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四十二話 幽霊被害は政治のせいだった?

 Vtuber運営の基本戦略はこれでいいとして。

 俺は俺でアリス姫の配信活動を盛り上げなければならない。仮にもボスだからな。容易く傘下のVtuberに追い抜かれては威厳に関わる。

 関わる……んだが、ギフト持ちに普通の一般人が敵うわけがないだろ! いい加減にしろ!


「いえ、アリス姫の人気は凄いですし、トップを独走してるじゃないですか」

「まだな。引き出し屋の切り抜き動画で俺の株が上がったから人気が集中してるが、モロホシとピグマリオンの配信を見て見ろよ。Vtuberなんて欠片も興味がない客層が居着いてるじゃんか」

「確かにそうですけど、それを言うなら俺なんてどうすりゃいいんですか」

「ホモ人気はトップだ」

「嬉しくない……」


 まあ、確かにVtuber毎に微妙に客層が違うんだから単純に比較できるものでもないのはそうだな。

 どれだけ上手い歌やダンスを披露しても興味がないリスナーは全く見向きもしないし。俺や浩介のお笑い劇場が好きだってリスナーも多い。

 でも俺達はVtuberだ。Vtuberである以上、歌配信なんかもしなきゃいけないんだよ。

 専用のギフトを持ったモロホシの隣でだぜ? 何の拷問だよ。


「あの、でも私よりも歌が上手い人は大勢いますし」

「そりゃな。年期が違うっていうか、やっぱギフトを持ってる疑いがあるんだよな。俺は無理矢理に賦与したけど、そういう方向性で魂の力を引き出した天然のチート能力者もいるだろうしな」


 だからこそ、モロホシだろうと歌唱レッスンを必要とするし指導者の存在が不可欠になる。

 人間の文化が生み出した歌は数百年以上の歴史を持ち、ある程度は専用の訓練を受けることで上達する。

 兵器が戦争でどんどん進化していったように大勢のライバル同士の切磋琢磨が魂を磨き上げ技術を発達させていったんだろう。


 ここら辺は現代社会に否定されることでどんどん衰退していったオカルト文化とは真逆だな。

 ちょっと調べてみたんだが、日本では明治政府が富国強兵を進める為に西洋文化から近代科学を導入する際、邪魔となる陰陽師や占いなんかを明確に禁止令を出して廃止している。政府中枢にあった陰陽寮を排除しただけではなく、民間の陰陽師が全ていなくなるほど徹底されたみたいだ。占いを行う風潮があると陰陽師が密かに残ると判断したら、占いは迷信であると占い禁止令を出したってくらいだからな。

 これは占いなどで天皇に意見をするのは不敬であるという尊皇攘夷の考え方も影響しているんだが、要は神道と権力争いをしてたってことだ。


 おまけに神仏共存という神と仏を同一視する日本の伝統的なスタイルにも明治政府はメスを入れた。

 明治政府は当時は神道と共存していた仏教を神仏分離政策で切り離し、神は神、仏は仏と事実上敵対関係になるような処置をしたのだ。

 これは天皇の血筋が遡れば天照大神にまで辿り着くことを利用した天皇の権威の拡大を目的としたもので、大政奉還によって幕府から権力を取り上げた自分達の正当性を主張するためのものだった。完全に政治上の都合だな。

 こうして日本は国家神道となり、天皇は神として祭り上げられた。


 だが、その国家神道も戦争で負けた結果、GHQによる神道指令によって廃止され天皇は人であると定義し直された。

 まあそこは元に戻っただけなので違和感はないんだが、神祇院が廃止され政教分離を進めた結果、政府中枢からあらゆる宗教色が消えたのだ。

 現在、皇室で行われる伝統に則った儀式も可能な限り宗教色を消したもので、個人的に国家安寧を祈るって感じかな。


 でも天皇が神の血を引くって言っても何千年前の話だよ。人間の血で希釈され続けた天皇が如何なる背景も存在しない儀式を通じて個人的に祈っても、そりゃ国家全体の守護とか荷が重いって。

 幽霊が跋扈するのも仕方ないんじゃねえか、これ。


「あ、三人ともおはよう」

「おはようございます」

「陽子さん、今日もよろしくお願いします」

「うっす」

「モロホシちゃんもアカリちゃんも礼儀正しいのに、アリスちゃんはさあ……」

「いや、お前はトレーナーじゃなくて単なるレッスン仲間だろ。しかも俺に多大な恩があるのを忘れたか?」

「そでした」


 エヘっと笑うこの二十歳の黒髪短髪の女性は同じトレーナーの元で歌を学ぶ地下アイドルで、ワンダーランドのVtuber募集に応募してきたものの惜しくも面接で落ちた俺のリスナーで、俺が新しくチートを授けた異能力者だ。

 ギフトではない本格的なチートを所持したアイドル。

 まるで漫画みたいな設定だな。

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