アユムを探して※エイシオ視点
どれだけ雨の中を走っても、アユムの姿は見つからない。
そうだ、大の大人なんだ。
ラミリアに嫌気がさしたとして、どこか他の飲み屋で雨宿りして、楽しんでいるかもしれない。
大の大人の男だ。
僕なんかとずっと一緒にいて……溜まった憂さ晴らしに、女の子と宿屋に入ったかもしれない。
違う……!
アユムはそんな事はしない……。
それは僕のただの願望なのか。
でも……僕とアユムは、ただ半年を同じ家で黙って過ごしたわけじゃない。
こんな時に、アユムはこんな反応をする……。
アユムはこう思うんだなって、アユムはこういう事は嫌いで、アユムはこんな時間が好きで……。
二人で築いてきた大切な時間。
アユムと笑い合って、僕は自分をまた好きになれたんだ。
とてもとても大切にしていた時間を……。
やっと、君が好きだと自覚ができた途端に、こんな離れ離れになるなんて……。
悪い予感ばかり浮かんでくる。
可愛いアユムが、泣いてる姿ばかり浮かぶ。
酷い雨と暗闇……。
どうしたらいい……!
冷静になれ! と自分に言い聞かせる!
……ザピクロス……!
炎の神の加護を受けることができる腕輪……!
「炎の神、ザピクロスよ……! 大いなる炎の力を分け与えし宝玉の力、我が前に示せ! 大いなる炎の加護を我に……!」
離れていても、頼む届いてくれ……!
瞬間、燃え盛る炎の力を感じる……。
あっちの、町外れか……!
「ザピクロスよ、彼を守ってくれ……!」
あんな森の手前の場所に……!
まさか、まさか元の世界へ戻ろうと!?
鍛錬はしていたけれど、こんなに思い切り走る事も久しぶりだ。
土砂降りの雨で、誰も歩いていない暗い夜道を僕は走る。
ザピクロスの腕輪を手に入れた時、沢山の人に称賛され僕の名は知れ渡った。
特に感動もなく宝箱に置いたままだった……ザピクロス申し訳ない!
今はあなたに心から感謝する!
「アユム……!」
資材置き場で僕は叫ぶ。
こんな場所にどうして……。
真っ暗な中、木の板が沢山置かれている。
「エ、エイシオさん……!」
雨宿りをしているアユムがいた。
あぁそんな場所で縮こまって……可哀想に。
「アユム」
「エイシオさん……す、すみません俺……」
ずぶ濡れになった僕がアユムに触れたら、アユムも濡れてしまう。
わかっているけど、駆け寄ってきたアユムを出逢った日のように僕は強く抱き締めた。




