なんだったね」
「はい」
「こっちの世界では僕が守るからね」
「エイシオさん……」
お互い顔はよく見えないけど、触れた手と声で心が通じ合う。
可愛い……愛しいアユム……。
「我の事も頼むぞ勇者」
空気読めよ! アライグマァ!
「ザピクロス様は、僕が守らなくても十分お強いでしょう。神様なのですから」
「遠隔操作しているようなもんなんじゃ。こんな小さな身体で強いわけなかろう。転移者殿も頼みますぞ」
「は、はい。全身全霊でお守りします!」
「わー僕が二人を守りますから!」
アユムを危険な目になど合わせるものか!
僕達は馬車を借りて、ギルドに行った。
ギルドは荒くれ者も多いから、アユム達には馬車で待っていてもらったけど……ラミリアがいた。
本人も言っていたけど、獣人化してる。
妖艶な雰囲気と香りに当てられて、男達が色めき立っているよ。
僕も、彼女くらいな派手さを好む気質があったら良かったのかもしれないが……。
「あら、エイシオ様だったのですね」
フードに口元も隠しているから、ギルドの受付嬢は僕が出した書類を見て僕だと気付く。
僕を見つめて、ポッと頬を染める受付嬢。
パーティー解散の届け出と、ついでに信用できるパーティーに一ヶ月ほど家を留守するので定期的に見回りに来てもらうことにした。
獣化すると鼻も利くようになる。
顔を隠していても、ラミリアには僕だと気付いていたと思う。
それでも彼女は何も言ってこなかった。
これからはお互いの幸せを探そうラミリア。
君の幸せを、心から願う……。
「あ、エイシオさ~ん。焼きトウモロコシが売ってたので買ってしまいました」
「いいね!」
少し暗い気分になっても、アユムの笑顔を見ると元気になる。
僕の太陽だ。
まぁ楽しい旅にしよう。
寝袋は二つ繋げられる物を買おうかな。
「あと十本は喰いたいぞ」
「はいはい」
別々に寝るための、ペット用の寝袋は絶対買おう。




