第2話
学校に到着した後、俺は自分の席に着く。
その後すぐに親友である五十嵐俊介が俺の元へ近づいてきた。
「よっ! 朝から辛気臭い顔してんねぇ〜」
「そういうお前は相変わらず朝から元気だな」
俊介はクラスのムードメーカー的存在だ。性格は俺とは違い、明るくポジティブで陽キャの位置に属している。見た目もそこそこかっこよく、なかなかにモテる羨ましい存在だ。
こんなやつが俺の親友なんだもんな……。
周りから見れば、俺と俊介はまったく違う種族だ。俺が陰キャなのは言うまでもないのになんでこいつと仲良くしているのだろうかと自分でも謎に思ってしまう。
「で、美玖ちゃんとはどうなんだよ」
「どうって……まぁ関係修復はもう無理だと悟ったよ」
俺はまたしてもため息をついてしまう。
それを怪訝そうな表情で見つめる俊介。
「もう諦めるのか?」
「諦めるというか……無理に元通りにしようというのをやめようかなって。美玖はたぶん“兄離れ”をしたんだと思う。なら、兄である俺は美玖をそっと見守ろうかなって……」
「“兄離れ”って……まぁそれでいいなら俺は何も言わないけどよ」
まるで見当違いなことを聞かされたような顔をした俊介は短い息を吐く。
「あ、そうだった。俺、彼女を作りたいんだけど、誰か紹介してくれるか?」
「断る。というか、いたとしても悠人にはぜってぇに教えねぇ」
「んな!? それ酷くないか?! 俺にこのまま寂しい青春を送れって言っているようなもんだぞ!?」
「そこまでは言わねぇーけど……とにかく紹介はできない! じゃあ、そろそろチャイム鳴るから席に戻るわ」
「あ、ちょっ……」
俊介は逃げるように俺の元から離れていった。
――俺には紹介できないってどういう意味だよ!
お前まで俺のことを妬んでいるのか!? たしかに美玖は外見からして可愛いことには間違いない。これは幼なじみだからとかいう贔屓はなしで言っている。
けど……可愛い幼なじみがいたところでラブコメ的な展開にはならない。
現に俺は美玖に嫌われているわけだしさ……。
俺だってアニメが好きな男子高校生だ。親友にも教えていないが、生粋のアニメオタクであり、休日は市街地に出てはアニメショップでフィギュアやグッズを買い漁っているほど。ラブコメ的な展開を期待していないというわけではないにせよ、美玖は妹的な存在という認識もあって、なかなか一人の女子として見ることができない。
――俺の理性……結構強いでごわんす。
もし……もしもの話だが、美玖から言い寄ってきたら……俺の概念は揺らいでしまうのだろうか。
そんな未来あるはずもないのに、どこか期待している自分に多少驚いてしまった。
俺は美玖のことを本当はどう想っているのだろうか……。