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山中異界物語  作者: 笑う雪ダルマ
人魔界編第1章.『人魔界へ』
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1-5.《人魔界》

2021.6.7:誤字脱字、誤表現を修正致しました。物語の設定に変更はありませんのでご容赦下さいませ。














階段が終わるとミヨウはルトナに案内されながらこの神殿がおさまるほどに巨大な洞窟を後にした。


その道中、ルトナが逐一 "この結晶石は虫除けになる" とか "舐めると甘い" とか "薬に使える" などを熱心に語るので2人が出入口に着いたのは2時間も後であった。

そしてその洞窟の出入口というのはどうにか大人1人が余裕をもてるくらいの狭い穴であった。


狭い穴を抜け、ようやく本当の日の光をミヨウはその身で浴びることができたのである。



……

……


……そこミヨウにとっては写真でも見たことのない巨大な木々と草木が茂る森だった。


少年が耳をすます。


ヒューと心地良い風が吹き、未知ではあるが心地よい鳥の(さえ)ずりが少年の遥か頭上で飛び交っていた。



「すぅー、はぁーー! 空気も美味しい!」


「それは良かったわ」


「ルトナ、これからどこに?」


「そうねぇ、1番近い村がいいんでしょうけど歩きなら2日はかかるわね」


「2日も!?」


「そんなに心配しなくても大丈Vよ!」



愛想笑いするミヨウを横目にルトナは杖を指でなぞって放り投げる。

すると2又の先端が1つにくっつき、20cmくらいだった杖はたちまち2mほどまで伸び横幅も人が腰掛けられる程に太く変化した。


「ささっ、乗った乗った!」


ルトナに催促されミヨウは宙に浮いた杖に腰掛ける。


「うわ!すごい安定する」


ふわりとしたその感触にミヨウは杖をさすさすと撫でる。


「あ、その前に。くれぐれも洞窟(ここ)の事は内緒でお願いね?」


「? 分かった」


そうしてルトナがパチンッと指を鳴らすと洞窟入り口が背景に溶け込み見えなくなった。



「そんじゃ、行っくわよ~! 発進!!」


ルトナが合図すると杖は2人を乗せたまま一気に周りの巨木よりも高く上がり猛スピードで北へと進み始めた。


「おお、早い!……あれ?でもこんな速いのに風の音が小さいままだ……」


「姿勢制御魔法を始めとした補助魔法を複数(いっぱい)かけてあるから落ちる心配もない、私の自慢の杖よ!」





杖に乗って進むのにいくらか慣れたミヨウは尋ねる。



「ルトナってさ、魔法使いかなんかなの?」


「ええ、そんなものよ」


「じゃあルトナって見た目は若いのに結構年上だったりして!」


「ホホホホホ」


ルトナはミヨウの言葉を聞き高らかに笑いながら、杖を180°反転させた。


「うわッ!ちょっと!なんか変な感じだ!……ごめんルトナ!」


「女性に年を聞くのは失礼よー」



ルトナはミヨウの謝罪を聞き入れ、杖をまた180°回して元の姿勢に戻した。そして2人は巨大な木々の上を進んで行く。




しばらく進んでいると2人を照らす空の光が赤く染まり始め、ルトナがミヨウに提案する。


「日も暮れるし、今日はここで野宿ね」


するとルトナは森が少し開いてる場所を見つけてそこに杖を降ろした。



「これを四方に置いてくれる?大体でいいわよ」


そう言ってミヨウはルトナからあの洞窟にあったらしい光る石を渡された。


「このくらい?」


「そうそう、虫除けの魔石はこれで良いわね」


「でも袋に入れて効果あんの?」


「大丈夫よ、ピカピカ光ったままだと寝れないし。魔石の発する力は魔獣避けにもなるのよ」


「"魔獣"って……、魔石を無視して襲って来たりしないの?」


「ここらのは身の程を弁えてるから心配ないわよ!」



ボウッ、パチパチ…



ルトナは木片に杖で火をつけながら自信満々に答えた。



……

……


日はほとんど沈んで辺りは薄暗。

そんな中、切り株に座った2人はバチバチと鳴る焚き火を挟んで話している。



「ルトナ、いま何作ってるの?」


「"シチュー"よ。数百年前あなたたちの世界から伝わった料理ね。ミヨウは苦手?」


「いや、全然。むしろ大好きなほう」



するとルトナは足元に置いた帽子の中に手を突っ込み金属の容器を取り出しそれを焚き火にくべた。


「それ中になに入ってるの?」


「お米よ」


「お米!? ……ばあちゃん家とあんまり変わんないな」


「あら、ご不満?」


「いや、全然嬉しいんだけどさ! 魔女の食事って普通なんだなって……」


「げ、ゲテモノを煮込むなんてそんなの大昔の話よ!私はそんなことしないわよ!?」


「そんなに焦らなくても……」




「ほそろそろ言い具合に焼けたんじゃない?」


ルトナが杖をかざすと容器が火の中から出てきて蓋が開き、ホクホクと湯気を放つ白ご飯がミヨウの膝上にある、木製の器にふんわりと着地した。


「シチューの方ももう良いわね」


空になった米の容器が魔法で地面に置かれると今度はアツアツのシチューが宙を舞いご飯の上に盛られた。


「熱いから気をつけてね」


「いただきます!」


ミヨウは手を合わせスプーンを口に運ぶ。


バクリ、モグモグ、………ゴクン


「ルトナ このシチューすごく美味しいよ!」


「それは良かったわ」


ルトナは安心したように笑みを浮かべ満足気だ。




夕飯を食べたミヨウはルトナに頼まれた通り川で食器を洗っていた。


(今のところは完全に『田舎で過ごそうツアー』だよなー)


そんなことを思いながらミヨウは洗った食器を持って戻ろうとすると……


「あ、忘れてた 水水」


ルトナから渡されていた不思議な模様をした水筒2本に水を汲み入れる。


(これでもう飲み水になってる、っていってたな。魔法ってすごい)



ミヨウがキャンプに戻る頃には日がとっぷり沈んで森は完全な闇に包まれていた。

そんな暗闇の中、ミヨウは焚き火の光を頼りに歩いて戻った。


だがとある光景に、少年はせっかく洗った食器と水を汲んだばかりの水筒を落としそうになってしまった。


ルトナの裸だ。


暗闇の中、揺らめく篝火がローブと服を脱いだルトナの身体を不規則に照らし出し、その女性らしい身体の起伏が少年の瞳に映り込んだのである。



「うわッ!? ルトナなんで脱いでるんだよ! ちゃんと服着てよ!」



予期しなかった家族以外の裸体にミヨウは慌てて視線を逸らす。



「あら、お帰りなさい。何をそんなに慌ててるのよ。

服って?ちゃんと着てるわよ ほら」


ミヨウが恐る恐る目線を戻して見ると確かにルトナは裸ではなかった。

彼女は薄生地で黒色のアンダーシャツに似たものを着ていたのだ。



「裸と勘違いするなんてあんた意外とマセてるのね、可愛い♪」


ルトナは初々しいミヨウ少年の反応をおちょくる。


「~~!!」


ミヨウは勘違いした恥ずかしさから言葉に詰まった。



「じゃ、シャワー浴びるから終わるまで待っててね。おまマセさん❤️」


「あっそ。え、シャワーってどこにあるんだ?」


「ちょいっと離れてて」


ルトナは地面の帽子を拾い上げ、再び手を突っ込んだ。


「ふぎぎ…!…あれぇおかしいな~? お!…デカいっ、、荷物はっっ、手強いのよねっっ!、、きたきたぁー!」



ルトナが帽子から手を引っこ抜くと、ズオォーとものすごい勢いでその帽子より何十倍も大きい箱が飛び出した。

それは中が見えないように曇りガラスに似た物質で構成されたシャワールーム・ボックスであった。


「すげー!」


ミヨウが驚いているとルトナはシャワールームのドアを開けた。


「どう?中もちゃんとしてるでしょう?」


ミヨウが中を覗くとそこにはちゃんとした脱衣場があり、その奥にシャワーと湯船が見える。


「使い方は大丈夫そう?」


「うん、大丈夫そう」


「それじゃ、私が終わったら声かけるわね」


「わかった」


そしてルトナはボックスの中に入っていった。


……

……


(シャワーにお風呂まであるなんてなぁ……)


ミヨウは心でそう呟きながら切り株に腰掛け、異界の夜空を見上げた。そこにはTVでしか見たことのない壮大な星の海が広がっていた。

漆黒の夜空に浮かぶ数多の星々は異界から訪れた少年を歓迎するかのように爛々と輝きミヨウの目を釘付けにしたのだった。



(すごい綺麗だ……)



それからミヨウはシャワーを終えたルトナから声をかけられるまでの間、ずうっと空を眺め続けていた。



ーミヨウ視点ー



風呂からあがると外ではルトナが寝袋を用意していた。

その寝袋に入る前、おれはルトナと燎火(かがりび)を挟んで話をした。


「ルトナみたいな魔法ってさ、おれも使えるのかな?」


「人間でも魔法を使える人はいるけど、こっちに来たばかりのヨウにはちょっと難しいかな」


「そっか…あれ、テラデラに人間っているの?」


「ええ、言い伝えにある導き手の子孫やミヨウみたいにひょっこり現れて住み着いたりした人間たちがいるわよ」


「ルトナは人間じゃないの?」


「ええ、私は人魔族」


「見た目はほとんど人間だけど」


「ありがとう、でもいまの言葉は他の種族にやみくもに言っちゃダメよ」


「どうして?」


「人魔界の英雄である導き手達、彼らが人間だったからよ」


「……?」


「……英雄である"人間"に姿が似ている程この世界では尊ばれるの。その反面、人間とかけ離れた姿の種族はそれを気にしているのよ。

まあ、一部にそういう種族がいるってことは覚えて置いて」


「ふーん、わかった」


「私からも聞きたいこと、というよりお願いがあるのだけど」


「?」


「ミヨウが持ってきた袋の中身、見せてくれない?」


「いいけど、何も珍しいのはないよ」


「ありがとう!私にとってはこれほど興味深い事はないわ!」



あ、やべ。父さんから借りた腕時計落としちゃった…!



ここでようやくおれは腕時計を落としたことに気が付く。



……

……



「へぇ~!”カイチュウデントウ”って便利ね!」


「そう?ルトナの魔法のが便利だと思うけど。

洞窟でだって杖を光らせてたし、それに照らすなら魔石もあるじゃないか」


「”カイチュウデントウ”はホラ!

照らした光が奥まで一直線じゃない?杖や魔石の光はこんなに便利じゃないわよ!」


「へー」


「ええ!それに”虫除けすぷれー”も吹き掛けて終わりなんて便利よね!魔石はホラ、持ち運びがあるから、人が多いとその分荷物が重いのよ。他にも………だったり……………」


……

……


や……やばい。めちゃくちゃ眠くなってきた……。

それにしても……ルトナって結構研究者っぽいところがあるよなあ。

もう少しだけ……話を聞いておこう。



……なんて思ってたけどとうとう眠気が限界にきたおれはルトナに謝ってから寝袋に入った。

その一方でルトナは異世界の道具達とにらめっこを続けていた。


……

……


「あ、これって……」



ミヨウのリュックの荷物にあった木筒を手に取ったルトナはそう呟き、寝ているミヨウの顔を見つめた。




それから少し経って、ルトナは欠伸をしながら寝袋に入った。



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