ラミリアさんの主張※アユム視点
ラミリアさんの言葉。
エイシオさんを追いかけて……当然の事だよね。
二人は婚約者だった。
それは形だけではなく、ラミリアさんは本当にエイシオさんが好きなんだ。
「エイシオはね、すごいのよ。ロードリア家って隣の国で一番有名な貴族よ」
「貴族……」
「でも、そういう身分を嫌ってね。家を飛び出して冒険者になったんだけど……。そこでも彼は才能を発揮して、数々のダンジョンを攻略し、魔物を倒して人々に感謝され勇者そのものよ!」
演説家のように、一気に話す。
ラミリアさんはジョッキをまたグイッと飲む。
「それなのに……そんな彼が今は老人チームの御守りみたいな事をやってるだなんておかしいわ……ねぇアユム」
「は、はい……」
彼女の白い肌が、少し赤い。
酔いがまわってきたんだろうか。
瞳も潤んでいる。
「どうしてなの? どうしてエイシオはあんな風になってしまったの?」
「あ……俺が、住まわせてもらった時には……あの家にもう住んでいましたし、近くのダンジョンに……行く毎日だったので」
だから俺の中では、エイシオさんが変わったっていう認識はない。
ずっと、ずっとかっこいいエイシオさんだ。
「どのくらい住んでるの?」
「は、半年くらいですね」
「……そんなに」
「す、すみません」
何故か謝ってしまう。
「私、特級ヒーラー試験があったから半年こっちに来れなかったのよ」
「そうだったんですか」
「合格したって手紙を書いたら、お祝いの手紙とプレゼントは届いたけど……私はエイシオとまた冒険したくて、頑張ったのに!」
そうだったんだ……。
エイシオさん、もう冒険しないって言ってたもんな……。
「もったいないって思わない?」
「えっ」
「あの人の才能がこのままだと埋もれてしまうって事よ! ……どれだけの人をこれから救っていけると思う? 沢山の人が彼を待っているのよ!」
「え、えと……」
俺はなんて言っていいかわからなくて、ジョッキを持った。
そうなんだ。
エイシオさんを待っている人達が沢山……。
「その腕輪……『ザピクロスの腕輪』でしょう」
「あ……はい。炎の神様の加護をって言ってました」
「ものすごく貴重なものよ……。彼だから攻略する事ができた特級ダンジョンよ」
そそそそ、そうだったんだ!
そんなものを気軽に借りちゃったなんて!
「アユム、彼の友達なら彼を送り出してあげてほしいのよ」
「え……?」
「あの家が大事なら、貴方が住み続ければいいし……きっとエイシオは土地に不慣れな貴方を……心配してるんじゃないかしら」
「俺を……」
「そろそろ彼を解放してあげて、アユム」
俺が……エイシオさんを縛り付けている……?
そんな……。




