エイシオさんの髪を洗う※アユム視点
俺の髪を洗う提案に、エイシオさんも頷いてくれた。
さすがに片手で髪の毛洗うのは大変だよね。
もう薄暗くなって、ふわっと外灯がついた。
なんだか幻想的だ。
俺は湯桶でお湯をかけて、椅子を洗い温める。
「どうぞ、エイシオさん」
「ありがとう」
竹のような素材でできたカゴには、瓶が三つ。
シャンプー、コンディショナー、ボディソープ。
オススメだって女将さんがいうので貸してもらったんだ。
「痛かったりしたら、言ってくださいね」
「うん」
改めて後ろに立つと、エイシオさんの身体
すごい筋肉。背中まで鍛えられて……。
大きな背中。あ、古傷もある。
……かっこいいなぁ……。
「それでは……わぁすごく良い香りのシャンプーだなぁ」
俺は泡立てて、慎重にエイシオさんの髪をワシャワシャと洗い出した。
金髪が……俺の固い黒髪と全然違う。
柔らかいし綺麗だなぁ。
少し頭を後ろにしてくれているから、長いまつ毛も見える。
鼻が高いなぁ~。
全部かっこいいエイシオさん。
……そんな人の頭を洗わせてもらってるって……
ファンの女性達が見たら俺殺されるかも……?
「か、痒いところはありませんか?」
「大丈夫……上手だね……慣れてるのかな」
「そ、そうですか!? 初めてです」
「初めて……そうか……初めて」
エイシオさんは『そうかそうか』と……ちょっと嬉しそうだ。
なんでだろ?
「そ、そういえば……この世界の海ってどんな生き物がいるんですか~?」
「ん? そうだね……」
俺は……なんだかドキドキしてきちゃって、それを気付かれないように
ペラペラと余計な事を話しちゃったかも。
床屋で話しかけられるの苦手なクセに……。
だって自分でお手伝いするって言って……ドキドキしてるなんて変態じゃないか……。
「うん、いい香りだね」
「は、はい」
リラックスできるような良い香り。
二人でスンスンしてしまう。
「目に入らないように、お湯かけますね」
「はは、思い切り頭の上からかけても大丈夫だよ」
「えぇ! そんなことできませんよ~」
「アユムは優しいな」
「そんな」
エイシオさんは、いつも些細な事で俺を褒めてくれる。
そういうの初めてで……すごく、すごく俺は嬉しくなる。
「いいからザバッとかけていいよ」
「ええ~……それでは……」
「うん、いいよ」
「はい」
ザバーっとお湯をかけると、大型犬みたいにブルブルとエイシオさんが頭を振って髪をかきあげた。
「スッキリしたよ。いい気持ちだ。ありがとう」
そう言って、にこやかに微笑む。
あぁ爽やかすぎる~~~~!!
お、俺もエイシオさんの真似をしてみようかな。
俺みたいのが……人を褒めるなんて、おこがましいかもしれないけど……言って、みようかな。
「あの……あのエイシオさんって……すごくかっこいいですよね!」
「……えっ……」
あれ? エイシオさんが止まってしまった……!?




