朝のおふとん※アユム視点
「わ、わわわ!」
ん……エイシオさんの慌てる声が聞こえる。
チュンチュン……鳥の声。
「あ……エイシオさん……おはようございます」
あぁ朝寝坊しちゃったかな……。
朝方にやっと眠れたから……。
「ア、アユム……ぼ、僕」
「ん……どうしました……?」
「せ、責任はとります!」
昨日は楽しくて飲みすぎたから、まだ脳みそが働かない。
責任……?
「昨日は楽しかったですね。エイシオさん」
「えっえっ」
「お水、テーブルの上にありますので飲んでください」
「あ、あぁ……!
た、楽しかった……かいアユム」
ん? もしかしてエイシオさん覚えてないのかな。
なんだか慌てた様子だ。
「もしかして……覚えてないんですか?」
「えっ……あ、ごめんアユム」
ふふ、エイシオさん楽しそうだったもんな~。
「沢山飲みましたもんね」
「うん……少し頭が痛いよ」
「あ、大丈夫ですか! 俺、薬持ってます」
「いいよ、まだ横になっていて!
荷物を入れた鞄に入ってるかな?」
「はい。でも朝ご飯もあるし、もう起きます」
よいしょと起き上がると、浴衣が結構乱れていた。
慌てて俺は整える。
俺を見て、エイシオさんも自分の浴衣を整えた。
「朝風呂に入りますか?」
「う、うん……あの、怒ってないかい?」
エイシオさんが慌ててる。
「怒ってますよ」
「あぁーっ!」
ふふ。俺、意地悪してしまった。
「昨日の楽しい思い出を忘れてしまうなんて、ひどいです」
「ど、どんな思い出だったか、教えてほしい……思い出すかもしれない!」
エイシオさんは土下座せんばかりに慌てている。
「冗談ですよ! 昨日お布団を敷いてもらってる時に、海を見ながら俺が相撲の話をしたのは……覚えてます?」
「スモウ……あっ!」
エイシオさん、思い出してくれたかな?
「そうだ。それで布団を繋げて、二人でスモウごっこをしてみた!」
あは、思い出してくれた。
「そうです、そうです。で、もちろんエイシオさんが勝って二人で転がって……」
「あ、あぁ……なんとなく」
「それで、そのままエイシオさんは寝ちゃったんです」
「す、すまない! ごめんよアユム!」
「何も謝ることないですよ! 楽しかったです。スモウ」
エイシオさんはホッとしたように微笑んだ。
やっぱり全部は覚えていないかな?
俺を押し倒したような格好になったエイシオさん。
酔っ払ってたからだと思うけど、なんだか神妙な顔で俺をジッと見つめて……、
それが俺の心臓には、かなり刺激的な表情で……。
そのままバタリと倒れてきた時は、俺の反応が知られてしまうんじゃないかと焦ってしまった。
それで抱き締められたまま、エイシオさんは熟睡。
たまに浴衣がはだけて、足が絡んだりするから
俺は、ドキドキしてしまって……あんまり眠れなかった。
「ごめんアユム! もう飲み過ぎない!」
「謝る事ないですよ! 楽しかったです、あはは」
「そうか……あぁ良かった~~」
本当は謝るのは俺のほうなんです。
一晩中エイシオさんに抱き締められて、ドキドキしちゃってごめんなさい。
何もかも初めての事で、俺も自分の感情が処理しきれない。




