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八十一話 短編アニメ

 常夏の島。コバルトブルーの海。そこに三人の女性が戯れる映像が流れている。

 一人は黒髪黒目の巨乳の美女。垂れ目とセクシーな唇が印象的で、わがままボディを少ない面積のビキニで晒しているが、ぽややんとした雰囲気で不思議と色気を感じさせない。


「あ、待って。私は映さなくて良いよぅ」


 訂正。恥ずかしそうに身体を隠す動きはむしろ下手なグラビアアイドルより扇情的だった。


「あはは。その身体をスルーするのは無理ですって」


 カラっと笑う声が横のアッシュブロンドの金髪美女から出る。

 健康的にほどよく焼けた小麦色の肌と低い身長に見合わない胸に屈託のない笑顔。こちらもビキニの割に不思議と色気でなく、健康的な爽やかさを感じる。

 視線のあったカメラにウィンクをするお茶目さが何処か幼さを主張していた。


「そうそう。サービス精神は大事だよ。アリスにもよく見せて」


 最後の一人は金髪碧眼の北欧美少女。まだ10歳くらいの年齢のロリだ。起伏なんてものはない。

 白いワンピース水着に包まれた真っ白な身体で、わざとらしく小首を傾げて幼さを強調させている。


「うっ……これで良い?」


 おずおずと胸元から手をどかしていく黒髪美女、タラコ唇を金髪美女のミサキと北欧美少女のアリス姫は満足気に見て。


「折角だし、もうちょっと前屈みになって胸を強調してみましょう!」

「良いね。ほら中腰になるんだ!」


 キャイキャイと次々とポーズの指定を始めた。


「えぇー!? 何で、私ばっかりぃー」


 困惑するタラコ唇の困った顔をアップにして、それでアニメーションは終わった。




◇◆◇




「あっは。タラコ唇さんのプロモーションビデオみたいになってる」

「本当だよぅ。こんな感じのシナリオで良かったの?」


 海外旅行の一部をアニメーションにした試写会で、俺は良い出来だと頷き、それをタラコ唇さんが不安そうに見ていた。

 まあタラコ唇さんは自分のチャンネルすら持ってないしな。何で裏方がピックアップされたのか分かんないのも仕方ないか。


「これで良いんだって。アリス姫は色気を売りにするキャラじゃないし、元風俗嬢だって明かしてるミサキは逆に素の明るさを強調した方がエロいしな。キャラクターによっては必要以上のサービスシーンや色気は下品にすら見えちゃうんだ」


 それに専門のチャンネルを持たないタラコ唇さんのサービスシーンは他では見る事の出来ない貴重なものだ。

 無名な単なる裏方だったら誰だよって反感を買うかもしれないけど、アリス姫の配信に初期から登場してるタラコ唇さんはワンダーランドじゃ他のVより知名度が高かったりする。偶に配信に登場するとその回の視聴率は他の配信回に比べて明らかに高いのだ。

 まあ、俺が恋人だと明言してるし、ミサキを含めてガチ三角関係とか三股になってるからな。匿名質問箱のマシュマロでもよくタラコ唇さんに関する事が質問される。


 一部の界隈では俺をスカウトしてプロデュースを成功させた事でタラコ唇さんはVtuberマスター。Vマスとして有名になっているくらいだ。

 有名なアイドルを育成するゲームのVtuber版。おまけにミニハーレムを形成した恋愛要素あり。

 実はそういうタラコ唇さんを主人公にしたファン制作のゲームがワンダーランドにプレゼントされていたりもするのだった。


「ゴメンね。アタシがタラコ唇さんを誘惑したって口を滑らせちゃったから」

「あの、ですね。私も不安定な時期にタラコ唇さんに添い寝して貰ったと話したら、何時の間にかハーレムメンバー候補みたいに言われるようになってしまっていまして……」


 非公式ウィキではもうタラコ唇さんは女版ハーレム主人公みたいに紹介されていて、ハーレムメンバーとして記載されているミサキとモロホシがそう言って頭を下げたものだ。何か俺の扱いが、メインヒロイン(笑)とか、負けヒロインとか載っていて微妙にイラッときたな。



「あの、それじゃアニメは完成という事で……?」

「おう。構わないぞ」


 まさかこの期に及んでリテイクなのかと恐々とした大介に頷くと絵描き三人衆があからさまにホッと安堵の溜息を吐いた。

 凄まじい早さで絵が上達してると言ってもアニメはやっぱ大仕事だからな。3分の短編アニメでも相当、しんどかったのだろう。


 これからも、ちょくちょくアニメ動画は出す予定だがな!


 ……3Dも駆使して何とか負担を和らげないと駄目だな。この三人には同人誌も頑張って欲しいし。他のV達の海外旅行編も手掛けて貰わないといかんし。

 んー、どっちにしろ、もうちょい人を増やすべきだな。こりゃ。ノーモアブラックの精神で行こう。

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