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山中異界物語  作者: 笑う雪ダルマ
人魔界編第1章.『人魔界へ』
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1-1.《悪夢》

2021.6.6.(日):誤字脱字、誤表現を修正致しました。物語の設定は変わっていませんのでご容赦下さいませ。












-ミヨウ視点-



……額と背中にすごい汗をかいてるのがわかる。

変な夢を見たせいかすごく周りが気になって……体を起こして辺りを見る。


うん……何も変わってない。

隣りのミオ姉は足を片方だけ布団から出して寝てるし、スヤスヤと起きそうにない。

時計はまだ朝5時半……また寝よう、さっきのはたまたまだったんだ……。

そう自分に言い聞かせて布団に入った。



また目を覚まして時計を見ると9時半だった。

頭はスッキリしてる。



「ヨウくんおはよう、やっとこさ起きてきたね。いまごはん用意するからね あ 顔洗った?」


居間にいたおばあちゃんはそう言ってとっくに冷めた朝ごはんを温め直してくれた。


「おばあちゃんおはよう。うん、洗った。あれ…みんなは?」


「もうとっくに起きてるわよ。

それと昨日、向こうの道路に砂が落ちて来たでしょ。それの確認よ、役所の人と」


「ふーん、ミオ姉も?」


「ミオちゃんは調べものって蔵を漁ってるわよ」


「そう」


蔵かあ…なにやってんだろ?



……

……


「ごちそうさま!」


朝ごはんを食べ終わってミオ姉のいる離れの蔵へ向かった。


蔵と言っても"戦前の旧家"とか"偉人の家系"の家が持ってるような蔵なんかじゃなくて…TVに見せてるほどでもない小さな蔵だ。


そんな蔵の扉は空いていて中からはガタガタ、ゴトッゴトッ、バサバサ…と物音が聞こえてくる。



「ミオ姉! 何か見つかった?」


「ひゃあッ!? ……んーん、なーんも」


「なーんだ……。じゃあ俺も探すよ!」


「いいけど、壊さないでよ?」


「大丈夫大丈夫!」



古い椅子やツボの入った箱を落とさないように漁っていたらなんか龍?にも見えなくはないカッコいい模様の木筒を見つけた。


……これいいじゃん、もらってこ!

でもその前にミオ姉に言っておかなきゃ。


「ミオね……」


「………」



ミオ姉は真剣な顔でテキパキと箱を開けては閉めを繰り返していた。

……凄い集中してる、あとででいっか!



おれはその木筒をズボンのポケットに押し込んだ。


「ねぇ、ヨウ!ちょっと手伝って、これ」


「ん、なに?これ持ち上げんの?」


「頑張って、ほら!」


「ふっ、くっ!」



ミオ姉に言われて重なっていた椅子やツボとかが入った箱を何個もどかした。

ミオ姉はそれでようやく手が届くようになった古い棚の引き出しをどんどん開けていった。



すると、なにか丈夫な箱に入った書物が出てきたらしい。


らしい、ってこというのは後からミオから聞いたからだ。

この時おれはミオ姉の雑用をこなした疲れからちょっと休憩、と家に戻り蔵にあった木の筒を眺めてたら寝落ちしてしまったのだ。


目を覚ますともうお昼を過ぎていて蔵に戻ってみると父さんと姉さんで片付けをしていた。


-ミヨウ視点 終-



……

……


ミヨウはある一室で姉を見つけ声をかける。


「ね、何か見つかった?」


「まーねぇー、知らない人が10人くらい写ってた古い写真が出てきたよお。

あ、あと"あの神社"ってもしかしたら結構近くにあるかもよ」



“あの神社”とは祖母のご先祖、つまり2人のご先祖でもある人物が神主をしていたと言う、いまは失われた神社だ。



「マジ!?」


「お昼でも食べてちょっち待ってて」


「わかった! お昼でも食べながら待ってるよ」




ミヨウが居間で寝過ごした昼ごはんを食べていると、母リョウコが一足先に戻って来たようで祖母となにやら話していた。


ミヨウは全て聞き取れたワケではなかったが"昨日の地震で下の神社のなにかが壊れた"ことは聞き取れた。


それからミヨウは昔リョウコが使っていた部屋(今は遊びにきたミヨウやミオが好きに使う部屋)に入り、蔵で見つけた"モノ"を改めて確認していた。


ミヨウは手に取った木筒、分かりやすく言えば卒業証書の入ったあの筒を20センチに縮めたほどの長さの木筒をぽーんと投げてはキャッチする。

少年は蓋を開けて中身を見ようとするが……


(コレだ!って思って持ってきたけど……カッコいいのにただの木筒じゃん…。重さも軽いし何も入ってないのかな?……げ、蓋がない!)



「ちぇ、ホントにカッコいいだけの筒かよ」



ミヨウは部屋に持ってきていたリュックに木筒を突っ込むとあくびをしながら部屋を出ていった。



……

……


「神社にあった小さな祠が崩れちゃったんだってさ」


この日の夜、ミヨウが布団に入って寝ようとした時に隣りの布団で寝そべっている姉ミオが突然弟に言ってきた。


"祠"……その言葉に少年の頭には忘れていたあの夢が思い出される。


(ああ、嫌なこと思い出した…。でも明日帰るしどうでもいいや)


ミヨウはそう心の中で呟き、目を瞑った。



……

……


真夜中…ミヨウは(うな)されていた。



(最悪……またこの夢か……!)



彼は昨日と同じ不気味な夢を見ていた。

祠の前に立つ自分、祠の中にある鏡に手を伸ばすと白い手に腕を掴まれる。

手を払って飛び退くと生気のない青白い肌の口だけ女が自分の前に立っている。

その口元から聞こえる、ギ……ギ……と言う掠れた唸り声。



(なんだか次第に大きくなってる気がする……)


頭の中でミヨウが呟く。

すると一層身の毛がよだつ恐ろしいことが起きてしまった。


その化け物女がミヨウに向かってジリジリと近づいてきたのである。


近づいてくる化け物、だがミヨウは糸で絡めとられたように体を動かすことができない。


化け物の口が少年の目の前に迫る



「ギ……ギ……!!ギ……ギ………!!」




そこでミヨウはハッと目を覚ます。


「はあッ、はあッ、はあ……」


走ってもいないのに心臓がバクバクと激しく動き、血が全身を駆け巡り体が熱を持つ一方でその背筋がヒヤリと冷える嫌な感覚がミヨウを襲う。



……

……


-ミヨウ視点-



今回は夢でのことが頭に残ってる。


……何なんだよ…!もしかしてこれから毎日……?



この朝、おれは起きたまま遅れることなく皆と朝ご飯を食べた。



あの夢に負けたくない? それとも祠が気になるから?なぜかはわからない……。



2人になった時、ついミオ姉に言ってしまった。




「ミオ姉、その神社なんだけどさ、帰る前に探してみない?」




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