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Family Wars  作者: 悠鬼由宇
6/6

終章 終わりの始まり〜見守られし子供達の明るく輝く未来への第一歩。

「サクラ。流石だな。」

 金沢誠一こと、三郎が満面の笑みで呟く。

「この距離よ。あたり前田のクラッカーよ。」

 石川琴美こと、サクラが能面の表情で吐き捨てる。

「だからサクラ。キミのボケは相当くだらないって」

 渡されたドラグノフ式狙撃銃を素早く解体しながら、三郎が呆れたように言う。

「相変わらず失礼な男ね。この場で殺すわよ、ジョン・ドウ?」

「だから俺はイーサン・ハントが好きなんだって。さてと、行きますか、デヴィッド・ミルズさん?(笑)」

「ッキーー! あんな若造と一緒にしないで!」

 ゴルフバッグを抱えた二人はビルの屋上から姿を消し、やがて夜の街に同化していった。


「再開発は間違いなく中止になるだろうな。」

 帰宅後シャワーを浴び、三郎はソファーでよく冷えたビールを口にしながら、

「これでしばらくは落ち着くかな。」

 既に二杯目のビールを口にしているサクラは、

「もう、ホントに目が離せないんだから、あの人達は……」

「ああ。それにしても、もう何年経つんだ? 俺たちが又一緒になってから?」

「えっと、真琴が六歳になったんだから、丁度五年じゃない?」

「そうか、もう五年も経つのか…… 長いようで、あっという間だったな。サクラは、その、後悔はしていないのか?」

「石川の家と真琴から離れて、三郎と一緒になったこと?」

「ああ。」

「全然。あなたは? 誠くんと一緒に遊びたかったんじゃない? それにマミさんともっと……」

「いや、それはない。……と言ったらウソになるか。確かに、マミはいい人だった。」

「そうね。彼女は真っ直ぐで誠実で、とても素直で。それにとても可愛くて綺麗で。三郎にはもったいない人だったよね」

「そのマミのことを褒めながら鬼のような形相で俺を睨むのやめてくれる?(笑)」

「悔しいけれど、これが所謂『嫉妬』という感情なのね。ねえ三郎、石川の孝に嫉妬した?」

「んー、全然。」

「私、アイツに抱かれたんだよ、何度も。それでも?」

「んーー、それは……」

「ねえ。どんな風に抱かれたか、教えて欲しい?」

 妖艶な目付きで三郎を誘うサクラなのである。


「それにしても。あれは本当に正解だったよね」

「ん? 二人して子供の前から姿を消したこと?」

「そ。それも時間差付けて。あれで、私たちを教団の関係者と疑う人はいなくなったよね」

「苦渋の決断だったよ。俺はサクラとずっと一緒にいたかったし、それにはあれしか方法が思いつかなかったー」

「そうね。私は子供なんて要らないと思っていた、三郎さえいればそれでいいと思っていた。だから、でも、真琴があなたとの子供だったら、と何度も思ったんだよ。あれ、私何言ってんだろう…」

「うん。意味がわからない(笑)俺も子供は要らないと思っていた。だけどあの日病院で保育器の中の誠を見た瞬間、信じられない程の喜びとあり得ないほどの悲しさを感じたんだ」

「悲しさ?」

「うん。この子がサクラとの子ではない、という事実。」

「あら。私と同じだったんだ」

「だから。あの夜発作的に彼女の前から姿を消したんだ。」

「だよね、計画ではもっと後だった筈だし。ねえ。もしあのままずっとマミと誠と一緒にいたらさ、私のこと忘れて幸せになっていたんじゃない?」

「それは時々考えるよ。」

(バーカ。思ってても口に出すな(笑))

「でも、こうしてサクラといる方が俺にとって現実だし安心なんだ。」

(バーカ。そう思ってんなら毎日口にしてよ!)

「って、おいおい、またかい? 昔から、サクラは…… 仕事の後…… あふっ」


「ふうう。そう言えばサクラ、お前が家出した後、石川の旦那はあまり落ち込んでいなかったよな、あれだけお前のことを愛していたくせに。すぐに後妻も貰っていたし。」

「あの時ね… もしあのままスッと姿消していたら、あの人真琴と心中しちゃうんじゃないかって心配したの、だから」

「だから?」

「家出する前に、あの人の枕元に写真を何枚かおいておいたの。」

「その、写真って、まさか?」

「そ。あの人の浮気の現場写真(笑)」

「浮気って、あれはただの風俗の…」

「風俗でも浮気は浮気。もし私が真剣に彼を愛していたら、他の女を抱いたらその場で射殺するわ。」

「ゴクリ。なるほど、それですんなり……」

「でもあの時。どれほど真琴を連れて行こうか、悩んだ……」

「そうだったね。何度も相談したよな」

「うん。」

「でもお前は置いてきた。」

「だから、」

「うん。」

「ずっとあの子を見守ることにした」

「だよな。離れる代わりに、俺と一緒になる代わりに、」

「あの子を、あと誠を守ることに、した。」

「ああ。そして俺たちは実際、」

「守ってきた。よね?」


     *     *     *     *     *     *


「ちょっと甘く見ていたわ。まさか、あの女、本気で真琴を殺そうと思うとは…」

「それよりサクラ。マミがさっきからハエのようにうろついて邪魔なんだが」

「大丈夫。もうすぐガス欠になる筈。」

「ハハ、流石サクラ。そこまで手を回していたか」

「そんな事より。マミは輪島にちゃんと連絡するかしら」

「ああ。もし警察に通報しなかったら、俺たちがすればいい」

「そうね。それでいいと思う。それでね、真琴なんだけれど。保護した後、手筈通り薬で寝かせて三茶へ?」

「ああ。その方がいいと思う。あの子はとても賢い子だから、俺らの正体をすぐにわかってしまうだろう。それとも、お前はあの子と話したいのか?」

「……」

「俺は、話さない方がいいと思うぞ。今のあの子の状況だと、家出してもおかしくない心境の筈だ。下手したらお前から離れようとしなくなるぞ」

「……わかってる。」

「ほら。城ヶ島が見えてきた。サクラ、マインドコントロール! 切り替えろ」

「わかってる。大丈夫。」

「それでこそサクラだ。」

「じゃあ、手筈通りに? 私が狙撃で」

「ああ、俺が現場近くで突発事象への対応。」

「この季節、海は冷たいよ(笑)」

「平気さ。お台場で訓練したじゃないか」


「流石。お台場の訓練が効いたわね」

「っクション。ああ。全く役に立たなかったよ。あんな訓練しなきゃよかった、っクション」

「こっちも上手くいったわ。死ぬほど脅しておいたわ。それより、真琴は……」

「ああ、気を失っている。さ、早く着替えさせて」

「ええ。ああ、すっかり大きくなっちゃって……」

「ん? どうした?」

「やっぱり、あの女殺す。」

「おい! どうしたよ?」

「見て。この傷。背中にも、腕にも…」

「これは…… ひどいな… って、待て! こら、待ってってば!」

「離して! このままじゃ真琴がいつか!」

「見守ろう! 遠くから、近くから、これからも。ずっと!」

「…… 私がいれば… 一緒なら、こんな…」

「ああ。だけど、思い出せサクラ。俺たちはどれだけの犠牲の上で生きてきたかを! あの十五歳の時、お前は何をした!」

「……一五の時のアレ… 暑い夏… 合宿所のグランド…」

「ああ。渡されたアーミーナイフ一丁。青ざめる兄弟姉妹達、そして俺、お前。」

「隣にいたユリが襲ってきたの。だから咄嗟に首を切り裂いた…」

「一郎と五郎が組み合った。二郎が四郎を刺した後、俺に向かってきた。俺は咄嗟にかわし、四郎の頸にナイフを突き立てた…」

「まるで動けなかったカリンの首をモモが切り裂いた。カッとなった私はモモを後ろから刺し貫いた…」

「一郎を倒した五郎と睨み合いになった。五郎の目は涙で光っていた。俺は軽く頷いた。そして五郎の心臓にナイフを突き立てた…」

「一人残っていたウメがあの場から逃げようとした。私はそれを追って、後ろから首を切り払った…」

「そして。俺たち二人が残った。」

「ええ。そうね。」

「だから。俺たち二人はあいつらの分まで、ちゃんと生きなきゃいけない。」

「わかっている。そうね、だから私たちはこの子たちもちゃんと守っていかなくちゃいけない。」

「その通りだ。さ、俺がこの子を背負う。東京に、帰ろう。」

「お願いするわ。ああ、こんな大きくなって……」


     *     *     *     *     *     *


「それにしても。見事なくらいにあの後暴力がなくなったわね」

「それはお前が時々脅していたからだろ?」

「あら、知ってたんだ。私が時々あの女に手紙書いてた事」

「手紙じゃないだろう。脅迫文だろう」

「それはさておき。あの徳田って詐欺師には笑ったわね」

「ああ、あの結婚詐欺師。いや、最初は教団か警察関係者かと思ったよな」

「それそれ! でもあなたがすぐに身元を明らかにして。」

「うん、普通の詐欺師なら放っておこうって、なってな。」

「で。放っておいたら、あなたのマミが簡単に食い付いたのには笑ったわ。」

「……まあ、寂しかったんだよ。俺との別れがあんな形だったから。」

「あら。やっぱりあなた、未だに彼女を愛しているんじゃない?」

「だから、その笑いながら睨みつけるのやめてくれる? そうだな、確かにサクラ以外の女性を選べと言われたら迷わず彼女を選ぶよ。」

「マミ以外に女知ってるの?」

「そういうツッコミは恐ろしい程のキレが感じられるよ。幸い、マミが妊娠しなかったのがせめてもの救いかな。」

「そうね。私たちと全く血の繋がらない子は救おうにも救いようがないからね」

「だけど、石川の孝一は、何故か真琴によく懐いているな」

「ホントね。母親は最悪だけど、父親は根は優しい良い人だからじゃない? うふ。」

「なんだよ最後のうふって。」

「……つまらない。少しは嫉妬なさいよ。」

「くだらない。嫉妬するに値しない男だよ」

「何よ、あなたが押し付けたのよあの男を!」

「そんな事より。今回はちょっとヤバかった、流石に……」

「話を逸らすのね、仕方ない人。でも、そうね、今回はちょっと忙しかったわね」

「まさか若林組が絡んでくるとはな、ちょっと焦ったよな」

「あなたが潰した新宿の田中組と同じ系列だったしね。関東鉄力会。」

「ああ。あの俺が殺した田中組長と若林組の古賀組長が兄弟関係だったのには少し驚いたよな。」

「潰れた田中組の組員が二、三人若林組に来たのにも驚いたわ。」

「ああ、古賀に良く懐いていて。今回古賀を抹消して、良かったよ。」

「サツに知れる事なく内々で処理してくれたのにも助かったわ」

「俺たちが見込んだ高松だけあったよ。アイツがトップなら、真琴も誠も安心だ。」

「まあ、そうね。それより。輪島はこのままにしておいていいの?」

「ああ。それな……」

 冷蔵庫に炭酸水を取りに三郎は立ち上がる。ついでにビール取ってきて、サクラの一言に頷きながら。


「俺は未だに消すべきだと思っている。だけどお前はー」

「ええ、反対よ。だって輪島には私たちが正体である、という証拠を何も持っていないわ。あくまで状況証拠しかないのよ。それも上には一切上げていない、彼の頭の中にしかない。」

「その通りだ。だが奴は新宿の花園署に行くんだ。俺の潰した田中組の捜査を引き継ぐんだ。奴ならいつか、田中組と俺たちの関係を見つけ出すに違いない。」

「それでも、私達を見つけることは出来ないわ。何故なら、あなたがいるから。違くて?」

「ま、まあな。ただ、これまで以上に俺たちは慎重にならなければならない。決して目立ってはいけない。尻尾を出してはいけない。……俺はちょっと心配なんだ」

「へ? 何が?」

「サクラが、だよ。」

「へ? 何で?」

「だって、その、サクラは、あれだから……」

「あれって、何?」

 妖艶な表情で三たたび三郎に迫るサクラ。

「ヒッ もう勘弁してくれっ これ以上もう……」

「何よだらしのない。もうちょっと頑張ってくれないと、あたし我慢出来ないかも」

「ちょ、ちょっと、おいっ」

「嘘よ。それぐらい分かりなさいな。で? あれって何?」

「しつこいな。言わなくても分かるだろう」

「ええ。わかっててもちゃんと聞きたいわ。この耳でこの口から」

 サクラが三郎の唇を妖しく撫でる。

「で? あれって、何?」

 三郎は観念した様子で、

「だからっ サクラが綺麗だから、人目をひきやすいって、事…… ああ、ちょっと、ああ…」

 三郎は観念したようだ。


「それで? 今後、私たちはどうするの? ここは引き払う方がいいのかしら?」

「そうだな。田中組から持ってきた戸籍はまだまだあるし。二、三年毎に名前を替えて引っ越しを繰り返して行けば大丈夫だろう。」

「そうね。盗聴器も進化して遠くからでも聞き取れるようになったしね」

「アハハ、本当だよ。五年前なんて、石川不動産やらマミの家やら、バー黒船、若林組。一体幾つ盗聴器を隠して近くで盗聴したっけな」

「うふふ。でもそのお陰で幾つもの危機を察知できたのよ」

「ああ。最近の盗撮器も性能上がっていると言うし。色々試しながらやっていこうか」

「そうね。性能が上がれば別に近所に住む必要はなくなるわよね」

「ああ。インターネットがもっと普及していけば、相当遠くからでも盗聴、盗撮が可能になるだろうね」

「それなら私、海の近くに住みたい。」

「海、か。ああ、いいよな海は。」

「初めて海を見たのが五年前、しかも石川と一緒に。この記憶を上書きしたいのだけれど(笑)」

「俺も初めて見た海はマミとだったかな。別に上書きはいいや。あ、おいこら。アーミーナイフはオモチャじゃないんだぞ、やめなさいって……」


「はあはあ。口には気をつけなさいよ。それより。お金はまだあるのかしら? 前回池袋のなんちゃら組を襲ってから半年は経ったんじゃない?」

「それなんだよ。もう残りは三百万くらいなんじゃないかな。ヤクザも不景気なのか、事務所に置いてある金が少なくなってきたよな……」

「それならいっそのこと、不動産屋に狙いを絞ってみたら?」

「不動産も不景気だよ、それにカタギの人達から金も命も奪いたくない。」

「そうね、それはそうだ。あくまで悪い奴らから、だよね。」

「ああ。それでないと、今まで消してきた命に申し訳が立たないさ。」

「それなら、今まで通りヤクザ者の所から、頂くことね。次はどこにする?」

「そうだな。東京から離れて、関西にいってみるのはどうだ?」

「あら、やだ! 私たち関西って行ったことないわね! それいいんじゃない? 素敵だわ!」

「ふふふ。サクラ、色々調べておいてくれないか、いつもみたいに」

「そうするわ。まだまだ関西のヤクザは景気良さそうだしね。そうだわ、いい機会だから関西から中国地方、それから九州に行くって言うのはどうかしら?」

「アハハ、それじゃ旅行じゃないか」

「いいじゃない、旅行。私は七年前? 沖縄に行ったきりだわ、それも一人で」

「俺も北海道に一人で行ったきりだ。そうだな、二人で関西旅行か。いいな。」

「ハハハ、素敵素敵。明日本屋でじゃらん買ってくるわ!」

「ついでに『週刊大衆』も忘れずに、な。」

「それはあなたが買って。私が買ったら変に思われるわ」

「そうだった。それは俺が買っておこう。」

「で、飛行機? 新幹線? それとも車?」

「どれも実に捨てがたい! ゆっくり相談しようぜ、再開発の話も落ち着いたことだし。」

「ええ、当分は真琴も誠も安心だからね。そう言えば、真琴は誠と同じ小学校に行けるのかしら?」

「どうだろうね。なんなら君があの女に脅迫文送ってみれば?」

「そう言うのを『過保護』って言うのよ。」


     *     *     *     *     *     *


 石川ミカどの

 真琴が大沢小学校ではなく三茶小学校に入学を希望しているようだ。その願いを叶えるように。さもないと孝一にとんでもない不幸が降りかかるであろう。わかっていると思うが、この手紙のことは誰にも話してはならない。もし話せば孝一にとんでもない不幸がおそいかかるであろう。

 真琴守り神より


 その手紙と孝一の笑顔の写真が送られてきたミカはそのまま意識を失い、目覚めた後手紙と写真を庭で焼き払い、世田谷区教育委員会へ電話を掛けた。


     *     *     *     *     *     *


 一九九七年四月。

 山一證券、北海道拓殖銀行などが相次いで破綻し、金融不安が頂点に達した年。

 世田谷区立三茶小学校の入学式に笑顔の石川孝と真琴の姿があった。

「おいおい。よくこっちの小学校、来れたなあ。クソおん… 奥さん、よく許したなあおい」

 金沢マミと誠が手を繋いで二人のもとにやってきた。

「それなんだよ。二月かな、急にアイツが『真琴は三茶小にしますから』って言ってさ、そしたら真琴がアイツに『お母さん、ありがとうございます』って笑顔で言って。そしたらアイツが『しっかりと勉学に励みなさい』なんて言っちゃって。アイツとコイツがちゃんと話してるの見たの、久しぶりだったわ」

 真琴がつないでいる手をグイと引っ張って、

「父さん。話長い!」

「わ、悪い悪い。そんな訳で、よろしくなマミ。それに誠くん。」

「こちらこそよろしくおねがいします、石川さん」

 孝はのけぞりながら、

「ったく、この子がお前の子供だなんて、地元のヤツ誰も信じねえよ(笑)痛え! お、おま、人前で殴るなって、痛え! って、こら真琴! 親に向かって何すr…… ぎゃあーー」

 マミの正拳突きと真琴の小手返しが時間差で決まり、孝はその場でひっくり返った。

 誠は呆れながら、

「ちょっと二人とも! らんぼうはダメだって! あ、ほら、入学式がはじまるよ! マコちゃん、行こう!」

「ったく。おばさん、ちゃんとしつけといてよ! さ、行くよ、マコ。」

「それにしても。これからは、ずっといっしょだね、マコちゃん。」

「すくなくとも六年かんわな。はあー、あと十年は長いわー」

「へ? 十年って?」

「あたしが十六になったら。けっこんするんだろ?」

「……マコちゃん、ざんねん…」

「え? なに? まさか、マコ、あんた、ほかにすきな子ができた? はあ?」

「ちがうって! ぼくが十八にならないと、けっこんできないの!」

「……なんじゃそれ。だれがきめた?」

「だ、だれって… 法りつだから…」

「知らねーよ、そんなん。いーじゃん、けっこんしちゃおうぜ!」

 最近。口調がマミのそれとそっくりになってきている真琴なのである。

 誠は呆れつつも嬉しそうな顔で、

「それを言うなら、同せい、じゃないかな。それなら可のうだと思うけど」

「は? 同せい? 何それ?」

「いっしょに住むこと。」

 真琴は顔面真っ赤になり立ち止まる。

「ま、マジか?」

「え? なに? マコちゃんいやなの? ぼくといっしょにくらすの!」

「ば、バーカ、そんなんじゃねーし、って、あ、ほら、式はじまんぞ、さ、行くぞマコ!」

 そんな照れ隠しにほくそ笑む誠なのであった。


                                         了

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