キスの意味※エイシオ視点
「どうぞ」
「はい……では」
ソファに座って、僕は頭をアユムに向ける。
ピコピコと耳を揺らすと、アユムがまたキャッキャする。
「俺、あの……大好きで……もふもふが」
「そうだったんだね、どうぞ好きなだけ」
そっか……僕が半獣人に生まれたのもエイシオに生まれたのも、この日のためだったのか。
と、思えるほどに人を好きになる力ってすごいな……。
ひゃ……アユムの手が僕を撫でる。
「ふわふわ……気持ちいい」
僕は下を向いてるけど、ちょっと上目遣いでアユムを見るとニコニコだ。
気持ちいいのは僕もだ。
なんだか……あったかい気持ちが心のなかを満たしていく。
「……俺、ラミリアさんの事を傷つけておいて……自分だけ……」
「いいんだよ……彼女のことは」
「エイシオさんと、一緒にいたいって気持ちを聞いたんです」
「うん……」
ソファに座ったアユムの太ももを、尻尾でぽんぽんと撫でる。
アユムはまた微笑んだ。
「でも、俺もエイシオさんと一緒にいたいって……思うんです」
「アユム……」
「いいですか……? 俺で」
「いいも何も……僕が望んだんだよ、ラミリアでもない、他の女性でもない」
僕はアユムの手をとって、自分の耳に触れさせた。
「僕も、今まで恋愛って……好かれる事はあってもラミリアのように揉め事になってしまって……どうしてなんだろうって思ってた。でも今は怒鳴ったり必死になる気持ちがわかったよ」
「え……」
「アユムと一緒にいられなくなったら、僕も半狂乱になってしまう。きっと僕は何をしてでも君を求める……」
「エイシオさん。俺もです……」
「だから……アユムと一緒にいさせてほしい」
アユムに撫でられていたら、こうやって両思いになれる事の尊さが……嬉しいような切ないような。
僕はまたアユムを抱き寄せて、キスをする。
キスは……こうやって一緒にいる事を、大好きな人と一緒にいる事を、確認するための行為なんだって……僕は初めて知って、また胸が熱くなった。




