おふろのじゅんび※アユム視点
おまんじゅうを食べてお話をしていたら、エイシオさんがすごくニコニコしてご機嫌になった。
おまんじゅう美味しかったもんね。
さっき俺が地味なせいで御者に間違えられた事が申し訳なく思ったけど、笑顔になって良かった!
眺めも最高の高級旅館かー……絶対にものすごく高いよな。
帰ったら俺も、仕事を探そうかな……。
でも、この世界で俺は何ができるだろう?
ふっと太陽の光が、オレンジがかってきているのに気付く。
「あ、夕陽がもうすぐ見えますね。お風呂の支度、お手伝いします」
「お手伝い……してくれるのかい?」
「はい、片手じゃ頭を洗うのも不自由ですよね。任せてください!」
エイシオさんがポカンと半分口を開けた。
また俺、間違っちゃった!?
「す、すみません……迷惑なら、もちろん……」
「迷惑なんて! とんでもないよ! ありがとう! お願いするよ!」
わぁ、太陽のようなハキハキした声に笑顔。
みんなが大好きになるのもわかる。
どうしたら、こんな風になれるんだろう。
「助かるよ、アユム」
「は、はい!」
またどもっちゃった……。
お手伝いは、もちろん最初からそのつもりだった。
でもエイシオさんの腕に撒かれた三角巾を外していたら、誰かと一緒にお風呂に入るとか、めちゃくちゃ久しぶりな事に気付いた。
え……いつぶりだ?
わからない……修学旅行?
自分から言っておいて、なんか緊張してきちゃったな。
「腕は……ぬ、濡らさないようにしないとですよね」
「うん、でも巻いてある包帯は防水なんだ。気遣いは不要だよ」
「そうですか、よかった」
「脱衣所は此処か……広いな」
エイシオさんと二人で脱衣所に行く。
脱衣所はまだ室内。
『露天風呂入り口』とドアがある。
タオルなんかは色々用意してあるし、浴衣もある。
怪我をしてる時は、浴衣が脱ぎ着しやすくていいかも。
「ん……着る時は簡単だったんだけど……おかしいな」
エイシオさんは、ゆったりしたボタンのシャツを着てきた。
ボタンを外すのに戸惑っている。
指も切ってしまったので左手の指は全部包帯なんだ。
これは大変。
「あ、俺手伝います」
「あ、ありがとう」
急がないと、夕陽が沈んでしまったらもったいなさすぎる!
大きめのボタンは、確かに着る時は片手でも着れそうだけど、外すのは難しかった。
俺も両手で一つ一つ外す。
う……向かいあってシャツのボタン外すとか……。
……怪我人の手助けですが、なんだか無茶苦茶緊張する!!
プツリ……プツリ……ボタンを外していく……。
エ、エイシオさんへのただの介助なんです!! と俺は誰かに向かって釈明する。
「ありがとうアユム」
一番下のボタンまで外すと、御礼を言われて俺はハッとなる。
エイシオさんの鍛えられて割れた腹筋とおへそを目の前で見てしまった。
ひゃっ……! なんかはずかし……っ!!




