プロローグ
初投稿となります(ꏿ﹏ꏿ;)
宜しくお願いします。
南に位置するアルカレジ王国。
海からの船の行き来も盛んで、人々が行き交う活気のある街だ。
豊かな自然が多く商業や観光に力を入れており多くの国から人が集まる。
大きい国にはある事だが、人が集まれば悪い事をする人間も集まりやすい。
通常は自警団などが処理するが第四騎士団の巡回もあり街の治安が守られ、住みやすい環境が整えられている。
この国には第一から第四までの騎士団で構成されている。
先代国王は身分からの差別を否定していた。
実力ある物を認める珍しい王だったのだ。
そのため現国王にもその考えは引き継がれている。
しかし貴族の威厳も尊重しようと騎士団には貴族で構成されている第一から第三があり、平民から集めた第四騎士団への入団はとても厳しい試験を合格する必要があった。
彼らは街の人々に【黒の戦士】と呼ばれ一番の人気を誇っている。
【黒の】とは騎士服の色の事である。
第一は紫、第二が青、第三が赤と一目で分かるように分けられている。
そんな第四の彼らと接点を持ちたい女性は山ほどいた。街を巡回する彼らは「何か事件はないか?困った事はないか?」と見て周るが、彼らより目をギラ付かせているのが適齢期を迎えた女性達だ。
どうにか彼らと知り合いたい!捕まえたい!と狙っている。
そうなると人気職と言うものが女性達の間に発生する。
【騎士宿舎の掃除係りと食堂係り】中に入り込める仕事だった。いつでも定員は埋まっており、滅多に募集はかからない。貴族の団員達も多くは宿舎に寝泊まりしている為ほとんどお目に掛かれない貴族様との出会いのチャンスの場でもあるのだった。
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「あ~ん。明日は何着てこう!!」
部屋のあちこちに服を並べシュミーズ一枚で鏡の前をウロウロしているのは騎士団食堂係りのアイラだった。
元々は叔母が務めていたのだが年を理由に引退。叔母はアイラが子供の頃からラキを好きな事を知っていたので「アイラなら他の男の子達をギラ付いた目で見ないから安心」と後釜に推薦してくれた。
「小さい頃はラキと遊ぶのにズボンが多かっただけに迷う~。少しでも可愛く見えるにはどうすれば良い?わからないー!あー!」
バサリッ
上に投げた服が頭の上に落ちてくる。
アイラ・ミルファーは片思いをしている。
幼い頃からずっと一緒にいた幼馴染のラキ・ヘルナート。
彼は第四騎士団の団長を務めている。
若干20歳と最年少での団長だが実力もあり、明るく性格も良いので上手く隊を纏めている。
「ラキは強い色より淡い色が好きでしょ?でも私の髪はミルクティー色だからクリームイエローの服だとぼやけるかな…。はぁ。こんな事ならフローラに選んで貰うんだったぁ」
フローラとは騎士団宿舎の掃除係りでアイラの親友だ。
今回の親睦会は彼女からのお誘いで「一人は絶対に嫌。アイラも来て欲しい!」と頼み込まれた結果だ。
街で人気の第四騎士団の彼らも男社会なので周りが思う程出会いはない。
その為、親睦会と言う名の飲み会がたまに開かれる。参加は掃除係りと食堂係りの女性と数名の団員だった。女性陣の身元がはっきりしているので誘いやすいのが理由でもある。
アイラはいつもは断るのだが、フローラがお目当ての男性が参加するからどうしてもお願いと言われたので了承した。
誰が来るのか詳細は知らないが食堂に来たラキに「アイラは参加するのか?なら俺も今回は出る」と聞いている。
ならばラキは参加するのだろう。
そう。ラキはめちゃくちゃ過保護だった。
いつも断っているくせに今回の親睦会に急に参加すると言った幼馴染の事を考えていた。
ラキは父親が元第四騎士団の団員だったので平民と言っても裕福な家庭で育った。
父は引退後も街の自警団の指南役を務めた。実家の庭でラキも指導を受け、剣だけではなく体術も教えてくれた。
そんな父を見てアイラが
「ラキパパ格好良い!私も将来は強い騎士様と結婚する!」
と言っていたのをラキは子供とは思えない嫉妬の炎を燃やした瞳で見ていた。
その時にラキの将来は決まった。
「俺は第四騎士団で団長になる!!」
なってはみたものの…
アイラと中々会えなくなってしまった。
頑張れば、頑張る程アイラとの距離があいてしまう。
そんな時に食堂係りとして働くアイラの叔母に「ラキ君、私もそろそろ引退しようと思うのよ」と言われた。
失礼ながら、これはチャンス!と思った。アイラがここで働けばアイラの休暇以外なら会える!と思いすぐに手回しをした。
職権乱用だ。
すぐに叔母さんと相談して採用担当がいる事務に赴き「彼女の姪を推薦します」と言った。アイラは叔母さんの進めだと思っているが、実際はラキのごり押しだった。
可愛い幼馴染のアイラ。
最近、ますます愛らしさが増した。
彼女のウェーブがかかったゆるふわな髪は触ると柔らかく心地良い。色白の肌にミルクティー色の髪は容姿と合っていて相乗効果だ。抜群に天使!
これで毎日会える。と思っていたのに、可愛い子には変な虫も集りやすい。
いや、自分の仲間を変な虫って言ったら駄目だ。
いや、自分以外の男はすべて変な虫って言って良いだろ。
などと考えながら今夜も自主練として剣を振るっていた。