旅の準備※アユム視点
ザピクロス様に身分証明書を作ってもらった。
これからエイシオさんはギルドに行って、馬車を借りてきてくれると言ってくれた。
「じゃあ俺は、家で旅の保存食を作りましょうか」
「えぇ……。僕はアユムと一緒に行きたいなって……思ったんだけど……」
「え? はい、じゃあ一緒に行きます」
「あぁ! 嬉しいよ!」
エイシオさん、尻尾がパタパタなってる。
今までのかっこよさに可愛さがプラスされて……エイシオさん最強。
それに一緒にいたがり屋さん……だなんて。すごく意外!
俺も嬉しい。
「転移者殿、テンドルニオンの指輪は身につけておいてくだされい」
「はい、わかりました」
テーブルに置いてあった指輪を俺ははめる。
やっぱりテンドルニオン様は何も言ってくれないな。
ちょっとこの指輪、中二病のシルバーリングっぽいから俺に似合わないけど。
あ、ビリっとした。
怒っちゃったかな? ごめんなさい!
「じゃあ行こうか、アユム」
「珍しいフード付きの服ですか? エイシオさん」
珍しくフード付きの、ポンチョのような上着を着るエイシオさん。
そのままかぶって耳を隠す。尻尾も隠れる。
「この耳と尻尾だとどうも人目を引くからね。ついでに口元も隠してしまおう」
「わぁ、ミステリアスですね。素敵です」
でも雰囲気でか、かっこいいのバレちゃうなぁ。
「よし、じゃあアユムも……!」
「わ、わぁ~」
楽しそうなエイシオさんに、布をぐるぐる巻かれて俺も正体不明になった。
雰囲気は……ミノムシ?
「ザピクロス様は、ソファでお休みになっていてください」
「嫌じゃ、我も行くぞ。美味いもの探す」
ぴよーんと頭の上に乗られた。
不思議と重さはない。
「それでは、一緒に参りましょうか」
「うぐ……そ、そうだね」
二人と一匹で家を出て、エイシオさんが鍵をかける。
「じゃあ行こうアユム」
エイシオさんはそう言って、俺の手を握った。
心臓が一気にキュン! とする。
「お互いこの格好だし、誰にもわからないよ」
「は、はい……」
俺も握ろうとしたら、指と指の間にエイシオさんの指がスルリと……。
こ、これって恋人繋ぎ……!?
「行こう? アユム」
「はい……」
「我はなぁ~トウモロコシが好きじゃ、畑いっぱい食い尽くしたい」
「さっき朝ご飯食べたばっかりじゃないですか? お昼ごはんに焼きトウモロコシを買ってあげますから。ここの名産ですからね」
「おう、勇者。たまには気が利くの」
俺の頭の上に乗ったザピクロス様とエイシオさんが冗談まじりの話をしながら歩いていくけど……。
この恋人繋ぎ……ドキドキするよぉ!
たまに、指先で指をなぞられたり……エイシオさんっ刺激が強すぎます!!




