僕達の本音※エイシオ視点
「アユムは元の世界に戻りたいよね……?」
お風呂の湯気が揺れる。
ついに聞いてしまった……。
アユムの本心はどうなんだろうか?
元の世界に戻りたいって思ってるに決まってるよね。
それならば、僕も逃げていないで全力で一緒に戻る方法を探さないと……。
「俺、この世界に……此処にいたいです」
光が……光が差した……!
「……アユム……」
「ちゃんと、しっかり心配されないように迷惑かけないようにします。だから……此処に、いたらダメですか……?」
アユムの瞳が僕を見つめる……本心だ。
「ダ、ダメじゃないよ。ずっとずっとずっといつまでもいてほしい」
「エイシオさん! あぁ……よかった。俺、やっぱり迷惑で早く帰ってほしいと思われてたらどうしようかなって……」
「そんな……まさかラミリアが?」
「いえ! 違います……俺が勝手にそう思って……でも」
「でも……?」
「いえ……なんでも」
「ダメだ。アユムしっかり話そう」
「エイシオさん……」
「ね?」
「はい……」
でも長湯して湯当たりしては困るので、僕達は温まると風呂を出た。
アユムの方は見ないように着替えてっと……。
「エイシオさん、こっち向いてください」
「んっ?……わ……」
温かい空気が僕の頭……髪を撫でる。
これもザピクロスの腕輪の……もう使いこなしてる!
「乾いた……すごいアユム」
「えへへ、エイシオさんにこうしてあげたいなって思ったらできるみたいです」
「ありがとうアユム」
僕は今、人生で一番心臓がキュンキュンしている。
こんな可愛い人が……いるんだろうか……天使だ。
結婚したい。
アユムも自分の髪を乾かして、僕達はいつものダイニングテーブルに座った。
どこかで鶏が鳴いてる。
もう朝になるわけなんだけど、僕はワインを持ってきた。
「あ、エイシオさん……」
「今日も休みだよ」
アユムは何も言わずに、チーズとハムを用意してくれた。
そういえば夕飯を食べていなかった……おつまみを見ると腹が盛大に鳴ってアユムが慌ててサンドイッチを作ってくれる。
「ありがとう! サンドイッチ最高に美味しいよ」
ただチーズとハムを挟むだけじゃなくて、バターを塗ってピクルスも挟んでくれる。
アユムイズム……あぁ……美味しい。
「本当にすみません……」
「どうして謝るんだい。僕は今とっても幸せだよ! 何を考えていたのか教えてほしい。何を聞いても……ラミリアを責めたりもしないよ」
きっと優しいアユムが気にしているのはラミリアの事もあるんだろう。
「……あの、改めてエイシオさんが凄い人だって教えてもらいました。救世主とか勇者とかそういう人だって」
「そんな事はないよ」
「そんな凄い素晴らしい人を俺が縛ってるんじゃないかと……思ったんです」
アユム、そんな事を考えていたのか……。




