アユムとの出会い※エイシオ視点
今住んでいる山小屋は、魔物も出る場所にも近く、ダンジョンもそれなりにある。
同じ場所でギルドに登録しておけば、人間関係も把握できる。
でも、僕は致命的に……家事も片付けもできないのだ。
なので借りた山小屋は荒れ放題になってしまった。
メイドさんも何人か雇ったが、やはり好意を持たれてしまう。
なので結局、お断りする羽目になる。
食事はギルドの隣にある食堂兼酒場で食べる毎日だったが、やはり夜の酒場になると女性に付きまとわられ男には睨まれる。
勇者なんて言われるような冒険者が結局疲れたのは人間関係。
女性にモテるなんて言っても、心の中は孤独だった。
アユムを助けた時、実は大酒を飲んで……もうどうなってもいいと山中をふらついていたのだ。
でも魔物に襲われかけているアユムを助けて……恐怖で泣いた彼が僕を抱き締めた時、正直僕も泣きそうだったんだ。
真っ暗な、月明かりだけの世界で強く抱き締められた。
アユムが僕に『ありがとうございます、怪我はないですか大丈夫ですか』と泣きながら言った。
僕はいつも強くて、完璧で……そう望まれて、思われていたから、そんな風に心配された事はなかった。
そして強い僕が人を助けるのは当然、という図式が出来上がっていたのだ。
感謝なんて、される事もなくなっていた。
みんな僕を見ているのに、僕を見ていない……虚しさに疲れ果てていた。
自分が死にかけたのに、僕の心配をしてくれる。
そんなアユムの純粋な優しさと温かさに僕は救われたんだ。