アユムをコーディネート※エイシオ視点
「じゃあ夜に迎えに来るわね」
そういうとラミリアは、軽く手を振って出て行った。
アユムもニコニコと、玄関前で手を振っている。
ラミリアは当然にモテる。
男性のほとんどは彼女を好意的に見るし、半数以上は恋に落ちる。
僕を追いかけてきた彼女と、一緒に冒険をしていた時もあるけれど……。
彼女を好きな男、彼女に嫉妬する女性。そして僕の……こんがらがり。
やっぱり人間関係が荒れてしまうので、僕は彼女から離れた。
正直、自惚れだけど……まだ僕を好きだと言うのかと思ってた。
それが急にアユムに……?
わかるけど、世界一キュートなの、わかるけど……。
「エイシオさん、今日は合流できそうですか?」
「ん、う~ん」
合流はしたい。ラミリアもそうは言っていた。
二人きりなんて心配だ。
でも普通だったら、行くのってかなり野暮だよなぁ。
男女の間に挟まる男……。
僕はアユムが好きだ。
それに心配だ。
だけど、そんな野暮をやって、いいものか……。
「……行けたら行くよ」
曖昧な事を言ってしまった。
「……わかりました。あの、俺の服ってこれでいい……でしょうか」
アユムの服は、どこへ行っても恥ずかしくはないが普段着ではある。
バル・エルハードは、冒険者も行く大衆居酒屋だ。
場所的にはおかしくはない。
しかしラミリアは着飾ってくるだろう。
その隣にいる男としての服装としては……少し地味かもしれない。
店でラミリアは冒険者達から注目されるだろうしな。
僕は、世界一可愛いアユムが、馬鹿にされたくないと思って
僕のシャツとかズボンを合わせる事にした。
「うわー、こんなシャツを僕が!?」
着せ替えアユム。
ベッドの上に色々と服を並べ、アユムに着させる。
「体型が違っても着れる服となるとね。着てごらん」
「は、はい……」
オレンジ色のシャツを着てみるアユム。
「うん! 似合うと思うよ。ここにこうやって布を巻いて……」
「わぁ……RPGっぽいなぁ」
「ん?」
「あ、いえ」
アユムはたまにわからない単語を言う。
もとの世界での話だろう。
「腕輪もするかい」
「えっ! アクセサリーなんかした事ないですけど……」
「苦手?」
「いや、なんていうか~俺のいたとこは男のアクセサリーは上級者向けアイテムで……俺みたいなのには無縁なものなんです」
「そうなんだ? ここでは老若男女アクセサリーは普通に身に付けるものだけど……うっかりしていたね。今度買いに行こう! プレゼントするよ!」
「えぇ!? いや、大丈夫です! いらないですよー!」
「いや! 絶対にプレゼントしたい!」
「ええー!」
好きな子にアクセサリーを、プレゼントしたい!
すごく純粋な欲望に、僕はワクワクした。
今日は今後の話し合いをしに行くつもりだけど、しばらく休もうかな。
「とりあえず、今日はこの腕輪をしてごらんよ」
「綺麗な金の腕輪……紅い宝石が入ってる」
「これは『ザピクロスの腕輪』炎の神様の加護を受けられるよ」
「す、すごいです! わぁ……オレンジのシャツ俺じゃないみたいだ。エイシオさんありがとうございます」
僕の服とアクセサリーを着たアユムは、普段より男らしさが増した。
それでも可愛い。
あぁ、僕がこのアユムと出掛けたい。
つい楽しくてコーディネートしちゃったけど、これでラミリアがますますアユムを気に入ってしまったら……
僕は馬鹿な事をしてしまったかな?
でも笑顔で喜ぶアユムを見たら、とりあえず良い仕事をした! と思えた。
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