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はじまり

 


 この世には、転生物の作品が溢れすぎている。

 小説、漫画、アニメ。しかもほとんどが主人公=チートと来た。

 いやいやいや、ワンパターンすぎるだろ! って思うよな。俺も思う。


 だがしかし、1つ言わせてくれ。


「俺は転生物が好きだ!」


 くっと拳を握りしめ、読みかけの小説の画面が映っているスマホをそっと胸に押し当てた。


 ちなみにこの小説での俺の推しキャラは、ヒリュウという主人公のペットだ。

 目的までの険しい道のりを、主人公を支え癒しつつ共に歩んでいくという、この健気さ!

 手触りの良さが文面からも伝わってくる黄金色の毛並み!

 是非とも触ってみたい。

 俺自身もこのヒリュウに癒されている日々である。


 俺の転生物への感情は、最早好きというレベルではない。

 この世の何よりも愛している。

 哀しいかな、転生はファンタジー要素の1つなわけで現実的に考えて起こり得ることはない。

 だからこそ俺は、せめて夢の中で体験したいという一心で、毎夜寝る前は必ず小説を読み漁っては妄想し、そしてようやく眠りにつくのだ。


「木崎さん、消灯の時間ですよ」

「あっ、はいすみません」


 見回りの看護師がやってきたので、俺はスマホをベッドサイドに置いて瞳を閉じた。

 パチンと看護師が部屋の明かりを消した音がする。


 さて、今宵も先程読んだ小説を妄想しつつ眠りに付くとしよう。




 あ、そうそう。紹介が遅れたな。

 俺の名前は木崎 正宗、28歳。

 一昨年の会社の健康診断で脳に異常が見つかり、いきなり余命3年の宣告を受けた何の変哲もないただの男だ。

 アニメ漫画小説を読み漁るのは昔から変わらずのことだったが、転生物に嵌ったり妄想するようになったのは、そうだな……余命宣告されたときからか。

 俗に言う現実逃避ってやつだな。


 だって考えてもみろ。

 煙草も吸わない酒も飲まない友達も少ない、健康だけが取り柄だったはずが、何の予兆もなく医者に「もってあと3年です」って言われるんだぜ。

 しかも医者は慣れてるせいもあってか、こっちの気持ちも考えずにそりゃもう淡々と告げるわけさ。

 そりゃ現実逃避したくなるよな。

 そうして始まった俺の異世界転生への想いは募りに募って、今に至るわけだ。



 思ったより紹介が長くなってしまった。

 明日もどうせ病室に籠りきりの生活が待っているだけだが、看護師が毎朝起こしに来るから夜更かしも出来ないし、そろそろ寝るとしよう。




 ああ、今日こそ夢で俺を転生させてくれ―――




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